今回の調査により、初期の頃の考え方が、最近の方法に大きな関わりをもっていることが分かってきました。また、調査を始めた頃は、初期の10までの数を言わせる方法は、古い考え方だと思っていました。しかし、一般客に演じる場合には、こちらの方がむいているのではないかと考え方が変わってきました。スピードアップ出来ますし、テーブル・ホップにも適したマジックといえるからです。
これに対して、好きな数とカード名を言わせるNamed Card at Named Numberは、どちらかと言えば、マニア相手にチャレンジしているようなマジックと思えてきます。セットデックを使って、めんどうなことをしている割には、一般客に、こちらが思っているほど受けていないのではないでしょうか。これ以上に強い印象を与えるマジックがたくさんあるからです。しかし、マニアに対しては異なります。スムーズに演じられた場合、他のマジックよりも、強いインパクトを与えます。特にノータッチで演じられた場合、一般客以上に、強い興味の対象となります。つまり、マニア心をくすぐられるマジックが"Any Card at Any Number"ではないかと思っています。
最後に、ここでの報告では、各方法の概要や、Berglasの実演の目撃報告の詳しい内容、そして、方法による分類の各作品の変遷等については紹介出来ませんでした。これらについては、今後に発行されます「トイ・ボックス9号」に詳細を報告させて頂きました。ただし、最近のマジックに対しては、解説をさし控えましたので、特徴点と現象だけの記載となっていますことをおことわりしておきます参考文献と作品一覧各作品に使用されている技法や特徴点だけを、一言ずつ書き加えました。
(第一期作品 1786年~1914年)
1786 Henri Decremps Testament de Jerome Sharp
配る途中でデックをひっくり返す
1859 Dick & Fitzgerald(発行者) The Secret Out
グライド(ロングカード、パス、数理原理を使って客のカードをボトムへ)
1863 Dick & Fitzgerald(発行者) Parler Tricks with Cards
配る途中でデックをひっくり返す(Decrempsと同じ方法?)P.39
グライド(The Secret Outと同じ方法)P.113
1868 Robert Houdin Les Secrets de la Prestidigitation et de la Magic
(1877 Hoffmannが英訳 Secrets of Conjuring and Magic P.256)
The Thoughts of Two Persons Anticipated フォースカードを7枚目へ
1871 Cremer The Secret Out
グライド(1859年のThe Secret Outと同じ方法)
1876 Hoffmann Modern Magic
(1853年のフランス語のPonsinの本のカードマジックが、かなり英訳)
1、グライド 2、配ることの繰り返し
3、配った後、デックをひっくり返す(数名のカードで繰り返す)
1887 Sach Sleight of Hand
1、グライド 2、配った後、デックをひっくり返す 3、セカンドディール
4、配ることの繰り返し 5、内エンドからの特殊なボトムディール
1888 R.Kunard The Book of Card Tricks
1、グライド 2、配った後、デックをひっくり返す
3、配ることの繰り返し 4、セカンドディール
1897 A.Roterberg The Ubiquitous Card New Era Card Tricks
右手に数え取ったパケットのボトムカードをデックのトップへ戻す
1899 Hoffmann Trick with Card
フォースと、そのカードを7枚目へ(ウーダンの方法とほとんど同じ)
1902 S.W.Erdnase Power of Concentrated Thought Expert at The Card Table
客にカードを思わす方法(4種類)と、そのカードを8枚目へ
1908 Chas G. Shepherd The "Acme"Card Trick The Sphinx Vol.7 3月号
最初の"Named Card at Named Number"現象 エイト・キング・システム使用
1909 T.Nelson Downs The Art of Magic
サイドスティールでトップへ ボトム側をサムカウントしてトップへパス
1914 Camille Gaultier La Prestidigitation sans Appareils
(1945年にHugardにより英訳版 Magic Without Apparatus)
1、客のカードを7枚目へ 2、配ることの繰り返し
3、配った後、デックをひっくり返す 4、簡易なセカンドディール
5、グライド 6、客のカードをパームしつつカードを配る
7、セカンドディール 8、A.Roterbergの方法
9、ボトムのサムカウントとパス 10、L.Homme Masqueのパームとパス
11、デックをポケット等へ入れ、指定数までカードを取り出してゆく
(第2期作品 1930年~1969年)
1931 Laurie Ireland Ireland Writes a Book
シャフルさせたデックを演者の内胸ポケットへ入れ、1枚ずつ取り出す。
1933 Al Baker A Card And A Number Al Baker Book
二組のデックを使用。数を言わせ、一方のデックからカードを選ばせる。
1935 Al Baker A Card And A Number 2nd Method Al Baker Second Book
上記の改案。インジケーターとして、10枚ごとにショートカード。
1935 Laurie Ireland Year Book 1935
トップから7枚目へもってきて、10~45の間の数を言わせる。
1937 Hugard Encyclopaedia of Card Tricks Thought Anticipated
ニコラ・システム使用。Named Card at Named Numberの基本型。
1938 John Northern Hilliard編集 Greater Magic(ページ数は1994年度版より)
ワンハンド・ボトムディールによる方法 P.212
ロベール・ウーダンの方法にアードネスの方法も追加記載 P.330
スベンガリーデックを使用した方法 P.432
1940 Hugard & Braue The Card at Any Number Expert Card Technique
バックスリップ。右手パケットをデック上へ打ちつける。
1941 Al Baker Cooperative Conjuring Magical Ways and Means
配ることの繰り返しによる方法。(原理が異なる。ダイスやパームを使用)
1941 Tarbell Course in Magic Vol.1 Card Appearane at Selected Number
楽な方法でトップから7枚目へもってくる。5~10の間の数を言わせる。
1958 Ken Krenzel It Can't Be(単一商品として販売)
(1962年 奇術研究28号 高木重朗氏一部分改案による日本語解説)
Al Bakerの方法の応用。カードケースに52枚の位置のメモを貼付。
1962 Clayton Rawson How To Entertain Children
(1963 日本語版「あなたは魔術師」 思考の力)
配ることの繰り返しによる方法。クリンプカードと数回のカット。
1964 Dai Vernon Name A Number Vernon's Expended Lecture Note
Irelandの方法の改案。トップから3枚目へ。1~52の間の数を指定。
1967 Dai Vernon Pure Mathematics
Lewis Ganson著 Dai Vernon's Ultimate Card Secrets
10枚のセット。二人の客に1~5の間の数と6~10の間の数を言わせる。
1968 Temple C.Patton Fidgety Digit Card Tricks Anybody Can Do
客のカードを7枚目へ。ボトム2枚をセット。5~10の間の数を言わせる。
1969 Walter Gibson著 The Complete Illustrated Book of Card Magic
Any Number Down セカンドディールの方法。デックをひっくり返す方法
Double Count 配ることの繰り返しによる方法
Turnup Count 配ることの繰り返しによる方法で、客のカードが表向く。
Any Number Up グライドによる方法
(第3期作品 1970年~1998年)
1971 Paul LePaul Baffling Impossibility Alton Sharpe著Expert Card Chicanery
二人の客の内、一人がサクラ。名刺に52枚のカードの位置が記載。
1972 加藤英夫 3度目の正直 やさしいカード奇術
配ることを3回繰り返す。2回目も同カードが出現。3回目は客に配らせる。
1972 加藤英夫 エニイナンバーリバース カードマジック研究第2巻
配ることの繰り返し。客のカードは表向きで出現。
1975 Frank Garcia & George Schindler An Absolute Miracle Magic with Cards
(日本語版 1975年 高木重朗訳「トランプ手品入門」 完全な奇蹟)
Al Bakerの方法が楽に行えるように改良
1976 David Berglas The David Berglas File No.1 ピーター・ワーロック記載
飛行機の中で見せられた経験談の報告
1976 Edward Marlo 1835 Prediction Hierophant 7 (このテーマに近い作品)
フェロウシャフルの原理(18ー35) 15~20の間の数を言わせる。
1980 Tom Mullica Numbers Up Apocalypse Vol.3 No.5
ワンハンドにて、客のカードを指定枚数目へ表向きにもってくる。
1981 Jimmy Grippo The Magic of Jimmy Grippo
Your Number? 配ることを繰り返す
Card at Any Number グライドを使用
1982 T.A.Waters Imposition Deckalogue
サクラとネイルライターを使用
1984 T.A.Waters Disposition Cardiact
薄いデックを二組使用
1984 Edward Marlo On The Berglas Effect Jon Ragherbaumer著 At The Table
Berglasの実演の目撃談とマルローのサクラを使った方法
1984 Basil Horwitz 140608 to 1 The Mental Magick of Horwitz Vol.2
3デックと封筒とネイルライターを使用。デックの一つは数が記載。
1985 Rich Bloch and Bob Cassidy The New York Magic Symposium 4
In The Shadow of The Synehronous 数名に数を書かせる。ミスコール
1986 Larry Jennings The Classic of Larry Jennings
Dice-O-Matic 3個のダイスを積み重ねさせる。見えない部分の合計数。
Slap Me Again Vernon"Slap Trick"の応用。数理原理とトップカバーパス
1986(7) Chris Kenworthey and Haruhito Hirata Any Card at Any Number/Mastermind
平田治人氏のトリックデックを使用した方法
1987 David Regal Any Card ー Any Number Star Quality
セットアップ・デックでビドル・グリップによるカウント
1988 Dai Vernon Slap Trick Vernon Chronicles Vol.2
客のカードを特定位置にもってくる。デック上をピシャ!とたたく。
1988 David Harkey Encounter Simplicities
客のカードをデック中央でアウトジョグ。1~10の間の数を言わせる。
1990 Ken Krenzel Open and Shut Case Close Up Impact
カードケースに少しの細工。ケースからデックを取り出して、指定数を配る。
1990 Simon Aronson The Aronson Approach
Bait and Switch シャフルさせたデックとセットデックをスイッチ
Any Card ,Then Any Number 現象を繰り返す。サクラのうまい使い方。
1994 Steve Cohen Any Card at Any Number Genii 12月号
(2007年夏「ザ・マジック72号」にて、角矢幸繁氏による日本語解説)
ポストイットを使って、カード名と数を選ばせる。
1995 William P.Miesel Visionary Card Effects
Thought of Card at a Thought of Number
Method One フェロウシャフルの繰り返しによる方法
Method Two フェロウシャフルとサイドスティールとパスによる方法
1996 Michael Close My Wish Worker No.5
アンダーカットを繰り返し、客がストップと言った位置より配る。
1995(6) Guy Hollingworth Notes on Card Tricks and Other Diversions
(1996年に上記ノートが壽里竜氏翻訳によりマジックランドより発行)
The Card at Any Number 客のカードの表にサインをさせて演じる
(1999年発行のDrawing Room Deceptionsにも再録)
1996 Allan Ackerman Al Cardpone
The Premise(まえおき) マルローのサクラとして演じた経験談
Two Shakes 仕掛けのないカードケースを使用。Krenzelと同様の現象。
The Indicater 二組のデックを使用。カット部分のカードの数を使用。
Lazy Mans' Version 客にカットさせた位置よりカウントを開始
The Impromptu Indicater セットなしの二組のデックによる方法
1997 Ken Krenzel Simulatrum Mirabumdom Ingenuities
二組のデック。他方より選ばれたカードと同じカードの位置より配る。
1997 Martin Juyal Red White and Blue The Six-Hour Memorized Deck
三組のデックを使用。白は数のデック。赤と青デックの秘かなスイッチ。
(第4期作品 1999年以降)
1999 Barrie Richardson Any Card at Any Number Theater of the Mind
Faced-deck Version デックをひっくり返すことによる方法
Thirteen-deck Solution 13組のデックによる方法
Platform Version 客のカードや数を少ない範囲に誘導
1999 J.K.Hartman Patent Portent Genii 12月号
10以上の数を言わせ、配ることの繰り返しによる方法。
2001 Simon Aronson Twice as Hard Try The Impossible
二人のカードを、エルムズリーの数理原理により取り出す。
2002 David Britland著 The Mind & Magic of David Berglas
The Berglas Effectの目撃報告とBerglasのカードマジックの考え方
2002 Kenton Knepper Any Card at Any Number Sorcerer Series 2
デックからカードを抜かせた客に、数も言わせる。知らないうちに協力者。
2003 Roberto Giobbi Telekinesis Card College Vol.5
客のカードと指定数目のカードをスイッチ
2003 Dan Paulus Pure Skill Blind Luck and Pure Skill DVD
Al Bakerの方法の改案
2003 佐藤総 トランプと悪知恵
So-Lution レギュラーデック一組による手順
So-Lution 2 セットデックに費用がかかるが、上記より楽に演技可能。
2004 Juan Tamariz Mnemonica
Any Card at Any Number P.82 5作品
A. The Classic Method with The Pass 客の手の上へデックを置く
B. With A Different Back (Mago Anton) 客のカードの裏、色変化
C. Impossible Conditions (Mago Anton) ビニール袋の中のデック
D. With False Dealing 各種フォールスディールによる方法
E. With The Tamariz Perpendicular Control このコントロールにて
A Card and A Number P.207
Al Bakerの方法の改案。二組のデック共、シャフルした印象。
2004 Bob Cassidy The Artful Mentalism of Bob Cassidy
The M.C.A.M.N.Test (My card at my number)
客にカットさせた部分のカード名と残ったカードの枚数を使用。
Any Card at Any Number
デックに輪ゴムをして、覗かせた部分のカードを使用。
2005 Larry Jennings Slow Motion Card to Number Up In Smoke
全てを表向きに配って、客のカードの消失後、指定数目より出現。
2005 Barrie Richardson Untouched Act Two Theater of the Mind
ひもでデックを空中にぶら下げた状態で、客に1枚ずつ指定数目まで取らせる。
2005 Joshua Jay MAGIC誌12月号 Any Card at Any (Page) Number
指定数目には客のカードがなく、本のそのページ数目から取り出される。
2006 John B. Born Meant To Be
Meant To Be SystemによるReBorn Krenzelのケース使用を改案。
Perfect Effect 3人の客のうち、一人がサクラ。サクラの負担が大。
Stooged サクラに負担をかけない方法
Any Cull at Any Number カルとシックカードを使用
Baker Revisited Al Bakerの方法の改案。楽に行える。
Baker Bested 同上。客にシャフルさせたデックのボトムカードを使用。
Twist of Fate 原案のDecrempsの方法に近い方法。内容は洗練。
Numerical Analysis Mike Powers エルムズリーの数理原理の応用
Any Card at Any Number Luke Jermay / Banachek ステージ用
Almost Any Card at Almost Any Number Paul Cummings
No.1 少ない数を言わせる。サイドスティールの活用
No.2 カルとボトムデールの使用
2006 Bill Nagler Any Card at Any Number 単一商品として
2007 David Forrest Route 01 単一商品として
2007 Martin Eisle クロースアップ・レクチャーノート(マジックランド発行)
客のカードを7枚目へ
2007 Wesley James DVD The Man Who Knows Erdnase
ボトムデールの使用
2007 Daniel Young The C.A.N.N.A.B.I.S. Effect 単一商品として
ブランクデックの指定数目より客の指定カードが出現
2007 Bob Farmer Bammo Dekronomicon 単一商品として
スプレッドした状態で数えさせ、別の客が思ったカード名をここで初披露
2007 Eduardo Kozuch ACAAN Giant Cards 単一商品として
ジャンボケースからジャンボデックを客の手へすべり出して、客に配らせる
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