• HOME
  • カードマジック
  • コインマジック
  • 日用品・雑貨
  • マジック基本用具
  • DVD
  • 書籍
  • ムービー

コラム

第41回 多羅尾伴内シリーズ第11話 七つの顔の男だぜ(2024.5/10 up)

日曜21時から放送中の日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS系)のEpisode 4 冤罪にマジック・シーンが出てきました。長谷川博己演じる明墨正樹は、公園で同業の弁護士、宇野雅人とその家族に近づきます。女の子が持っていた風船が飛んでいきそうになるのを明墨はキャッチして、女の子に渡します。そして、両手の指先を上に向け、掌は自分の方に向けた状態で、右手続いて左手と、天海のフロントハンド・プロダクション(図)で1枚ずつカード(犬の絵と花の絵が描かれている、青裏のバイシクル・ライダー・バック)を取り出し、女の子と奥さんに渡します。


七つの顔の男だぜ2

そして、右手をミリオンカードで1枚出しをする時のように右に伸ばして掌を見せながら宇野弁護士に近づき、バック・パームから裏向きの1枚のカードを取り出して、宇野に渡します。表を見ると、宇野が浮気している証拠写真です。明墨は右手をポケットに入れて、同様にフロントバンド・プロダクションでキザに名刺を取り出して宇野に渡します。風船を渡した後で何気なく、両手をコートのポケットに入れて、カードをスチール?しているところはマジシャンの素質があります。

TVerで次の回が放送するまで見られます。

『七つの顔の男だぜ』


七つの顔の男だぜ1

監督:小沢茂弘
脚本:比佐芳武
原作:比佐芳武
出演:片岡千恵蔵(多羅尾伴内), 中原ひとみ(馬場きみ子), 中山昭二(清島了介), 山形勲(大沢警部), 江原真二郎(桜井新吉), 星美智子(桜井ミチ), 進藤英太郎(星村周平), 喜多川千鶴(馬場不二子), 久保菜穂子(川北とめこ), 東野英治郎(宮下源吉), 佐久間良子(松川その子=マリ)
配給:東映
公開:1960年
上映時間:87分

富豪令嬢である馬場きみ子が路上で誘拐され、別の事件で検問を張っていた刑事2人が射殺されます。多羅尾伴内は大沢警部(いつもは宇佐美淳也が演じていましたが、山形勲になっています。更に宇佐美淳也は石田捜査課長と格下げされています。どうせなら、同じ役の方が続けて見る人には分かりやすいですよね?)と共に捜査に乗り出します。犯人が誘拐に用いた車はきみ子の婚約者、清島了介(演じるは中山昭二で、「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長と言えば分かるでしょう)のもので、別の偽ナンバーを付けた状態で鎌倉で発見されます。伴内は片目の運転手に変装して、偽ナンバーを探りにドライブ・クラブ宮下商会を訪れます(宮下を演じるのは、黒澤明の「用心棒」で居酒屋の権爺を演じた東野英治郎)。しかし、ナンバー製造者の田島は既に殺されており、宮下自身も行方をくらませてしまいます。机上の数字のメモを頼りに多羅尾は第2埠頭に向い、船員に姿を変えて宮下を待ちますが現れたのはミチという夜の女でした。多羅尾は拳銃を売りたいと申し出て、ミチの紹介でキャバレー、ニュー・モナコにいる弟の桜井新吉を訪ねます。桜井は拳銃を買い取りますが、多羅尾とミチは帰宅途中に桜井の親玉、星村興業の星村の差し金で襲撃され、ミチは兇弾に倒れます。多羅尾はニュー・モナコで見かけたきみ子の義理の母、不二子を訪ね、メモの暗号を解き明かし、身代金受け渡しの情報であることを説明しましたが、不二子は多羅尾には協力しませんでした。

42分、多羅尾はキザな紳士に化け、ニュー・モナコへ行き、ハイボールを注文し、「僕は手品が趣味でね。それをやらないと飲む気がしないんだよ」と言い、左手の中に火の着いたタバコを入れ、くす玉にして投げ上げます(本人がやっていますが、怪しい手つきです)。そして、空中から千円札を取り出し(編集で繋いでいます)、ボーイにチップとして渡します。


七つの顔の男だぜ3

背広の胸ポケットから花を取り、父の松川刑事の死を探るため、マリと名乗ってニュー・モナコに潜り込んでいるに松川その子(写真右)に向かっておじぎした花を渡します。


七つの顔の男だぜ4

「1プラス1は?」と聞き、とめこ(写真左)が2と答えると、「じゃあ零に零を加えると?」と聞き、ゼロと答えると、「ところがさにあらず。いいかね、ここには何も無いゼロ、ここにも何も無いゼロ。ところが、このゼロとゼロをこうプラスすると」と言いながら右手左手と改め、両手を合わせます。すると2枚の一万円札が出てきて、「見たまえ君、2だ」と言って、2人に札をチップとして渡します。ここは両手を合わせるところと、札が出るところでカットが切り替わっています。自分は香港帰りの紳士、張子銘の片腕、川田誠三と名乗ります。店から出て行く時に、空のグラスを取ると、横にいた客のポケットからハンカチが飛んできてグラスに入ります。ここはジャリで引っ張っているように思えます。その後はいつものように、多羅尾は先回りして張子銘に変装して、星村に取引を持ちかけるのでした。そして富豪令嬢誘拐の裏には、意外な犯人がいたのでした。

第36回で紹介した「十三の眼」で殉職した刑事も松川でした。又。そこでもキザな紳士で登場し、「零に零を足すと?」と言いながら、札をプロダクションしています。

シリーズ最終話であって、最後の銃撃戦は派手で、宮下が機関銃を持って出てきます。

最後に、多羅尾伴内シリーズのパターンをまとめますと、
・事件が起きると警察を訪問し、“多羅尾伴内”と印刷された名刺を毎回差し出す(しょっちゅう協力しているのですから、警察の人たちは多羅尾のことを覚えているのでは?)
・悪者は個人ではなく大きな組織で、被害者や登場人物の大半が悪者の一味だったりする。逆に、悪者の中に内偵中の刑事がいる場合がある。これらはよくあるパターンなので意外性が無い。
・キャバレーがストーリー上、舞台のひとつになり、ストーリーとは無関係の歌と踊りのシーンが出て来る。又、悪者のアジトである場合が多い。
・自分の正体を明かしながら、事件について謎解きをする。
・名乗った後に脱ぎ捨てた変装と服が消えている。
・撃ち合いでは、相手の拳銃を飛ばすだけで、どんな悪人でも殺さない。
・多羅尾からの緊急連絡で、警官隊が突入して、全員捕まる。
・最後は被害者への手紙を残し、何も告げずに、車で去って行く。

次回は片岡千恵蔵主演で、石田天海が手品指導をした「俺が地獄の手品師だ」を紹介します。最も多くマジック・シーンの出て来る邦画で、天海によるマニアックなハンドリングが楽しめます。

参考文献

1) 二川滋夫:「ダイスの予言」『テーブルマジック』(東京堂出版, 1993) p.25

トピック

終わったのもありますが、手品の番組情報です。

5月9日23時50分~ 「漢字ふむふむ」 Eテレ

5月14日16時50分~ 「テキシコー(3)」 Eテレ


pagetop
当サイトは日本ベリサイン株式会社の認証を受け、SSL暗号化通信を実現しています。