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コラム

第43回 スリ(2024.5/23 up)

まずは、5月18日に浜町で行なわれたマジックマーケット2024春の感想から。日本のマジック・ショップが日々取り扱っている商品にはどんなものがあるのかを最近調査しました(結果については、次号の「Four of a Kind」に掲載予定)。その内の50%弱がカード・マジックだったことは予想通りでしたが、意外だったのはレクチャーDVD、特に輸入してそのまま販売するものが殆ど無かったことです(評判の良い海外のレクチャーDVDはスクリプト・マヌーヴァから日本語字幕付きで出るので、輸入したものをそのまま販売することが減ったのかもしれません)。因みに、ダウンロード版も同様に殆ど無かったです。しかし、マジックマーケットでは、カードやコインの手順もののレクチャー・ノートや解説映像があちこちで売られており、これは以前からの傾向です。理由は簡単で、レギュラーのカードやコインを使った手順解説であれば、映像さえ撮れば、お手軽に商品化できるからです。逆に、印刷が必要なトリック・カードやギミックの付いたものは多くはありませんでした(3Dプリンターを用いるなど、個人でマジック道具を作れる時代になったので、そういった商品がもっと増えてもいいと思うのですが...)。解説映像は手軽な編集ソフトが沢山出てきたことにより、綺麗に作られたものが増えました。ブラックプールのコンベンションで評判だったという池田洋介の「数理原理を用いたAny Card at Any Number」は完売していました。Walter B.Gibsonが1938年に考案したマトリックス・フォースは多くのマジシャンが知っていると思います。これは元々、二次元でしたが、それを三次元にして解決に利用するという、他のACANとは全く違うアプローチには、石田隆信氏も不思議がっていました。

では本題に入りましょう。まずは予告編から。

『スリ』


スリ

原題:Pickpocket
監督:Robert Bresson
脚本:Robert Bresson
出演:Martin La Salle(Michel), Marika Green(Jeanne), Pierre Leymarie(Jacques), Jean Pelegri(L’inspecteur Principal), Kassagi(1er complice)
スリのテクニカル・アドバイザー:Kassagi
配給:映配
公開:1959年
上映時間:76分
製作国:フランス

この作品は、フランスの第1回「新しい批評賞」で最優秀フランス映画賞を受賞しました。スリの芸術的な手順やハンドリングが描かれる犯罪サスペンスで、マニアの間で話題に上る作品です。監督のブレッソンが、ドストエフスキーの「罪と罰」にインスピレーションを得て書いた脚本が元となっており、有名な俳優を殆ど使わず、押さえた演技で、音楽も殆ど使いません(オープニングとエンディングと極一部だけ)。監督は、生活の現実と映画の現実の間にはズレがあり、できるだけ現実そのもので、何も新しく加えない主義だそうです。音楽が入ればクライマックスで緊迫感が出る、恋愛シーンではムードが盛り上がるというのは殆ど全ての映画での定石ですが、逆に無いことでリアルさが出て、引きつけられます。知らない役者が演じているというのも、この役者はこういった配役が多いといった予備知識が無いので先が読めず、見慣れていない演技は新鮮です。スリの演技指導は、劇中にスリの頭目として登場するカッサジです。

ミシェルは「罪と罰」の主人公、ラスコーリ・ニコフのように独自の犯罪理論を持ち、社会から疎外感を感じ、真面目に働こうとはせず、手先が器用なことを活かして、いつしかスリで生計を立てていくようになります。3分、ミシェルはロンシャン競馬場で女性のハンドバッグから初めてスリを働き捕まりますが、証拠不十分で釈放されます。離れて暮している母にその金を届けた時、隣室の娘ジャンヌに会います。ジャンヌは不幸な娘で、妻に去られた父と妹たちの面倒をみています。13分、ミシェルは友人のジャックから仕事を紹介してもらいますが、地下鉄に乗っている時にスリを目撃します。カモと向かい合った状態で立ち、スリをする男は新聞を広げることで相手の視線を遮り、懐からスリ、新聞紙を畳みながら、新聞の間に財布を挟みます。ミシェルは働きには行かず、家へ帰って、どうやればいいか練習します。時には失敗して追いかけられます。写真はスリを働こうとするミシェル。


スリ

見知らぬ男がミシェルのアパートの外でうろうろしており、会ってみると同業(スリ)であることが分かり、23分、色々な技法を教えてもらいます。相手の懐から財布をスリ、そのまま抜き取らずに下へ落として前身頃の下で他の手で受け取る、相手の懐からペンを取ってスリービングする、指の柔軟体操をしてコインをいじって訓練する、ピンボールで反射神経を養うなど。写真はテクニックを習うミッシェル。


スリ

家に帰ると、ジャンヌの置手紙が来ています。母が危篤で、ミシェルは久しぶりに会いに行くと直ぐに亡くなります。31分、その後、同業の男と共同で、銀行前でタクシーに乗ろうとしている男からスリます。すった財布をそのまま持っていると、捕まった時に申し開きができないので、直ぐに仲間にパスすることは定石のようで、次回紹介のジェームス・コバーン主演の「黄金の指」でもそのことが重要事項として出てきます。ジャックと喫茶店に入っていた時、初犯で尋問した警部に会い、愛読書“スリ王”の話をします。警部はミシェルのことを疑っています。この辺りのやり取りは、「罪と罰」を彷彿とさせます。ミシェルはその本を警部に貸すために警察へ行きますが、暫く待たされます。そして警部とスリの話を少しして家へ帰ると、留守の間に、家宅捜査をされたようでしたが、盗品は見つけられていませんでした。その後、ミシェルは時計をスル技を覚えます。道路を渡る男から時計をスリ、40分、机の脚に巻き付けた腕時計を、時計が回転しないように押さえながら、留め金を親指で外して取る練習をします。ミシェルとジャンヌとジャックの3人で遊園地で遊んでいる時、ミシェルは他人の時計が気になり、勝手にその場を離れてスリを働きに行き、時計を手に入れますが、追われて怪我をします。ジャックはミシェルが急に帰ってしまったのでどうしたのか尋ねてきますが、破れたズボンを見て何かを察します。立去るジャックに、ミシェルは、ジャンヌを愛しているんだろ?と言います。46分、駅の切符売り場で、仲間と3人で組んで女性からハンドバッグをスリます。男の財布からアウトジョグ?している札を抜き取る、48分、改札を通る男からスル、列車内で荷物を棚へ上げている男からスル、列車の通路を通る男から財布をスリ、札を抜き取ってまた元へ戻す、列車に乗る男に手を貸しながら腕時計をスル。写真は財布をパスする一味。


スリ

そうこうしている内に、2人のスリ仲間が捕まります。怖くなって、ミシェルは急にイタリアへ発ち、その後、イギリスへと渡り、2年間、スリの生活をします。再び帰ってきて、ジャンヌの暮らしているアパートへ立ち寄ると、ジャンヌが赤ちゃんと暮らしています。ジャックに捨てられたのです。彼は更生を誓い、しばらくは真面目に働きジャンヌを助けますが、競馬新聞を読んでいる男と知り合い、昔の食指が働きますが...。最後もちょっと「罪と罰」的な終わり方です。

テクニック的なところが沢山出てきて、映画としても質が高く、お勧めの1本です。次回もスリをテーマにした映画「黄金の指」を取り上げます。

トピック

既に放送されたものもありますが、マジック番組情報です。

5月18日 「千鳥かまいたちアワー」 23時30分~ 日本テレビ

5月19日 「ナニコレ珍百景」 19時~ テレビ朝日

5月23日 「わらたまドッカーン 選」 17時20分~ NHKEテレ

5月23日 「わんにゃん観察アニマリング」 20時~ TBS

5月24日 「わらたまドッカーン」 8時25分~ NHKEテレ

5月26日 「ニノさん」 10時25分~ 日本テレビ


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