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コラム

第95回 プレステージ(2025.5/30 up)

映画評論家の松崎健夫は着る服を黒と決めています。毎日、今日は何を着るか1分くらい考えるとすると、1年で365分になり、それだけの時間があれば映画が3本見られるからだそうです。黒で言えば、Max Mavenは若い頃から自分のカラーを黒と決めており、服だけでなく、自宅の部屋の壁も黒だったそうです。夜は寝やすいけど、朝は起きにくいと言っていました。今回紹介する映画は、まさにそういった“役”に徹するためには身も削る男たちの争いの話です。これを見て感心したら、掌にマグネットを埋め込むくらいのことはしましょう。では、予告編から


『プレステージ』

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原題:The Prestige
監督:Christopher Nolan
製作:Christopher Nolan、他
原作:Christopher McKenzie Priest(The Prestige)
出演:Hugh Michael Jackman(Robert "The Great Danton" Angier), Christian Charles Philip Bale(Alfred "The Professor" Borden), Michael Caine(John Cutter), Scarlett Johansson(Olivia Wenscombe), David Bowie(Nikola Tesla), Ricky Jay(Milton), Piper Perabo(Julia McCullough), Rebecca Hall(Sarah Borden), Chao-Li Chi(Chung Ling Soo)
テクニカルアドバイザー:Ricky Jay, Michael Weber
配給:ギャガ
公開:2006年
上映時間:128分
製作国:アメリカ、イギリス


「オッペンハイマー」でアカデミー監督賞を受賞したクリストファー・ノーラン監督作品。時系列を逆行した描き方で注目された「メメント」など、過去と現在が激しく交錯したストーリーを描くことを得意としており、「プレステージ」にもそういったところが見受けられます。但し、例えば“3日前”などと親切に字幕で示されないので、注意して見ていないと分からなくなってしまいます。伏線の張り方も細かく、あちこちにヒントが出されているので、2回は見なければならないでしょう。終盤の種明かしをするところの描き方は見事で、原作者も脚本の改案を褒めていました。

冒頭、カッターが机の上に置かれた籠の中の小鳥を示し、布を掛けて籠ごと消し、その後、小鳥を取り出す演技と共に、マジックに関するナレーションが流れます(この映画では、視覚的なマジック・シーンよりも、魔術的な語り口を重視したそうです)。「マジックは3つのパートで成り立っている。何でもない物を見せる“確認”(フレッジ。この場合は小鳥を見せる)、その何でもない物で驚くことをしてみせる“展開”(ターン。鳥籠ごと小鳥を消す)、最後のパートは偉業(プレステージ。小鳥を再び現す)」。

1890年代のロンドン。ボーデンはライバルであるアンジャーの瞬間移動マジックの秘密を調べるため、彼が舞台で演技中に舞台下に侵入します。するとアンジャーはボーデンの目の前で、上から巨大な水槽に落ちてきて溺死します。ボーデンは側にいたことでアンジャー殺害の容疑で逮捕され、裁判にかけられます。

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過去に遡り、12分、駆け出しのアンジャーとボーデンは、奇術師ミルトン(Ricky Jay)の下でスタッフとしてサクラをしていました。観客として選ばれた2人は舞台へ上がり、アシスタントのジュリア(アンジャーの妻)の手足を縛ります。ジュリアは釣り上げられ、水槽に落とされ、フーディーニの水槽脱出のように脱出します。

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詰まらない手品をやっていることに対し、ボーデンは不満を漏らします。「本物のプロならほかのプロが驚く新しいネタを考えるべきだ」ボーデンがそういったものを考えてあると言ったのに対してカッターが「売ってくれ」と言うと、ボーデンは「僕しかできないと」と答えます。16分、テンリー劇場に出演しているチャン・リン・スーの金魚鉢のプロダクションの種を見破るため、2人は見に行きます。テーブルを大きな布で覆い、金魚鉢などを出します。1個目は編集で繋いでいますが、2個目はワン・カットで演じており、不思議に見えます。チャン・リン・スーは両足の間に金魚鉢を隠して挟んでおり、それだと、よたよたと歩くことになるので、日常でも足が悪く見せることで、その動作は通常のものだと思わせているのだとボーデンは推測します。

19分、ボーデンは小さな劇場に出演しているマジシャンのアシスタントとして働きます。マジシャンは机の上に小鳥の入っている鳥籠を置き、布を掛けて、上から手で叩くと籠ごと消えます。胸に差した花を取ってハンカチを掛け、小鳥にして、消えた小鳥が戻ってきたことを示します。ボーデンはショーを見に来ていたサラとその甥と知り合います。舞台が終わってから、机の中から折り畳まれた鳥籠を引き出し、潰されて死んだ小鳥をゴミ箱に捨てます。サラの甥に、ダウンズ・パームからコインをプロダクションして見せます。

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23分、ジュリアが水槽脱出に失敗し、カッターは水槽を斧で叩き割って助けようとしますが、既に溺死していました。

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事故はボーデンが結んだロープが原因と思われ、緩く結ぶと吊り上げて水槽に落とす前に解けて落下する可能性があり、2重に結ぶと水槽で縄抜けができなくなる危険があり、ボーデンはどっちで結んだか覚えていないと言い、アンジャーを激怒させます。

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そして2人は仲違いして別々の道を進みます。アンジャーはカッターをアドバイザーとして雇い、ボーデンは無名だったバーナード・ファロンというアドバイザーを雇います。アンジャーとボーデンは憎しみあい、互いを妨害しあい、確執が激化します。

28分、ボーデンはサラと結婚します。妊娠したサラに弾丸受け止め術を演じてみせ、実際には弾は抜き取っているから安全だと種明かしをします。31分、アンジャーは考え事をしながら掌の弾丸に手をかざして、消したり現したりします。ボーデンは大道でマジックを見せます。ポケット・リングをしますがヤジが飛び、観客が求めている弾丸受け止め術の拳銃を取り出します。変装したアンジャーは銃を調べる時に銃口に弾を入れてボーデンに向けて、どっちの方法でロープを結んだかを再び問います。ボーデンは分からないと答え、アンジャーは引き金を引き、ボーデンは左手の薬指と小指を失います。

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36分、アンジャーはバニシング・バード・ゲージを興行師に見せ(ハリー・ブラックストーンのような演出ですが、本物の鳩が入った状態で行うところが異なり、鳩はワイヤーで引かれ、潰されません)、契約を取り付けます。

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そしてグレート・ダントンという芸名で舞台に立ちますが、客として舞台に上がってきたボーデンに邪魔され、鳥籠消しは失敗し、契約は打ち切られます。街中でボーデンが妻と娘と幸せそうにしている姿を見て、アンジャーは更に怒りを覚えます。

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49分、現在のシーン。刑務所でボーデンは看守相手に玉を消します。投げ上げたように見せ、クラシック・パームして消しますが、パームしているボールを落としてしまいます。

50分、アンジャーはコロラド・スプリングスでニコラ・テスラと会います(ここでのデビッド・ボウイの唐突な登場のしかたは、劇場版「ツインピークス ローラ・パーマー最後の7日間」を思い出させます)。

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テスラは右手でアンジャーと握手し、アンジャーの左手に電球を置くと、点きます(下記写真では握手はしていないので、そのシーンではありません)。同じ原理を使ったものを1980年代、Michael Ammarが販売していました。体は電気を通すので手を繋ぐことで回路が通ると電流が流れて明かりが点きます。単に灯りが点くだけだと科学のおもちゃですが、この原理を使った売りネタがだいぶ後になって売り出されました(X-Ball)。客と指を触れると電気が流れてボールが点灯し、選んだ幾何学模様のマークが浮き上がるというもので、DavidStoneを私が最初に日本に呼んだ時に持って来ていました)。

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53分、ボーデンは舞台で4本のリンキング・リングを見せた後、呼び物の人間瞬間移動を行います。舞台の左右にドアがあり、下手のドアの後ろに消えると同時に、上手のドアから現れます。

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56分、ボーデンはサラに、購入した家の鍵をプロダクションしてみせます。

60分、カッターはボーデンが替え玉を使っていると言いますが、指が無いから本人だと言います。そこでアンジャーは自分のそっくりさんを探し、ボーデンのトリックを再現し、新人間瞬間移動として舞台にかけます。アンジャーの方が見せ方が上手いので好評でしたが、ボーデンのやり方を暴くことに固執し、新しいアシスタントのオリビアをスパイとして送り込みます。

69分、新瞬間移動のからくりに気がついているボーデンは舞台で邪魔をし、アンジャーは足を骨折したことで、足を引きずるようになってしまいます。オリビアにボーデンから盗ませた日記を手掛かりに、テスラに会うためコロラド・スプリングスへ行きます(ここで50分のシーンに繋がります)。しかし、日記は読まれることを想定して書かれたもので、アンジャーは騙されていたことに気づかされます。テスラの発明はボーデンのトリックとは何の関係も無かったのですが、アンジャーはテスラから思いもかけぬものを手に入れます。

82分、ボーデンとオリビアのラブ・シーンで、ボーデンが指輪を指から指へ移すフラリッシュをします(より複雑な動きに、Sultan Orazalyのダウンロード商品「The Vault-Elusive」があります)。

ボーデンの妻サラはボーデンの気持ちが分からず酒浸りになって自殺してしまい、オリビアもボーデンの元を去り、娘のジェスだけが残されます。102分、2年後、アメリカから帰ってきたアンジャーは更に凄い瞬間移動を披露します。舞台上で消え、スッポンで奈落へ落ちたはずなのですが、次の瞬間、客席後方に現れ、ボーデンは驚愕します。

111分、面会に来た娘ジェスの耳の後ろから、ボーデンはボールを出します。そしてボーデンはアンジャー殺害の容疑で有罪となり、絞首刑になります。しかし最後にはあっと驚く2重のどんでん返しが待ち構えています。

映画のパンフレットにはMr.マリックのインタビューが載っています。

エンディングでDavid Copperfieldへ謝辞が述べられています。時代考証のため、彼のコレクションを参考にしたそうです。

物語の最後でジャンルがガラッと変わり、例えていうなら、犯罪映画だと思っていたら途中からホラー映画になる「フロム・ダスク・ティル・ドーン」みたいです。まあ、この原作者がどういう小説を書く人か知っていれば、そういった要素が入ってくるのは何となく分かるはずですけどね。又、原作者がやりたかったのは、例えば、「悪魔のような女」などに見られる古典的なトリックのテーマに対する、自分の回答(それも2回やっている)なのでしょう。

次回はデビッドボウイ繋がりで、TVドラマ「ツイン・ピークス」を紹介します。

トピック

6月には前回と今回紹介した「グレイテスト・ショーマン」と「プレステージ」がザ・シネマで放送されます。「プレステージ」は、手品の出てくる映画を3本挙げると、その中に入るものです(他の2本は、第1回で紹介した「スティング」、第10回で紹介した「マジック」)。そんなこともあって、今回は長々とした解説になりました。

5月28日 17時~ 「5時に夢中!」 TOKYO MX

6月1日 12時30分~ 「グレイテスト・ショーマン」 ザ・シネマ

6月1日 21時~ 「グレイテスト・ショーマン」 ザ・シネマ

6月2日 8時~ 「シンシナティ・キッド」 ムービープラス

6月9日 19時~ 「トリック’00 ①②」 テレ朝チャンネル2

6月10日 16時~ 「シンシナティ・キッド」 ムービープラス

6月10日 18時~ 「トリック’00 ③~⑤」 テレ朝チャンネル2

6月11日 18時~ 「トリック’00 ⑥~⑧」 テレ朝チャンネル2

6月12日 18時~ 「トリック’00 ⑨~⑩」 テレ朝チャンネル2

6月13日 12時30分~ 「シックス・センス」 ザ・シネマ

6月17日 19時~ 「トリック’03 ①②」 テレ朝チャンネル2

6月17日 21時~ 「リーサル・ウェポン 炎の約束」 ザ・シネマ

6月18日 18時~ 「トリック’03 ③~⑤」 テレ朝チャンネル2

6月19日 18時~ 「トリック’03 ⑥~⑧」 テレ朝チャンネル2

6月20日 18時~ 「トリック’03 ⑨⑩」 テレ朝チャンネル2

6月21日 6時~ 「プレステージ」 ザ・シネマ

6月26日 5時5分~ 「シンシナティ・キッド」 ムービープラス

6月26日 18時45分~ 「プリティ・ウーマン」 ザ・シネマ

6月30日 6時~ 「グレイテスト・ショーマン」 ザ・シネマ

6月30日 14時15分~ 「斉木楠雄のψ難」 WOWOシネマ


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