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コラム



第18回 シカゴ・オープナーとレッド・ホット・ママ (2005.2.2up)

はじめに

1月22日にフレンチ・ドロップにおいて、ジェフリー・ラタのレクチャーがおこなわれました。この時に、隣の席の方との会話の中で、興味深いことを伺いました。ダローのDVDでの「シカゴ・オープナー」とマイケル・アマーのDVDでの「レッド・ホット・ママ」が、ほとんど同じ内容だと言われるのです。私も10年程前から、「シカゴ・オープナー」の原案がアル・リーチの「レッド・ホット・ママ」の可能性が大きいことは聞いていました。そういった意味では、二つのDVDでの内容が同じであっても不思議ではありません。しかし、この二つには何か違いがありそうにも思えます。また、これらの作品の歴史的経過についても興味がわいてきました。今回、よい機会ですので、可能な限り調べてみることにしました。

マイケル・アマーのDVD「レッド・ホット・ママ」(ライアン、エバーハート、リーチ)
 1994年"Easy to Master Card Miracles Vol.1"(最初はビデオでの発売)
ダローのDVD  「シカゴ・オープナー」(フランク・エバーハート)
 2001年"Daryl's Card Reverations Vol.1"

二人の演技の相違点と共通点

まずは二つのDVDを見比べてみることから始めました。その結論として、二人の演技は基本的には同じだと言っても良さそうです。二人の演技での違いをしいてあげるとしますと、おまじないのかけ方が違います。そのようなことを言いますと、もっとまじめに報告しなさいとおしかりをうけそうです。しかし、これは重要です。ダローはデックをテーブルに置いて、デックの上空で両手を使っておまじないをかけるジェスチャーをしています。それに対して、マイケル・アマーはデックの上を女性客に人差し指で押させています。後で詳しく報告しますが、女性に押させる操作が「レッド・ホット・ママ」の名前のいわれと関連しているからです。そういった意味では、もう一つの重要な違いがあるといえます。ダローは赤デックを使用しているのに対して、マイケル・アマーは青デックを使用していることです。青デックを使用して、客のカードだけが赤裏カードになることも「レッド・ホット・ママ」の名前との関連があるからです。 それ以外にもいくつかの違いがありますが、そのことに触れます前に、まず、二人の演技の共通部分を紹介しておきたいと思います。両手の間でカードを広げて、客に一枚のカードを取らせます。デックをヒンズーシャフルして、適当な位置へ客のカードをもどさせます。デックにおまじないをかけてデックを広げますと、一枚だけ裏の色が変わっています。そのカードを表向けますと客のカードです。このカードを裏向けてテーブル上に置いておきます。もう一度やってみせようと言って、今度はヒンズーシャフルして、客がストップをかけた位置のカードを覚えてもらいます。前回同様におまじないをかけるとカードの色が変わると言いますが、デックを広げても何も変化が起こっていません。一枚だけカードの色が変わっているはずだと言って探す動作をした後、テーブル上の最初に覚えてもらった裏の色違いのカードに気ずき、それを表向けると、新たに覚えてもらったカードに変わっています

その他の相違点

前記しましたこと以外の違いをあげますと、ダローは第一段で、デックをテーブル上にリボンスプレッドして裏の色違いのカードを示していますが、マイケル・アマーは両手の間で広げているだけです。第二段では、二人ともテーブル上にリボンスプレッドしているのですから、第一段も同様に行ってもよさそうです。また、テーブル上にスプレッドする方が現象が分かりやすいだけでなく、他に色違いカードがないことを、はっきりと示すことも出来ます。しかし、欠点があります。リボンスプレッドして一枚の色違いカードが現れたことを示した後で、デックをそろえて、もう一度、今度は両手の間で広げなおすという繰り返しの手間を行うことの不自然さです。両手の間で広げることは、色違いカードをトップに持ってきて、DLのテクニックを使用する関係で必要となっています。なお、ほとんどの文献では、両手の間で広げているだけでした。ダローの場合でも、解説の部分では、第一段でのテーブル上のリボンスプレッドは行われていませんでした。

ところで、このことをあるマニアの方に話しましたところ、その人は、テーブルにリボンスプレッドして、色違いカードから下側のカードをそろえて取り上げ、左手に持って、DLにより色違いカードの表を見せていると話されました。また、ドイツのOliver Evensによる“Concertosfor Pasteboard”(2002年に英語版が発行)での改案では、リボンスプレッドして、色違いカードより上方にあるパケットをそろえつつ取り上げ、 それを残りのスプレッドのボトムに持ってきてすくい取っていました。これであれば、色違いカードがデックのトップにきており、DLが出来る状態となっています。

さらに、細かい違いはありますが、あげてゆきますときりがありません。例えば、両手の間でカードを広げて、色違いのカードが現れたら、その上方のパケットをダローはテーブルに置いているのに対して、アマーはデックのボトムにまわしています。また、ダローは最初と途中でリフル・シャフルしていますが、アマーはしていない等があげられます。

結局、以上の報告からも分かりますように、むりやり違いを書いてきましたが、演出上での違いとハンドリングでの違いは少しありますが、基本的なところでは、ほとんど違いがないと言ってもよさそうです。

クライマックスでの表現の違い

二人の操作の違いからは少しはずれて、もう一つ追記しておきたいことは、クライマックスでの表現のしかたです。 少しの違いだけですが、ダローの方が盛り上げ方がうまいと思ってしまいました。色違いのカードをさがしても見つからず、テーブル上に置いてあった第一段での色違いカードの存在に気づくという部分です。この気づくと言う見せ方をしている点では二人とも共通しています。第二段では二人とも「ワン・カードの色がチェンジしているはずです」と言いながらスプレッドして、「ワン・カード」という言葉を強調しながら、その言葉を繰り返してさがす操作をしています。その後、アマーは客にカード名を聞いた後で、もう一度「ワン・カード」と言いかけて、テーブル上に元から置いてあった色違いカードに気づき、表返しています。

それに対して、ダローの場合にはテーブル上のカードに気づく前に、客に「青くなった一枚のカード(ワン・カード)をどこかで見かけませんでしたか」と尋ねています。そして、テーブルのカードに気づいて、冗談っぽく指差して、客の反応を見ながら「ノー?」(「これは違う?」といった意味合い)と問いただしています。その後、客のカード名を聞いて、青裏カードを表返していました。ただし、これはダローのキャラクターにマッチしていたのでより良く見えましたが、我々が演じる場合には、アマーのようにあっさり行った方がよいのかもしれません。

二人以外に、マイク・スキナーも同様な見せ方をしていますが、少し違いがあります。1996年の「クラシック・サンプラー」の本の中で「インスタント・リプレイ」というタイトル名で発表されています。客のカード名がダイヤの4としますと、それが赤裏になっているはずだと言ってさがしますが、見つかりません。「おかしいですね。赤裏のダイヤの4がどこかにあるはずですが」と言います。その後、急にさがす操作を中断して、にっこり笑ってテーブル上の赤裏カードを見て、待つとあります。客がカードを表向けるのを待つわけです。客が表向けるか、演者が表向けるかは、マジックを行う状況と、どのような客であるかによるのではないかと思っています。テーブル上のカードを勝手に表向けてしまうおそれのある客では、演者の近くに置いておき演者が表向ける方が無難です。場合によっては、カードケースで部分的にカバーした方がよい状況もあるかもしれません。客に表返させる場合には、客が手を伸ばせばカードに届く位置に置いておく必要があります。

ところで、マイケル・アマーが1994年のビデオで発表するまでの文献では、クライマックスでの表現のしかたが上記とは違っています。客のカード名を聞いて、「そのカードでしたら、この中では見つからないはずです」と言って、テーブル上のカードを表向けています。また、ダン・フレッシュマンは「一回目の時よりもさがしやすくしていたのを忘れていました」と言って、テーブル・カードを表返しています。テーブル上の色違いカードの存在に気づいて、客といっしょに意外な可能性を楽しむといった演出とは、少しニュアンスが違っているようです。時代と共に見せ方が変わってきていることを感じさせられました。

不可解なシカゴ・オープナーについて

それでは「レッド・ホット・ママ」との関係の報告へ進めたいところですが、その前に、「シカゴ・オープナー」のマジック自体に不可解な問題がありますので、そのことを先に報告したいと思います。

「シカゴ・オープナー」は1972年に発行されましたフランク・ガルシアの「ミリオン・ダラー・カード・シークレット」(ジョージ・シンドラー編集)に解説された作品です。不可解なことは、この本での第二段における現象が、これまでに紹介してきました内容と大きく違っていることです。第二段では、客のカードをそのままテーブルに表向きに取り出し、テーブル上に置いてあった第一段での色違いカードの表とこすりあわせ、新たな客のカードに変化させてしまうといった現象になっています。つまり、裏の色が異なりますが、同じカードが2枚となるわけです。それに対して、これまで説明してきました現象の方法は、その翌年の1973年に発行されましたフランク・ガルシアの「スーパー・サトル・カード・ミラクル」に解説された「シカゴ・スタイル」の方になります。この本は前記の本の続編となるものです。

いつの間にか、「シカゴ・スタイル」のマジックが「シカゴ・オープナー」と呼ばれているようです。今回、調べてみて分かりましたことは、ガルシアの本以 降に発行された文献で、「シカゴ・スタイル」の名前が書かれているものが見当たらなかったことです。「シカゴ・スタイル」のクライマックスの改案作品を解説しているのに、「シカゴ・オープナー」の改案と書かれているものばかりでした。私の調査不足なのでしょうか。そして、今回のダローのDVDも「シカゴ・オープナー」と書かれていますが、内容は「シカゴ・スタイル」で解説された結末が使用されていました。本来の「シカゴ・オープナー」のように、第二段でカードをこすり合わせて同じカードになる現象を発展させた作品は、マイケル・アマーの"Bluefield Debute"(1980年発行の「コマンド・パフォーマンス」の中で発表)ぐらいでした。「シカゴ・スタイル」は「シカゴ・オープナー」の単なるバリエーションとしてしかとらえられていないのかもしれません。「シカゴ・オープナー」が同様な現象のマジックを代表する名前として定着していると言ってもよさそうです。

日本での状況

日本においても、割合早い時期より「シカゴ・スタイル」の現象のことを「シカゴ・オープナー」と呼ばれていたような記憶があります。日本では、ガルシアの「ミリオン・ダラー」(1972年発行)の本が「カード奇術の秘密」として、1976年に日本語訳にされ、金沢文庫から出版されました。その後、 1987年の「カード・マジック入門事典」にも「シカゴ・オープナー」が解説されました。ところが、ガルシアの「スーパー・サトル」の本が日本語訳され なかっただけでなく、「シカゴ・スタイル」の作品自体も日本の文献では解説された形跡がないのです。無いことの方が不思議で、私が見過ごしているだけかもしれません。そういった状況にもかかわらず、「シカゴ・オープナー」と言って「シカゴ・スタイル」の方の結末が演じられているのが不思議です。私の考えでは、「シカゴ・オープナー」だけでなく、「シカゴ・スタイル」の演出の方もマニアの間で、次第に知れわたるようになり、そちらの方がインパクトがあって面白いということで、優先的に使用されるようになったのではないでしょうか。ただし、「シカゴ・オープナー」の名前は、そのまま使われていたのだと思われます。

原案者は誰

ところで、ガルシアの2冊の本に関してですが、共通していることがあります。どちらの解説の中にも原案者名が書かれていなかったことです。そのため、私は長い間、どちらもガルシアの作品だとばかり思っていました。私がこれらの本を読んだのは1975年頃のことです。あらためて読み返しますと、「シカゴ・オープナー」の冒頭には、「かなり以前にシカゴにおいて教わった」と書かれていました。私の場合、先に購入して読んだのが「スーパー・サトル」の本であり、「シカゴ・スタイル」の面白さに感心しましたが、後で読んだ「ミリオン・ダラー」の「シカゴ・オープナー」にはガックリときて、冒頭の文章などは全く記憶にも残っていませんでした。 さらに、かなり後になって分かりましたことは、「スーパー・サトル」の本の最後にAppendix(付録)の項目があったことです。小さい文字で書かれ ていますが、2冊の本に解説されたそれぞれの作品の出所等が簡単に書かれていました。「シカゴ・オープナー」の場合は、シカゴのIvanhoeで演じられたフランク・エバーハートのトリックと紹介されていました。また、「シカゴ・スタイル」はフランク・エバーハートのオープナーの他のバージョンであること。そして、Max Katzが単にそれを使っていたという理由だけで、時々、彼の作品とされていることがあると書かれていました。 なお、ジョン・ラッカーバーマーが「ミリオン・ダラー」の本に対するコメントを書かれていることが分かりました。それは、1972年の「ミリオン・ダラー」の本が発行されたすぐ後に書かれていたようです。しかし、これが広く公開されたのは、22年後の"Facsimile 2"(1994年発行)においてでした。その中で「シカゴ・オープナー」は、シカゴのフランク・エバーハートが、数年間このマジックを演じ続けられていること。そして、Max KatzはMUMにおいて「ダブル・サプライズ」のタイトルで発表していますが、同じカードが2枚になる見せ方ではなく、テーブルのカードが2回目に選ばれたカードに変化する現象であったと報告されています。また、アル・リーチの「ホット・カード」も同様な作品であり、マルローのオリジナルの「ホット・カード」はパズリング性の強いバージョンであることも記載されていました。

以上のことから、ラッカーバーマーは、文献上に記載があることから、アル・リーチよりもMax Katzの方を重視していることが分かります。また、マルローの作品は、本来の現象よりも少し複雑化させた内容に変化しているのではないかと考えてしまいました。

このことに関しまして、最近になって、インターネットの「マジック・カフェ」で、ランディー・ウォークマンが興味深い報告をされていました。マルローはこのトリックを「リーチ・トリック」と言っていたそうです。そして、マルローの「ホット・カード」は1963年のリンキングリング誌9月号に掲載されているとのことです。また、Max Katzの「ダブル・サプライズ」に関しては、誰の名前もクレジットされていないだけでなく、プレゼンテーションもなかったと報告されています。ただ、何年のMUMに記載されていたのかは書かれていませんでした。つまり、Max Katzは、簡単にマジックを紹介していますが、彼の作品ではないと考えられそうです。そして、シカゴのマルロー、ジム・ライアン、エバーハート等においては、アル・リーチのトリックとして認知されていたようです。しかし、アル・リーチ自身は「レッド・ホット・ママ」を、どこにも文章で発表されていない可能性が感じとれました。なお、私にとって心残りなことは、マルローとKatzの作品が読めていないことです。

マルローの「ホット・カード」について

その後、海外の文献に造詣が深い田中貞光氏にお会いする機会があり、上記のことをお話ししましたところ、後日、マルローの資料を提供していただきました。ありがとうございました。それによりますと、「ホット・カード」の現象は、デック中央へ入れたカードが2回トップへ戻ります。3回目は中央で表向きにひっくり返り、それを裏向けても、もう一回表向きになります。「デックの中を通り抜けたので、熱を持ち、レッド・ホットになりました」と言って、表向きカードを裏向けると、青裏デックの中で、そのカードだけが赤裏に変化しているというものです。Jinx誌のアンネマンのマジックにアル・リーチのマジックを加えて考えられた作品と書かれていました。結局、裏の色が赤くなるという点が共通しているだけで、全く別のマジックといえそうです。そして、「レッド・ホット・ママ」の方が、これよりも楽に行えるだけでなく、効果も大きい作品と言ってもよさそうです。

「レッド・ホット・ママ」について

それでは、いよいよ、アル・リーチの「レッド・ホット・ママ」について報告したいと思います。たぶん、このタイトルで最初に発表されたのは、1980年にPhil Willmarthにより書かれた「ジム・ライアン・クロースアップ Vol.2」と思われます。(Vol.4まで発行されています) この内容が、そのまま、MUM「ジム・ライアン特集号」の1981年11月号に再録されました。アル・リーチの長年の友人でありますジム・ライアンは、アル・リーチより教わったこのトリックを、カード・マジックのオープニングとして使っていたそうです。シンプルで、演出により笑いがおこり、クロースアップ・ショーをよりリラックスして演じるためには、最適のオープニング・トリックであると書かれています。

ジム・ライアンは1899年シカゴ生まれのクロースアップ・マジシャンで、バー・マジックだけでなく、トレード・ショーや多方面で活躍されています。フランク・エバーハートとの関係は、彼の店が忙しい時や、彼が休む時に応援に入ったりもしていた間柄です。

フランク・エバーハートは、シカゴのIvanhoeにおいて1953年〜74年までマジック・バーで活躍されており、かなり人気があったようです。彼に関しては、2001年9月号のMAGIC誌に、4ページにわたる記事が掲載されています。45分間のマジックが2セット用意されており、カードを中心としたセットのオープニングとして「レッド・ホット・ママ」が演じられていたそうです。そして、このトリックをジム・ライアンから教わったと書かれていました。アル・リーチは雑誌のニュース記者であり、1958年まではシカゴに住んでいましたが、仕事の関係で、その後、ニューヨークやその他へ移動しています。8冊の小冊子と、いくつかのマジック誌に作品が発表されています。

結局、「レッド・ホット・ママ」が伝えられた順をまとめますと、アル・リーチ、ジム・ライアン、フランク・エバーハート、フランク・ガルシアとなります。ガルシアが「シカゴ・オープナー」の名前をつけたものと考えられますが、2枚をこすりあわせて、同じカードが2枚になる結末は、エバーハートがそのように変えたのでしょうか。その作品の改案とされています「シカゴ・スタイル」の方が、原案のアル・リーチやジム・ライアンの方法に近いものに戻っている点が、面白いところです。

「レッド・ホット・ママ」を辞書で調べますと、「魅力的な女性」や「セクシーな女性」と書かれています。青デックを使用して、魅力的な女性にデックの上をタップしてもらうと、何かが起こるといった演出で行われています。この部分のセリフを原文では「レッド・ホット・ママが、それを(タップ)しますと、何が起こるか分かりますか」と書かれています。そして、1枚だけ赤くなったカードを出現させています。その後の解説には、上記の「ホット・カード」のように、赤くなった理由は説明されていません。つまり、これは、レッド・ホット・ママのレッドの言葉と、カードがレッドになることの言葉を、関連させていると考えてよいのでしょうか。

「シカゴ・スタイル」と大きく違っている部分は、第二段の途中からです。右手パケットのボトム・カードを覚えてもらい、左手のデックの上へ戻した後、トップ・カードを表向けますが、客のカードではありません。客のカード名を聞いた後、「そのカードであれば、見つけることが出来ないのは不思議ではありません。それは、レッド・ホット・ママ・カードだからです」と言って、テーブル上の赤裏カードを表向けています。つまり、レッド・ホット・ママが選んだカードだから、赤くなっているテーブルのカードだといったクライマックスのようです。これはアル・リーチの原案どうりなのか、ジム・ライアンの考えが加わっているのかが分かりません。さらに、アフターソートとして、第二段においても第一段同様に、女性客にデックの上をタップさせる方法が書き加えられています。その場合は、デックを広げて赤くなったカードをさがしますが、見つからず、最後の部分は、前記と同様に行うことが書かれていました。この書き加えられた方法は、アル・リーチの考えか、ジム・ライアンなのか、Phil Willmarthなのかも分かりませんでした。

ところで、これを日本で演じる場合には、レッド・ホット・ママと言っても意味が通じません。カードが1枚だけ赤くなる意味付けをしなくても、十分に面白い作品です。しかし、赤くなることに関連づけたセリフを使うとすれば、次のように言ってもよいのではないかと思います。「女性の方におまじないをかけて頂いたので、選ばれたカードだけが、赤く色が変わってしまいました」。そして、ラストにおいて、客のカード名を聞いた後、テーブルのカードを表向ける時は、「これが、そのカードだということはないですよね。(カードを表向けて)ちょっと、おまじないのパワーが強すぎたみたいですね」と言って終わります。

おわりに

今回の調査過程で、数作品のバリエーションを読みましたが、そのほとんどが複雑な現象になっているか、むずかしいテクニックを使用する作品になっていました。または、セルフワーキングの原理を取り入れた作品もありましたが、たいして良い改案とは思えませんでした。結局、一般客に対しては、今回のダローとマイケル・アマーのDVDでの演技が、もっともおすすめと言ってもよいのではないかと思いました。


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