今年のIBM大会は、ネバダ州リノにおいて6月26日(火)から30日(土)まで開催されました。2年前もリノで開催され、ホテルも同じホテルですが、
リノ・ヒルトン・ホテルから別の名前に変わっていました。今回も、まず、印象に残りましたキーポイントから報告したいと思います。 |
1. ステージ・コンテスト予選は、31組出場されました。その内、ジュニアは7組です。日本からは、5組が出場しています。決勝戦でもあるファイナル6
に選ばれたのは、シニア5名、ジュニア1名です。そして、興味深いことは、東洋系の顔の4名が選出されたことです。日本からは亜空亜シン、中国から2
名、中国系アメリカ人1名です。 |
中国のShen
Juanが1位を獲得しました。中国の特別な民族の舞踏衣装で、独特の踊りと音楽により、まず、観客を魅了していました。マジックはクス玉の出現と、そ
れが美しく分裂して飛び散ることの繰り返しが中心となります。あるいは、カラの手からの多数のバネ花が飛び散ったりもします。これらが舞踏にピッタリ
あっており、完成度の高い状態で繰り返し行われました。 |
日本人では、大阪の亜空亜シン氏だけがファイナル6に選ばれました。バックがメタル色のカードとメタル色の投げテープとボールをメインにしたテクニカル
な演技を、ミスのない安定感のある技術力で演じられました。昨年もチャレンジされていましたが、昨年よりも、数カ所で拍手の取れる要素が加えられてお
り、かなり、パワーアップしていました。 |
安田悠二氏のコスチューム・チェンジは、昨年、一昨年の別のゲストによる方法とは、かなり違った内容で、次々と、みごとなほどにスムーズに演じられまし
た。すばらしい内容のコスチューム・チェンジでしたが、それだけでなく、演技の途中より、印象深いことが起こりました。爆音とともに舞い上がった煙が、
コスチューム・チェンジする瞬間を隠すための、最もふさわしい量が舞い上がり、そのまま上昇して、演者の上空のライトがあたっている部分に、きれいな雲
が出来上がっていました。はるか上空の天井から、演者に向けて、逆三角形状にライトが照らされており、この天井と演者との、ちょうど中間部分で雲が出来
上がっていたのです。それが、すぐに消えるのではなく、数分間、雲の形を保った状態が続いていました。この雲の下で演じられたマジックショーが幻想的
で、今でも、その光景が印象深く焼きついています。 |
2年前の同じステージのショーでは、大きすぎるステージのために、スタンディング・オベーションがほとんどなかったと報告しました。演技に迫力が感じに
くくなっていることや、ステージと客席との一体感が感じにくくなっていることが理由としてあげられます。そして、もう一つ、ほとんどがU字型のテーブル
席となっているために、立ち上がりにくくなっていることも、大きく関係していそうです。立ち上がろうとすると、テーブルがおなかにあたりそうです。こん
な悪条件の中で、誰がスタンディング・オベーションをとるのかも、今回の大会の中での楽しみの一つでした。
ゲストショー初日、ドイツのジャグリングの女性は、高さのあるステージの天井から太い一本のロープをたらして、それを登って、高さを生かした力わざの
ショーを見せてくれました。特にクライマックスでは、天井近くまで登って、垂れ下がっているロープのほとんどを身体に巻き付けて、身体を回転させながら
床近くまで、ロープがほどけながら落下するシーンでは、どよめきが起こりました。多くの人がスタンディング・オベーションするだろうと思っていました
が、少数だけでした。 |
カルフォルニアのDavid
Minkinが1位を獲得されました。1枚ずつハーフダラーが4枚出現し、両手を上向けて開いた状態のままで、左手から右手へ1枚ずつコインが移動しま
す。次はガラス玉に息を吹き込むと、シガレットの大きさの筒状となり、その後、いろいろ操作を加えることにより、両端が少し球状に膨らんだ砂時計が完成
します。 |
2位はカルフォルニアのNathan
Gibsonが獲得しています。指をボキボキと音を鳴らし、両指を組み合わせた後、1本の指が逆方向へ軽々と曲がってしまいます。次にカードを客によく
シャフルさせた後、1枚のカード名を言ってもらいます。この後、4枚のJがフラリッシュ的に取り出され、3枚のJを裏向けて、1枚を表向きのまま広げて
示していますと、ビジュアルに表向きJが客のカードに変化します。そして、残りの裏向きの3枚が、客のカードと同じ数の残り3枚に変わっています。6枚
のカードによるオイル・アンド・ウォーター現象の後、デックをファン状に広げると赤黒に分離しています。フェロウ・シャフルの後、ファンに広げて赤黒混
ざっていることを示し、ファンを閉じて、すぐに広げると、赤黒分離しています。デックを4分割して、トップカードを表向けると、全てがエースとなり、残
りのパケットをそれぞれスプレッドすると、同じマークの2~Kが順番に並んでいます。 |
この賞はドイツの日系人Hayashiが獲得しました。日系人であることを前面に押し出したコミカルな演出で、エンターテイメントに富んだ内容でした。
日本語を英語に変換するCDプレイヤーの設定で、あいさつが始まります。CDプレイヤーの方が先に話し出したり、トラブルが生じた後、いつの間にか演者
が英語を話し、CDプレイヤーが日本語に翻訳してしゃべり出します。CDプレイヤーの電源を切って、演者の英語によりマジックが開始されます。 |
一人目は、2年連続ピープル・チョイスの賞を獲得しているにもかかわらず、昨年、やっと2位となったホンコンの出場者です。毎回、問題点を私のコラムで
紹介した人ですが、今年は、準備段階が改善されていました。テーブルの前方のカバーをなくし、すばやくスッキリした状態で演技が可能となっており、気持
ちよい印象を受けました。しかし、昨年より改善されているにもかかわらず、今年は2位すらとれませんでした。問題は、演技の中身がほとんど改善されてい
ないことです。全体のイメージであるバラリノの印象をなくし、特別なカード・テクニックであるレナート・グリーンの技法の部分を取り去り、テーブルの手
前からのロードとラッピングをもっと減らさない限りは、この
I.B.M.大会における1位はないのではないかと思ってしまいました。また、しゃべらずにBGMだけで終わるよりは、少しでも、客とのやり取りで英語
を話した方が、好印象を与えられるはずです。中国なまりのカタコトの英語は、減点にならないばかりか、個性的として受けとめられるのではないでしょう
か。 |
上記のマカオからの出場者の場合、演者が部屋に入場すると、3人の仲間が、部屋の両サイドと後方に一人ずつ配置し、現象が起こるたびに、いち早く大きく 拍手しています。これは悪いことではありません。問題は、拍手だけでなく「ワォー」「ウォーウォー」と大声を出して声援していることです。最も盛り上 がっている数カ所で、そのように声援するのは気になりませんが、少しでも現象が起こるたびに、毎回、大声を出されるとしらけてしまいます。作戦としてさ れているのでしょうが、程度というものがあります。審査員の印象にも、マイナスの影響を与えている可能性すら考えられました。 |
昨年の大会では、日本人がステージで活躍しましたが、今年も、その傾向が続いています。そこで、今回は、日本人の活躍をメインに、ステージでの報告が中 心となってしまいました。クロースアップ・コンテストの方は、3年前のRick Merrill以降、なかなか注目すべき人物が登場しません。 来年は、I.B.M.とS.A.M.の合同の大規模な大会になります。来年も、日本人が、どのように活躍されるのかが楽しみです。そして、クロースアッ プの新しいスターの登場も期待しているところです。 |