現代マジック界の巨匠ジョン・カーニーが、自らの美学・哲学・技法を惜しみなく注ぎ込んだ名著、それが『Carneycopia』です。
古典的手法の中に宿る本質を見つめ直し、無駄を削ぎ落とした洗練された構成で、観客の記憶に深く残る作品が数多く収録されています。
本書では、コインやカードをはじめとするスライト重視のクロースアップ作品に加え、演者の所作・演出・構成といった目に見えない要素に対しても、極めて高い水準のこだわりが込められています。ジョン・カーニーの演技は「見せる」ではなく「伝える」マジックです。ギミックに頼らず、選び抜かれた動きと心理によって構成されたルーティンの数々は、観客だけでなく、マジシャンの感性にも深く響くことでしょう。
また、各作品には単なる手順解説を超えた演じるための哲学や経緯が添えられており、読むたびに新たな発見があります。
名作「Versa Switch」、「Streamlined Cylinder and Coins」、「Hot Slot」など、どれもが観客の感情を揺さぶる珠玉のルーティン。プロを唸らせ、真にマジックを愛する者の心を掴んで離さない、本質を重んじるマジシャンにとって価値のある1冊です。
- Current Classic
- 「いくつかの実用的なスポンジボール技法に、ちょっと洒落た名前を付けただけ」がジョン・カーニーの言葉です。巧妙で極めてビジュアル。効果の高さは、一般的に使われるスポンジボールの手順と比べても、1段階あるいはそれ以上に位置します。ボールの意外な出現、消失、ポケットへの移動、分裂、手から手への移動、観客の手への移動。テーブルが使えない場面でも演じられるよう構成されています。
- Predictable Surprise
- 予言プロットのラストに意外なひねりを入れました。選ばれたカードがナプキンにあらかじめ書かれています。このカードをデックに戻してシャッフルし、リフルするとナプキンが揺れ、ナプキンの下から選ばれたカードが現れます。二段構えの驚き。
- Straggler
- 観客が選んだカードをデックに戻し、全体をナプキンで包む。何度か指を鳴らすたびにカードがナプキンを突き抜けて現れるが、どれもハズレ。最後にナプキンを開くと、選ばれたカードだけが中に残っている。ナプキンもデックも調べてもらえます。
- Final Trace
- 前2手順に続けて演じられます。選ばれたカードをデックに戻し、デック全体をナプキンで包みます。その後、デックが入っているはずのナプキンを丸めてしまいます。このナプキンに火をつけて燃やした後、ナプキンの灰を腕にこすると、選ばれたカードの名前が演者の腕に浮かび上がります。
- Soft Glass
- コインがグラスの底を何度も貫通し、最後はグラスがテーブルを貫通します。
- Chill Pack
- 1組のデックが空の手から現れます。カードマジックのオープニングに。
- Poor Man’s Card Manipulation
- デックからカードを1枚ずつ取り出し、順に消していきます。この方法で3枚のカードを消した後、
今度はそれらを空中から次々と再び取り出します。
- Ethereal Pack
- 選ばれたカードを出そうとするたびに、なぜかジョーカーがトップに現れます。
何度やっても、ポケットにしまってもジョーカーが出て来た後、演者が指を鳴らすと、デック全体が消え、選ばれたカード1枚だけが手に残ります。
- Streamlined Cylinder and Coins
- あらためた筒をテーブルに置き、上からコルクを入れます。 テーブルに4枚のコインを出し1枚ずつ消していきます。4枚とも消えたところで筒を持ち上げると、コルクの下に4枚のコインが移動しています。 今度はコルクだけを取り、筒は元通りコインにかぶせます。おまじないをかけると、コルクが一瞬で4枚のコインに変わります。筒を持ち上げると先ほどまであった4枚のコインはコルクに変わっています。
- Side-Pocket Transpo
- 2枚のカードのトランスポジション(位置交換)を2つ解説します。
- Inscrutable
- 演者は「どんなに混ぜられたデックでも、カードの位置が分かる」と言います。しかしAを出そうとするたびに、なぜかジョーカーが現れます。最後におまじないをかけると、出て来た4枚のジョーカーがすべてAに変化します。
- Half Dollars In The Mist
- 2枚のコインで行うハンギング・コイン。ギミックやワイプド・クリーンを排除した方法です。
- Versa Switch
- 複数枚のカードをパケットに追加する動作でスイッチします。
- Kings And Aces Change Places
- K4枚とA4枚を使います。4枚のAを裏向きにテーブルに置き、4枚のKを表向きに置きます。
その後、手をかざすと4枚のKがビジュアルに4枚のAへ変化します。テーブルのカードを確認すると、それが4枚のKに変わっています。ギャフやエキストラは不要です。
- Fruit Cup
- 丸めた紙幣とカップで行うチョップ・カップのような手順です。最後はレモンが出て来て、その中に丸めた紙幣が入っています。普通のカップで行えます。
- Natural Selection
- 選ばれたカードをデックに戻して混ぜます。演者はざっとデックを見て、半分を取り除きます。残りの半分を観客に渡し混ぜてもらいます。この中に選ばれたカードがあるはずと言って、返してもらった残り半分を空中に投げ上げ、1枚のカードをつかみます。それが観客のカードです。
- Australian Aces
- 観客が混ぜたデックから観客に4枚のカードを選んでもらいます。それぞれの選ばれたカードの後ろに、それぞれのカードに従った枚数を配ります。観客がデックを混ぜ、観客が自由に決めたカードの数字に従い、カードを配ったにも関わらず、各山のトップカードがすべてAになっています。
- Wired
- 演者は夢の中で見た謎の数字をインデックスカードに書き、ホッチキスで綴じておいたと言います。
観客に手持ちの小銭の合計金額を数えさせると、その額とホッチキスで綴じたインデックスカードの内側に書かれていた数字が一致します。
- Bull Session
- The Queen’s Soireeのバリエーションです。
- Suicide Match
- 手をかざすとマッチ箱の引き出し部分が自動的に開き、中から1本のマッチが出て来ます。
- Seconds On Jack Sandwich
- 2枚の赤色のJをテーブルに置きます。デックから1枚のカードを選んで覚えてもらったら、デックに戻し混ぜます。
このカードが2枚のJの間から現れ、再度デックに戻しますが、次はアクロバティックな方法で再びJの間から現れます。
- The Logical Bill Trick
- 1ドル紙幣と両手には何も無いことを見せます。この1ドル紙幣を折り畳むと、不思議なことに紙幣の間から1枚のハーフダラーが現れます。
もう1度繰り返してもまたハーフダラーが現れ、より公明正大にゆっくりはっきりやってもまた現れ、最後は1ドル紙幣が100ドル紙幣に変化しています。
- The Slide To Home Prediction
- 演者がカードを配る。好きなところでストップをかけてもらう。ストップの場所は何度変更してもらっても良い。
最終的にストップを言ってもらったカードが予言されています。
- The Yenrac Packet Switch
- 4枚、4枚のパケット・スイッチです。
- To The Sticking Point
- コイン・スルー・ザ・テーブル。ノーギミック。借りたコインでできます。
- Triumph Rip-Off
- 表、裏がぐしゃぐしゃに混ざったデックから、表向きのカードだけを一瞬で抜き出します。
抜き出したパケットを広げ確認すると1枚だけ裏向きのカードが。それが選ばれたカードです。
- Bullet Train
- カード・アップ・ザ・スリーブです。使うカードを4枚のAに固定することで、よりシンプルにより理解しやすく、不思議さが際立つ形にしました。
- Quarter Spin
- フォールディング・コインを使用しても不可能と思わせることを狙ったコイン・イン・ザ・ボトル。
- Upside-Down
- デックを軽く叩くと、選ばれたカードがボトムに移動したと言い、ボトムカードの♡9を見せます。
でも選ばれたカードは♡9ではなく♡6です。デックを半回転させると、♡9が♡6に変化します。
- Transplant
- 演者はまず♢4をテーブルに置き、次に♢3を見せます。その中央のピップを摘み取るジェスチャーをし、♢2に変化させます。摘み取ったピップを♢4に移すと、それが♢5に変化します。
- Slick Pip
- 指を鳴らしトップに上がって来たカードを見ると♤2で、選ばれた♤3ではありません。
♤2のピップを擦り、中央に移動させると、♤3に変化します。
- A Polite Penetration
- 借りた1ドル札を筒状に丸めるとその中から4枚のクォーターが現れます。
このクォーターを観客の手の甲に重ねます。1ドルの筒をかぶせると、この4枚のクォーターが観客の手を貫通して落ちます。
- Tenkai-Esque
- 中央にあるカードを、デックを揃える動作で左手のパームに入れる方法です。
- Hammanesque
- カードの枚数や内容に注意を向けさせないため、カジュアルに広げるムーブで行うハーマン・カウントです。
- Slow Fade To Red
- カラー・チェンジング・デックです。カードが1枚また1枚と青から赤へ変わり、最終的にデック全体の色も赤へと変わります。
- Hot Slot
- 沢浩のスロット・マシーンのエッセンスを抜き出し、ハンドリングの弱点の改良や見た目の華やかさを追加した手順です。
- Sanverted
- 4枚のAを使用。アンビシャスとラスト・トリックの組み合わせです。
- Oil On Troubled Waters
- 3枚3枚で行うオイル・アンド・ウォーター。最後には混ぜられたデックまで赤、黒にわかれます。
どちらか1色にフォーカスさせる見せ方もさすがです。
- Calligraphic Cash
- ビル・イン・ペンです。観客から借り筒状に丸めた紙幣が、インクカートリッジと入れ替わります。ペンのインクが入っていた場所になぜか借りたお札が入っています。
- Rubber Detective
- 輪ゴムが選ばれカードを当てます。2段階の現象で、デック全体にかけた輪ゴムを弾くと消えてしまい、デックを見ていくと半分ほどのカードを囲っています。再び輪ゴムを弾くと、また輪ゴムが消え今度は1枚のカードを囲っています。それが選ばれたカードです。
- Everywhere, Nowhere And On Your Face
- タイトル通り、エブリウェア・ノーウェアと額にくっつくカードを融合させた手順です。
ジョン・カーニーの作品の中でも最もコマーシャルなカードマジックの1つだそうです。
- The Thirteenth Victim
- コミカルかつシュールな弾丸キャッチの演出です。