2マドンナ、ジャクソン・ファイブ、パンドラから フラリッシュを連想したとしたら、ちょっとしたマニアです。Fat Fingarz、Max V、が何であるか分かっているとすれば、かなりのマニアです。
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前回のフラリッシュのコラムの復習となりますが、2000年頃、フラリッシュがちょっとしたブームになります。1999年発行の Brian Tudor の "Show Off" のDVDや、Dan and Dave、De'Voの登場が大きく関わっています。ところで、2000年代に入っても、フラリッシュ使用の賛否の問題が、かなり根強く残っていました。否定的な見解が、まだまだ優勢な状況でした。2011年の Genii 誌1月号の De'Vo の記事には、2001年当時、まわりのマジシャンから、フラリッシュのブームは1年も続かないと言われたそうです。そして、De'Vo も半年で消え去ると言われたことを報告しています。
ところが、ブームが低下するどころか、その後、いくつものフラリッシュの DVD が発表されるようになります。また、インターネット上でも、フラリッシュの動画を多数見かけるようになります。そして、マジック・コンテストにおいても、フラリッシュを取り入れた演技者が増えるようになりました。その中でも、2003年の FISM で、ジャグリング要素の多い Norbert Ferre が、ステージ部門のグランプリを獲得したことは大きな出来事です。
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2006年のコラムで、Sybil を元にした数名のマルティプル・カットについて報告しました。Sybil は1992年の "Out of Control" の本に発表されたクリス・ケナーの方法です。画期的なマルティプル・カットとして脚光をあびました。ところで、このコラムの報告以降、マルティプル・カットの歴史をもう少し詳しく調べ直したくなりました。その結果、このようなカットは、クリス・ケナーの Sybil が最初ではないことが分かりました。
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1999年の Brian Tudor の "Show Off" のDVDが、かなりの話題を呼びましたが、その後は、特にDan and Dave の活躍にすばらしいものがあります。2004年発行の "Dan and Dave System" のDVDでは、多数のフラリッシュが発表されています。その中でも私の好きな作品は「マドンナ」です。横回転やスイングの加わった動きが、マドンナのステージでの華やかさを感じさせられます。2007年の "The Trilogy" のDVDでは、さらに多数のフラリッシュが発表されます。代表的なものとして、独特の動きが加わった「パンドラ」や「ジャクソン・ファイブ」が発表されています。後者では5分割を基本にして、次々と違った動きへ変化させているため、覚えるのがたいへんなフラリッシュの一つとなっています。2011年には、Dan and Dave のプロジュースによる Chris Hestnes のDVD "Paper Cuts" にも、多数のマルティプル・カットが解説されています。その中では、回転の動きが面白い「リボルバー」が気に入っています。 |
De'Vo が中心となり、フラリッシュを広める活動の組織を結成しています。ここでは、カード・フラリッシュのことを Extreme Card Manipulation と名付け、これを略して XCM と呼んでいます。2006年より9ヶ月近くをかけて、第1回ワールド・トーナメントが開催されました。2007年に最初のワールド XCM チャンピオンが決定しています。台湾の J. S. Lin です。2008年には、カナダの Max Vlassenko が獲得しています。当時、彼は16才です。二人の映像は、2010年に発売されたDVD "World XCM Champions" で見ることが出来ます。また、インターネットでは、Fat Fingerz や Max V の名前で、トーナメント時の映像が見れます。トーナメントは、その後も毎年、開催されています。カナダの Vlassenko の場合、難易度の高いジャグリング要素の強いフラリッシュです。彼の映像を見ていますと、あまりのすごさに圧倒させられてしまいます。このようなフラリッシュを見せつけられると、私の場合、フラリッシュでは太刀打ち出来ないので、マジックの方で、もっと頑張ろうといった感覚にさせられます。
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フラリッシュの発展に貢献してきたDe'Voですが、2008年の事故により、片手と片腕が使えなくなります。治療と訓練により、かなり改善しましたが、以前のような繊細さとスピードを必要とするフラリッシュが出来なくなりました。それでも、2010年にポルトガルで開催されたEMC( Essential Magic Conference )の大会には出演しています。その内容のDVDが発行されましたが、彼の顔だけは、一切、映さないようにしていました。実演したのは、指にはめた指輪の素早い取り外しと、はめ込みのフラリッシュだけです。残念ながら、カードのフラリッシュは実演されていません。また、フラリッシュ(マニピュレーション)のアートとビジネスについてスピーチしています。その中で、トーナメントの優勝者がテレビ出演したり、コマーシャルで活躍されている状況を映像に映し出していました。この映像は、You Tube でも見ることが出来ます。彼自身のDVDは発行されなくなりましたが、本の発行とマジック誌への掲載は精力的に行っています。2009年と2010年にDe'Voの本が発行されています。また、2011年のGenii誌には、1月号から6月号まで、De'Voに関連したフラリッシュが、毎回、数ページにわたり紹介されていました。なお、これら以前にも、2007年に6回発行された「ストリート・マジック」誌に、毎回、フラリッシュを解説していました。2008年に1回だけ発行された「マジシャンズ・マガジン」誌においては、16ページにわたり多数のフラリッシュを解説されていたことには圧倒されました。 |
以前より、フラリッシュ要素の加わったマジックは演じられていました。例えば、4枚のエースを一気に取り出して、表向きに広げてディスプレイする方法があります。あるいは、1枚ずつフラリッシュ的に取り出してゆく方法もあります。また、カラーチェンジも数枚で一気に行われた場合には、フラリッシュ度が高くなります。
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「フラリッシュの最近の状況」のタイトルにした割には、私の興味ある狭い範囲の報告で終わってしまいました。Dan and Dave の最近の活躍も、ほとんど報告出来ていません。De'Vo によるトーナメントとは違った Dan and Dave 主催によるコンテストが行われています。もちろん、投稿された映像によるコンテストです。また、2010年には、DVDによるマガジン "Reel Magic" の2月号で、彼らが表紙を飾り、メイン・ゲストとして対談されています。その中で、今後の彼らの進むべき方向性を語っていますが、正確な内容を聞き取れていませんので、ここでは割愛しました。そして、2011年に開催された第2回の EMC の大会では、彼らがゲスト出演しています。何を語り、何を実演されたのかも、今のところ未確認です。
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