今年は7月6日より10日までの5日間、サンディエゴで開催されました。参加者数は700人は超えていたようです。サンディエゴはアメリカ西海岸のメキシコとの国境に接する町で、2002年にも開催されています。私は I.B.M.のサンディエゴ大会参加は3回目となります。1977年、2002年、そして、今年です。2002年と同じ大会会場で、ホテルのすぐ裏側にトロリー電車の駅があり、市街地へ出向くのに便利です。夜のステージショーは、市街地の劇場で上演されますので、参加者のほとんどがトロリーで移動します。このことも2002年と同じです。
|
ステージコンテストの予選は、大会2日目の朝8時から5時間かけて25名で競われました。この中から6名が選ばれて、大会4日目の夜の劇場での決勝戦に出場します。このファイナル6に選ばれるだけでもたいへん名誉なことです。今年もステージでのアジアの勢いは止まりません。6名の内5名が、東洋系の顔の出場者となりました。日本、韓国、中国、シンガポール、そして、台湾系アメリカ人です。なお、中国の一人だけがジュニアとしての出場です。
|
アダルト 1位 Jason Andrews(アメリカ) |
アダルト 1位 ベン・ジャクソン(アメリカ) |
1位とピープルチョイスを獲得したジェイソン・アンドリュースは全体的にシンプルで地味な印象をうけます。ゾンビボールから始まり、四つ玉、カード、そして、ハトは一羽の出現と消失で終わっているからです。しかし、それぞれの演技に、少しの工夫が加えられています。最初のゾンビでは、何もない状態からゾンビボール用の布が出現し、この布からゾンビ用のボールも出現します。四つ玉の演技の最後では、指間に四つのボールがある状態で、両手を合わせて手をひっくり返すと、一瞬にして、4枚のカードが指先から突出した状態に変化します。これは見事です。カードの最後では、1枚だけジャンボカードを取り出し、これを4分割した後に復元させ、さらに、大きなカードシルクに変化させていた点は面白さがありました。ただし、これ以外の部分のゾンビ、カード、ボールの演技は平凡な内容です。そして、一羽のハトの出現と消失だけで終わっていたのでは、クライマックスとして弱い印象が残ってしまいました。
|
日本のHanna Kikuchiさん(9才)は、決勝戦には進めませんでしたが、ジュニア部門の2位を獲得しました。予選会場で、観客を最もわかせていたのは、彼女であったように記憶しています。翌日の新聞には、大会の模様が取り上げられており、Hannaさんの演技写真が大きく掲載されました。この新聞は、会場の受付掲示板にはり出されていました。平坦にして置かれた大きな旅行カバンの上で、Hannaさんの母親が、9才のHannaさんに変身します。コスチュームチェンジの後、ダンシングケーンが演じられますが、大人顔負けの演技です。この後、元の母親に戻り、カバンを引っ張ってそでへ消えます。観客の反応からすれば、決勝戦へ進む勢いがあったのですが、一つの不利な点が目立ちました。ジャリが最初から最後まで見えっぱなしであったことです。途中から2本のステッキを使いますが、そのために、ジャリの存在が、より一層気になります。ジャリが見えなければ、ジュニア1位とピープルチョイス賞の可能性もあったと思います。
|
1位を獲得したのは、アメリカのベン・ジャクソンです。レモネードと書かれた紙を持って登場し、これをコーン状に巻くと、中からレモンが転がり出ます。この紙を反対側に筒状に巻くと、ストローが落下し、これを上方より入れると、下からレモネードの液体が入った細長いグラスが出現します。このストローより、1枚ずつ3枚のコインが出現し、この3枚により、飛行と消失、再現が行われます。シルバー色のクレジットカードと緑色のキャップのサインペンを両手に持って示し、一瞬で、両方ともゴールドの色に変わります。デックが出現し、8のカードを1枚ずつフラリッシュ的にあざやかに取り出し、その都度、胸ポケットへ挟みます。この4枚のカードからビリヤードボールが取り出されます。4枚の8のカードのバックを示すと、1枚に文字が現れます。しかし、私には記載内容がよく分かりません。残りのカードのバックにも次々と文字が現れ、4枚を表向けると4枚ともジャックに変わっています。演者の名前がジャクソンだからジャックと言っていました。この4枚から、さらに、白色のビリヤードボールを落下させて終わります。
|
大会3日目のゲストショーは、全てがすばらしい内容でした。トップの峯村健二氏のマジックで盛り上がり、バレリーナと力わざの男性による中国ペアのバランス芸もすごいの一言です。最後は、リック・トーマスのイリュージョンショーですが、楽しく不思議なショーで、ほぼ全員のスタンディングオベーションとなりました。客をステージに上げて、客とのやり取りを面白く熱演され、イリュージョンが不思議なだけでなく、最後には、リック・トーマス本人が直立姿勢のまま、高い天井近くまで垂直にスーと上昇し、そのまま下降したのにはビックリしてしまいました。
|
今回、夜のショーは、2日目はホテルで行われた有料のディナー付きのショーでした。しかし、それ以降の3日間は、ダウンタウンにある劇場で行われました。ホテルのすぐ裏にはトロリー電車の駅があり、ほとんど全員がこれに乗って劇場へ移動しました。3から5車両編成で、たしか目的地まで7駅ほど先で、片道2.5ドル必要です。日本円では220円ほどになり、日本の地下鉄と同じような料金です。3日間乗り放題の特別チケットが、大会受付で10ドルで販売されていましたので購入しました。駅には切符の自動販売機があるのですが、駅には自由に出入りが出来、駅員がおりません。降りる時も同様です。車内では、係りの人が回ってきません。すいている時に、犬を連れた係員が一度回ってきたのを見た程度です。しかし、切符を見せることがありません。降りる時も切符を渡すところがありません。どのようなシステムになっているのか訳が分かりません。たしか、2002年の時は、3日間の切符を参加者には無料で配布されていたと記憶しています。その時も、トロリーに乗って切符を見せることも渡すこともなく、不思議に思っていたことを思い出しました。
|
今年も私にとっては充実した大会でした。コンテストに特別なスターが登場しませんでしたが、ステージもクロースアップも大いに楽しめました。最近のマジックの傾向が分かるだけでなく、新しい発想やアイデアに感心させられます。また、夜のショーも、エンターテイナーとしてのすごさに圧倒されました。今回の大会に、日本から30名以上が参加されています。そして、ステージショーのゲストとして峯村健二氏、レクチャーに深井洋正氏が活躍されました。ディーラーショップは昨年に比べ活気があり、日本からも4店が出店されていました。深井マジック、セオ・マジック、菊地マジック、クライス・マジックの4店です。私は今年も、ディーラーショップの古書店で、帰りのカバンがいっぱいになるまで文献を買い込みました。なかなか手に入らないマイナーな雑誌や資料が多数手に入りました。まだまだ調べたいことが多数あり、大いに役立ちます。
|