11月4日は松戸市民会館で「松戸奇術会 第59回マジックフェスティバル」、11月16日は小岩アーバンプラザで「第64回KMCマジックフェスティバル」に行ってきました。松戸では浪曲、ダンス、腹話術、歌舞伎、ピアノといったマジック以外の芸を取り入れた演目が多く、とてもバラエティに飛んでいます。第3部はナイトクラブ・ショー。お客がいるナイトクラブというシチュエーションで、ピアノの生演奏で3演目が演じられました。70歳の方が演じた4つ玉では、玉を2回投げ上げて指の間でキャッチしたのには驚きました。小岩は会員数減少に伴い、この会場での発表会は一端、最後だそうで、発表会に合わせて毎回発行される記念誌も冊子の形では最後です。8人の演者がメドレーで小ネタを演じ、クラブの歴史をスライドで紹介していく演出が良かったです。小岩は横浜マジカル・グループ、鎌倉マジシャンズ・クラブと並んで御三家と呼ばれていた時代もありましたが、どこのクラブも存続が危ぶまれています。各クラブが協力しあうなど、新しいやり方を模索していかなければならないでしょう。
では本題へ。この映画はパブリックドメインです。元々は白黒でしたが、カラーに着色されたものがYouTubeで見られます。ただ、自動翻訳なので、Amazonプライムをやっている人は、吹き替え版が見られますので同時に視聴し、音はAmazonプライムから流し、画面はYouTubeのカラー版を見ればいいでしょう。
原題:Young and Innocent
監督:Alfred Hitchcock
原作:Josephine Tey(A Shilling for Candles)
出演:Nova Pilbeam (Erica Burgoyne), Derrick De Marney (Robert Tisdall)
配給:GFD
公開:1937年(日本公開1977年)
上映時間:84分
製作国:イギリス
「バルカン超特急」と同じく、こちらも日本で公開されたのが遅く、40年後でした。第二次世界大戦の頃に製作された外国映画は、プロパガンダ的なものだったり、戦時中ということもあり、日本では当時公開されませんでした。「カサブランカ」などの名作は戦後暫くして公開されましたが、埋もれた名作、例えば前回紹介した「海外特派員」、オーソン・ウェルズ監督主演の「上海から来た女」などは、1970年代になってやっと日本で初公開されました。同じヒッチコックの「逃走迷路」のように、映画評論家の水野晴郎がこの映画は凄いと紹介したことで公開になったものもあります(因みに、この映画は「北北西に進路を取れ」の原型です)。
「第三逃亡者」はヒッチコックお得意の巻き込まれ型サスペンスの佳作です。因みに、ニュースで事件が報道される時に、被害に遭った人が“何らかの理由で事件に巻き込まれた可能性があります”という言い方をよく聞きますが、巻き込まれるというのは、鞄を取り違えたり、たまたま電話を受けたことでスパイに間違えられたりした場合を言うのであって、ストーカーに襲われたというのは、犯人はその人を襲うことを目的としていたわけで、自動車のもらい事故みたいな、巻き込まれたという言い方は正しくないと思います。
映画とはそれが宝探しの冒険活劇であっても、青春物であっても、端的に言えば、ある状況下での人間がどう選択し、どのように行動したかを描いたものです。小説のように心理状況を表現できませんが、文章では説明しきれないものでも、映像では具体的に、ひとめで提示することができます。そして監督は、演出効果を駆使し、緊迫感を出したり、登場人物が思っていることを示したりします。ヒッチコックが凄いのはこの表現方法で、様々な撮影テクニックを開発し、例えば、“ドリーズーム”といったスティーブン・スピルバーグの「ジョーズ」など、色々な映画で使われるようになったものもあります。下記はヒッチコックの「めまい」でドリーズームが使われたシーンです。因みに、このシーンはミニチュアで撮影されました。
ついでに「ジョーズ」で使われたシーン。
話を「第三逃亡者」に戻して、この映画でも素晴らしい映像表現が出てきます。オープニング、浜辺を歩いていた女性たちが、流されてきた死体を見つけて、驚いて顔を背けます。普通の演出家だったら、目を見開いて死んでいる死体をアップで映し、女性たちが顔を背けるという編集にしそうですが、ヒッチコックは死体をアップで映すようなことはせず、女性が見つけて、それから顔を背けるシーンの間にカモメがアップでスローモーションで飛ぶショットを挿入することで、カモメも騒いでいる=現場の状況が通常のことではないことが表現されています。主人公のロバートは殺された女性と知り合いで、死体発見現場で目撃されたことから殺人容疑をかけられ、警察から追われる身となります。そして、警察署長の娘、エリカと一緒に真犯人を捜します。
38分、ロバートとエリカは逃亡中にエリカの叔母の家に寄ります。そこでは叔母の娘の誕生日会をやっており、キッズ・マジシャンが口から紙テープを出すシーンが出てきます。その後、赤と緑のハンカチを結んで何かするようですが、画面には映っておらず、口上だけが聞こえてきます。結び目を強調しているので、結び目が解ける手品か20世紀シルクでしょう。
クライマックスでの長い移動撮影(ホテルのフロント・ロビーからレストランを抜けて、最後に犯人の顔をクロース・アップで映し、観客には誰が犯人かを分からせるシーン)は圧巻です(同様のカメラが寄っていくシーンが、イングリット・バーグマン主演の「汚名」でもあります)。サスペンス映画ですが、笑いの要素も多く含まれており、傑作とまでは言えませんが、楽しめるでしょう。
沢山の白黒映画がカラー化されるようになりましたが、ヒッチコック監督作品ではパブリックドメインの3作品(「恐喝」「三十九夜」「レベッカ」)がYouTubeに上がっています。特に「レベッカ」は名作で、私が選ぶヒッチコック映画ベスト5に入ります。終盤の審問のシーンから、最後にベッドの枕が映るところまでの盛り上げ方がいかにも映画的で、演出が冴え渡っています。是非、見てみてください。
次回も推理物ということで、ウディ・アレンがマジシャン役を演ずる「タロットカード殺人事件」を紹介します。
1) 栗田研:「第三逃亡者」『Four of a Kind Vol.9 No.2』(チェシャ猫商会, 2005) p.285
12月3日 20時~ 「プリティ・ウーマン」 BS松竹東急
12月5日 19時~ 「シンシナティキッド」 ムービープラス
12月9日 3時15分~ 「ドクター・スリープ」 ザ・シネマ
12月14日 7時45分~ 「ジョン・ウィック:コンセクエンス」 ムービープラス
12月18日 9時15分~ 「シンシナティキッド」 ムービープラス
12月22日 21時~ 「オーシャンズ8」 ムービープラス
12月28日 15時45分~ 「オーシャンズ8」 ムービープラス
12月31日 3時15分~ 「ドクター・スリープ」 ザ・シネマ