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コラム

第16回 ルパン三世 カリオストロの城(2023.11/17 up)

あるワークショップで、観客から見たらウォンドやシンブルはどう見えるんだろうという課題が出ました。ウォンドは魔法の杖ですが、それでお呪いをかけるのであれば誰しも理解するでしょうが、魔法の杖自体を出したり消したりするのは奇妙ですよね?星新一のショートショートに打ち出の小槌で打ち出の小槌を増やすという話がありましたが、打ち出の小槌は使えばいいわけで、増やすことに意味があるのか?ということです。

シンブルはクロース・アップなら指ぬきだと説明できますが、ステージでは謎の指サックです。先日、松戸奇術会の発表会を見に行きましたが、そこに出演した人でジュエリー・プロダクションを演じた方がいました。シンブルは島田晴夫のように宝石を付けたもので行い、出したものを手の形をしたスタンドの指に飾っていくというオシャレな演出でした。こういったものであれば、宝石が付いたキャップが何なのか分からなくても、プロダクションした意味は観客に伝わるでしょう。手品というのはありえないことを見せる芸ですが、最初に述べたような、観客が見ることに集中できないような不条理(ノイズ)はできるだけ排除すべきです。尤も、不思議であることが優先なので、なかなか難しいですが...。続く

『ルパン三世 カリオストロの城』


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監督: 宮崎駿
脚本: 宮崎駿, 山崎晴哉
原作: モンキー・パンチ
声: 山田康雄(ルパン三世), 増山江威子(峰不二子), 小林清志(次元大介), 井上真樹夫(石川五エ門), 納谷悟朗(銭形警部), 島本須美(クラリス)
音楽: 大野雄二
主題歌: ボビー「炎のたからもの」
製作: 東京ムービー新社
公開: 1979年12月15日
上映時間:100分

世界的なアニメ監督、宮崎駿の作品で、多くの研究書やガイド・ブックが出ているので、ここで改めて解説するまでもないでしょう。「ルパン三世」TV第1シリーズや東映時代にやったことの大棚ざらえで、新しいものは無いと監督本人が言っています。監督の作品をつぶさに見ている人にとっては、このシーンは過去のあのシーンの焼き直しだと気がつくかもしれませんが、アルセーヌ・ルパンなどをイメージした血湧き肉躍る冒険活劇は、無駄のないストーリー展開、監督の趣味が入った武器や乗り物の設定、アクション・シーンのカメラワークなどどれをとっても一級品で、必見の1本でしょう(スピルバーグが自分がカー・チェイスを撮らないのは、「カリオストロの城」を超えられないからだとも言っています)。これから見ようという方は、TV第1シリーズを何本か見てから、こちらを見た方が世界観やキャラクター設定が分かってより楽しめるでしょう。

監督初の劇場版アニメでしたが、公開当時は転けました(地方では「ナイル殺人事件」と併映)。怪盗ルパン三世は仲間の次元大介と共に、精巧な偽札「ゴート札」の秘密を探るべくヨーロッパのカリオストロ公国に向かい、そこで追われているウェディングドレス姿の少女、クラリスを助けるのですが...。43分、悪者の伯爵の塔に忍び込んだルパンが、幽閉されているクラリスを勇気づけるために手品を披露するシーンがあります。

クラリスを救い出すと言うルパンに対し、「あなたはカリオストロ家の恐ろしさをご存じないのです」と答えます。するとルパンはいきなり手を拳に握り、力み始めます。クラリスがどうしたのか?と思って見ていると、握った拳から花が咲き、その後、花に繋がって万国旗が出ます。因みに、万国旗の国の配列は手品用に一般に売られているものとは違います。手品用は最後から2番目にカナダ国旗があり、取り出す際にカナダが出てきたら最後が近いので端を落とさないように気をつけるというのは大学のクラブでは知られたノウハウです。アニメだからどんな現象でも可能ですが、いいかげんに処理してはいません。シーンを見直してみると、ルパンはちゃんとポケットからネタ?をロードしているのが分かります。ルパンのことをクラリスが信用していないので、ポケットに手を入れて、肩を落としてがっかりする風を演じ、スチールしてくるところなど、ミスディレクションが効いていますね。

そう言えば、ジェフ・マックブライドはレクチャーで、「彼女とデートしていて、単にハンバーガーを出しても意味が無い。彼女がお腹すいたと言った時に出すのが本当のマジックだ」と言っていました。その後、レクチャーの後でみんなでバーに行き、ジェフの隣には若い女性が座っていたのですが、周りの人たちは小声で「花出せ花出せ」と言ったそうです。残念ながら出ませんでした。

大学のマジック・クラブではこのシーンの真似が流行ったそうです。又、DPグループで「ルパンが愛した手品セット」という商品名で商品化されました。現象はほぼ、映画と同じです。初期は万国旗の品質が悪かったのですが(シワクチャで色褪せていた)、特上万国旗になり、又、大きなサイズもあります。

2022年1月27、28日にはパシフィコ横浜 国立大ホールでシネマ・コンサートも行われました。「カサブランカ」「ニューシネマパラダイス」「雨に唱えば」など、色々なシネマ・コンサートに行きましたが、シネマ・コンサート向きの映画やホールというものがあります。大きな劇場ではサイドの席からスクリーンが見えにくく、又、遠くの席だと演奏している楽器が見えません。国立大ホールや国際フォーラムでは箱が大きすぎるので、東京文化会館ぐらいが丁度良いと思います。

又、劇中に音楽が効果的に使われていなくてはなりませんが(ミュージカルの方が向いています。予想外に良かったのは「サイコ」でした)、「カリオストロの城」は最初から最後まで名曲が続いているわけではないので、わざわざシネマ・コンサートにしなくてもいいと思いました。2部は松崎しげるなどによる歌でしたが、TV第2シリーズ以降の曲が主体なのでちょっとがっかりしました。因みに、私は第2シリーズ以降は詰まらないので殆ど見たことがありません(第2シリーズの宮崎駿が監督した145話と155話を除く)。作曲の大野雄二がコンサートの終わりに、いらなくなったスコアを客席に投げ込んでいました。

EssoのCMにルパン三世を起用しており、万国旗を渡すシーンのテレフォンカードが販促品として出されました。以下は、カリオストロの城は出てきませんが、Essoなど、ルパンが出てくる昔のCMです。



映画を見た方は、岡田斗司夫氏によるマニアックな解説をどうぞ。



次回は私がマジック指導をしたテレビ・ドラマ「歪んだ果実」です。「カリオストロの城」へのオマージュがちょっとだけ入っています。

トピック

手品関係の番組情報です。前田知洋、藤山新太郎らが出演します。

11月19日18時~ 「COOL JAPAN」 NHK BS-1

11月20日17時~ 「COOL JAPAN」(再) NHK BS-1

参考文献

『100てんランド・アニメコレクション ルパン三世 カリオストロの城』(双葉社, 1981)

『ユリイカ臨時増刊 宮崎駿の世界』(青士社, 1997)

栗田研:「映像の魔術 ルパン三世 カリオストロの城」『Four of a Kind Vol.2 No.3』(チェシャ猫商会, 1998) p.64

高橋実:『ルパン三世ザ・ファーストTVシリーズまぼろしのルパン帝国』(フィルム・アート社, 1994)


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