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コラム



第68回 パケットトリックの歴史と意外性(2015.4.3up)




はじめに

1970年代中頃から80年代中頃までがパケットトリックの黄金期と言われています。この時期に50万個売り上げた商品があることを知って驚いています。ジム・テンプルの「カラーモンテ」ですが、ほとんどの日本のマニアには知られていません。パケットトリックが次々と商品化されたのはこの頃が最初と思っていますと、1905年から1909年にかけても次々と商品として販売されていた時期があったのも意外でした。このことにより、パケットトリックの歴史は古いと感心していますと、実は1612年には既にパケットトリックが発表されていたことが分かり驚きました。これが英語の文献では初めてのパケットトリックのようです。しかも、これが現在でも非常に一般受けする人気の高い商品として販売されています。

私もパケットトリックの黄金期に大きな影響を受けて虜となりました。多数のパケットトリックを購入しましたが、現在でもレパートリーにしているのはマジックランド社製の「ニンジンとウサギ」ぐらいとなっています。これはタマリッツのラビットとアップルのイラスト作品を元にしていますが、さらに、その原案作品を知って驚いてしまいました。

パケットトリックについては思っている以上に知らないことが多く、調べるほどに意外なことが分かってきます。現在までに販売されたり解説されたパケットトリックの数があまりにも多く、今回は意外な歴史と私の興味あるパケットトリックについてだけ報告させて頂きます。なお、もっと多くのパケットトリックや歴史の詳細については、今年度に発行予定のToy Box 14号がパケットトリック特集号となりますので、その中で報告させて頂きます。

パケットトリックの歴史の意外点

1.パケットトリックとは。結構多い境界ラインの作品
2.ニンジンとウサギの原案の意外性
3.意外に多い日本国内で商品化されたパケットトリック
4.パケットトリック・ベスト10 の意外性
5.50万個売り上げた「カラーモンテ」について
6.驚異の作品数のフィル・ゴールドステイン
7.意外と歴史が古いパケットトリック

パケットトリックとは。結構多い境界ラインの作品

1988年発行のT. A. Watersのマジック百科事典でパケットトリックを調べますと、少数枚によるカードトリックで、通常は12枚以下のことが多いとされています。そして、マジック店で販売されている特別に印刷されたカードや準備されたカードを必要とすることが多いとも書き加えられています。ネットでのMagicpediaの記載も同様な内容ですが、さらに、1970年代中頃から80年代中頃にかけてが黄金期であったことが加えられていました。ところで、少し意外であった記載が2007年度のBart Whaleyのマジック百科事典です。まず、パケットとは2枚から51枚のことと書かれていたのには驚きました。しかし、6枚以上で使われることが少ないとも記載されていました。そして、パケットトリックとはフルデックより少ない枚数を使ったトリックで、2から6枚の使用時はスモール・パケットトリックと呼ばれているとも書かれています。少し考え方が変化してきているのでしょうか。さらに、今回の調査により、境界ラインの作品が結構多いことが分かりました。

1番目の問題が使用枚数で、20枚近く使う場合もパケットトリックとするのかどうかです。このような問題もあって、フルデックより少ない場合をパケットトリックとする考え方が出てきたのでしょうか。しかし、まだまだ一般的になっているようには思えません。例えば "Follow The Leader"(リーダーに続け)の原案では20枚が使われており、「6カード・リピート」も20枚近く使われることが多いようです。実際的にはこれらがギリギリのラインだと思っています。2番目の問題がデックの使用です。デックからカードを取り出して演じるだけであれば問題ありません。しかし、その時に1枚加えたりチェンジする必要がある場合には、パケットトリックとは言えないと思っています。「オープン・トラベラー」では4枚のエースしか使っていないように見せて行う移動現象ですが、最初にデックから秘かに1枚を加え、最後の4枚目の移動ではデックの上でテントバニッシュを使っています。デックを使わなければパケットトリックとなりますが、わざわざそのようにする必要性もありません。3番目がトリックの現象による問題です。パケットトリックにカードワープが含まれているのを知って違和感がありましたが、考えてみれば認めざるを得ないと思いました。しかし、リンキングカードのポール・ハリスの「カードボード・コネクション」となると判断が難しくなります。違った分野のトリックとした方がよさそうであるからです。また、使用枚数が少ない「カード・アクロス」はパケットトリックですが、1枚ずつ移動する現象の「カード・アップ・ザ・スリーブ」はどうなのかと考えさせられます。

ニンジンとウサギの原案の意外性

私が初めて買った商品のパケットトリックは、二川滋夫氏の「チュクチュクトレイン」だったと思います。楽しいイラストのマジックであっただけでなく、最後の意外な結末に驚いてしまいました。その後、たくさんのパケットトリックを購入しましたが、現在でも演じ続けているのはマジックランド社製のジャンボカードサイズの「ニンジンとウサギ」ぐらいになりました。一般客の前ではクロースアップマジックとしてよりもパーラーマジックとして演じる機会の方が多くなっていたからです。この「ニンジンとウサギ」の元になるマジックについてマジックランドで伺ったことがありました。タマリッツのウサギとリンゴのイラストを使ったパケットトリックとのことです。私もリンゴよりもニンジンであるべきだと思いました。このマジックのすばらしさは、現象の楽しさと意外性があるクライマックスです。さらに、4枚だけで演じることが出来て、終わった後は全てのカードを調べさせることが出来る点も気に入っています。

その後、1991年発行のアレックス・エルムズリーの本を読んで驚きました。その中の "The Four-Card Trick" の操作方法が「ニンジンとウサギ」とほとんど同じであったからです。エルムズリーカウントを繰り返し使用する作品です。4枚の青裏バックを示した後で表を見せると4枚ともブランクです。このブランクの1枚がジョーカーに変わります。このジョーカーだけを表向きのままにして、他の裏向けたカードの中へ入れます。もう一度この4枚を調べると、裏向きのカードの中でジョーカーがブランクに変わり、最終的に再度ジョーカーが出現します。このジョーカーの裏を見ますと、このカードだけ赤バックに変化しています。「ニンジンとウサギ」のマジックを演じられたことのあるマニアの方は、それぞれの現象と一致していることが分かると思います。青バックの部分をニンジンの絵にして、ブランクを帽子、そして、ジョーカーを帽子から顔を出しているウサギの絵に対応しています。「ニンジンとウサギ」の結末の意外性のある絵が、赤バックになる結末に対応しているといえます。

1954年に考案されていたエルムズリーカウントが、ゴーストカウントの名前で一部のマニアの間で知られるようになります。1959年にはこのカウントを使用したエルムズリーの "The Four-Card Trick" が英国のダベンポート社と米国のマジックインク社から販売されます。しかし、それほど注目されませんでした。エルムズリーカウントが一躍有名になるのは、1960年のバーノンの本の「ツイスティング・ジ・エーセス」が発表されたことによります。そこで初めてエルムズリーカウントの名前が登場することになります。その後、エルムズリーカウントを使ったパケットトリックが次々と発表されます。ところで、タマリッツのすばらしさは、注目されていなかったエルムズリーのパケットトリックを、ウサギと帽子とリンゴのイラストに変えて楽しい作品にされたことです。これが英国のケン・ブルック社から発売されます。「ニンジンとウサギ」のすばらしさは、現象やクライマックスの面白さだけでなく、カウントしながら縦にずらすと、4枚のニンジンや4枚の帽子のイラストとして示すことが出来る点にもあります。インデックスがある普通のカードでは出来ないことです。

ちょっと一息

私の場合、1990年代前半に小学生の前で演じる機会が増えました。もちろん、この「ニンジンとウサギ」も演じていました。ところで、何故かその頃だけ「ニンジンが好きな動物でマジシャンの帽子から出てくる動物は何でしょうか」と尋ねると、へそ曲がりな「ウマ」といった回答がかえってきました。一人がウマと言うと、数名が一緒になって「ウマ」「ウマ」と「ウマ」コールとなったことがあります。他の場所で演じた場合でも、「ウマ」コールとはなりませんでしたが、2カ所で「ウマ」と答えた子供がいました。その頃だけの現象で、その後は全くありません。このことをきっかけに、マニアに演じる場合には、帽子から大きなウマが出てくるイラストにすれば面白いだろうと考えました。最初は5枚の両面ブランクカードにイラストを描いて作ったり、4枚だけで可能なように作りかえたりしました。しかし、最終的には本来のマジックランド社製「ニンジンとウサギ」のイラストに、そのままウマを描き加えても可能なように作りかえることが出来ました。この作品は1995年の厚川賞パーティーのゲスト出演時に演じさせて頂きました。何がきっかけになるか分かりません。

意外に多い日本国内で商品化されたパケットトリック

今回の調査で、パケットトリックの日本での考案者の実力が、海外と比べても負けていないことが分かりました。パケットトリックの黄金期の新しい特徴点は、イラストを使った作品が多数発表されるようになったことです。楽しいストーリーやクライマックスがあって、私もこの点でパケットトリックの虜になりました。特にエマーソン&ウエスト社から多数のパケットトリックが発売され、その中にイラストを使った作品が多く含まれていました。ラリー・ウエストの作品が多いのですが、他の作者の作品も多く製作されています。今回、手持ちのパケットトリックを調べてみて意外であったのは、イラストを使った作品の海外のものがほとんどなかったことです。購入していたのはニック・トロストの "Horsin' Around" とマーティン・ルイスの "Rabbit Test" 、そして、コロンビニの "Fly Cards" ぐらいでした。いずれもエマーソン&ウエスト社以外の製品です。

日本でも海外のイラストを使用した製品は多数販売されており、私も店頭ではいろいろ見せてもらった記憶があるのですが、結局は購入していなかったようです。イラスト作品のほとんどが二川滋夫氏やトン小野坂氏の作品が中心でした。「ジャングルの2匹のへび」は海外作品と思っていましたが、これも二川滋夫氏の作品でした。二川氏は楽しいユニークな作品を次々と製作されましたが、変わった特徴のある作品が、ロープトリックやコイントリックやスプーン曲げ等をパケットトリック化されたことです。トン・小野坂氏の場合には、イラストのある作品を多数考案されただけでなく、パーラーマジック用にジャンボカード化された作品も製作販売されたことが印象的です。また、1970年代のパケットトリックはブリッジサイズの商品が中心でしたが、いち早くポーカーサイズのカードでも製作されて、プロやマニアの要望に応えられていました。お二人以外でイラストを使った印象的な作品は、ロイ・ウォルトンの「オイル&クイーン」を改案された小崎民夫氏の「あした天気にな~れ」です。夢のあるすてきな作品です。イラストの作品ではありませんがマジックランド社から発売されていた鈴木徹氏の「キャベツストーリー」と「チーズミステリー」はユニークな発想の商品です。カードそのものがキャベツやチーズとして使われている点に面白さがあり、意外な結末になっていました。

荒井晋一氏も多数のパケットトリックを考案され、イラスト作品ではありませんが強烈な現象の作品を多数発表されています。特に「アフェクション1」に解説された「インビジブルマーク」や、「マスカレイド・パート2、No4」に解説された "Hole in The Square" の現象には圧倒されました。荒井氏の作品の一部はトリックス社でも販売されていました。トリックス社といえば赤沼敏夫氏が多数のパケットトリックを考案されており、黄金期の日本のクリエーターとして外せない存在です。以上の方々以外にも、日本では多数の考案者がおられますが、1980年代までの私の印象的な人物を中心に報告しました。

パケットトリック・ベスト10 の意外性

2005年に英国のポール・ハラス(ポール・ハリスではありません)により "Small But Deadly" が米国のH&R社から発行されました。パケットトリック愛好家のハンドブックとして書かれた170ページほどの本です。その最後にベスト10が掲載されていました。著者が発行の雑誌 "Alchemy" の読者や彼のマジック仲間やウェブのフォーラムから、ベスト・パケットトリックについて尋ねた結果とのことです。集計に至る詳細は分かりません。結果として1位が「ツイスティング・ジ・エーセス」、2位が「ワイルドカード」、3位は「カラーモンテ」と "B' Wave" 、5位が "Twisted Sister" と "Gypsy Curse" 、7位が「カード・ワープ」と「カスケード」と「Dr デイリーのラスト・トリック」、10位が " NFW " と "Tipsy Cards" となっていました。聞いたことがない作品が入っていたり、意外に思ったのがイラストを使った作品がほとんどなかったことです。"Tipsy Cards" の最後にイラストのカードが登場していただけです。また、「6カード・リピート」や「オイル&ウォーター」や「オイル&クイーン」や「サイドウォーク・シャフル」が入っていなかったことも意外でした。これらは11位の後で続いて登場するそうです。

各作品について補足することにします。1位のバーノンの「ツイスティング・ジ・エーセス」は1960年の発表で、2位のピーター・ケーンの「ワイルドカード」は1962年の発表です。この2作品が1970年代の黄金期への発展に大きな影響を与えたと思っています。「ツイスティング・ジ・エーセス」によりエルムズリーカウントが広まり、この現象の違った方法が多数発表されました。私もその功績とバーノンの方法のすばらしさで1位に異論がありません。2位の「ワイルドカード」はヒューガード・マジックマンスリー誌にピーター・ケーンが "Watch the Ace" のタイトルで発表したのが最初です。そのすぐ後で、フランク・ガルシアが少し改良して「ワイルドカード」の名前で商品化されました。ちょっと問題を感じますが、現在ではピーター・ケーン原案で、ガルシアが「ワイルドカード」の名前で広めたとなっています。やはり、原案者の了承を得て、原案者名も記載して発表すべきであったと言えます。この「ワイルドカード」が大ヒットして、その後も多数の改案が発表され商品化もされています。また、これによりハーマンカウントが広まったといえます。今回のベスト10 では、ワイルドカード関連の改案作品を「ワイルドカード」として集計したそうです。ところで、5位の「ジプシー・カース」もワイルドカードの一種といえますが、これは単独でも人気が高く、別扱いにしています。これを加えるとワイルドカードが1位になっていたと補足されていました。

3位の「カラーモンテ」については後の項目で報告します。他方の3位の "B Wave" は1990年代に入ってからフィル・ゴールドステインにより商品化された作品です。シンプルで不思議さが強く、「カラーモンテ」同様に大ヒット商品になったようです。客が指定したマークだけが4枚の中で表向いている現象です。5位の2作品の一方がジョン・バノンの "Twisted Sister" で、上記の "B' Wave" の改案です。シンプルな "B' Wave" 派と、その改案の "Twisted Sister" 派に分かれているのが面白い点です。しかし、ベスト10 としては、原案者の功績をたたえる意味もあって "B' Wave" に票を入れた人が多かったのかもしれません。他方の5位の "Gypsy Curse" はピーター・ケーンの作品で、タロットカード風な古風なカードでストーリーが付けられているのが特徴です。最近ではゆみさんが "Gypsy Curse" を演じられており、すてきなストーリーの演技で観客を魅了されていました。ところで、 "Gypsy Curse" はワイルドカードと同様で、最後には全てのカードが同じカードに変わってしまうのですが、フレッド・カップスの演技をYou Tubeで見て驚いてしまいました。テーブル上の同じカードになった全てのカードを、客に渡して調べることが可能になっていたからです。さらに、カップスの方法ではハーマンカウントを使用せず、かわりに縦長に持ってオーバーハンドシャフルをして入れ替えていることに感心させられました。

7位の3作品の中で「カード・ワープ」と「カスケード」は英国のロイ・ウォルトンの作品です。いずれも米国では1974年頃の発売で安価な2ドルです。「カード・ワープ」は人気が高い現象ですのでベスト10 入りは分かります。意外なのが「カスケード」です。日本ではなじみが少ないと思います。しかし、この解説を読んで驚きました。1975年頃に教わっていたパケットトリックであったからです。しかも、その操作方法の頭の良さに感心して、当時はよく使っていたことを思い出しました。4枚のキングを示した後、1枚を裏向けてトップへ置くとボトムも裏向き、4枚とも裏向きになります。反対に1枚を表向けると4枚とも表向きになります。1枚をポケットへ入れてもパケットへ戻り、意外なクライマックスで終わり、4枚とも客に調べさせることが出来ます。ところで、この2作品ともロイ・ウォルトンの全作品が解説されているという "The Complete Walton" 1巻と2巻ともに含まれていませんでした。7位の3作品目の「Dr デイリーのラストトリック」は4枚だけでインパクトの高い現象が行えるので人気の高さが分かります。ただし、原案の通りに演じている人は少ないと思います。私も別の方法で行っていますが、これと「ツイスティング・ジ・エーセス」は一般人向きのクロースアップの場合の私のレパートリーとなっています。

10位の2作品の一つの " NFW " は、今回の調査をするまで知らなかったパケットトリックです。1990年代終わり頃に、Gary Freed により発表された商品で、現象の分かりやすさとクライマックスのインパクトがある変化現象でベスト10 に入ったものと思います。4枚のジョーカーが1枚ずつ裏向き、4枚がスマートに4枚のエースとなります。最後の "Tipsy Cards" はほろ酔いカードともいえます。4枚の青裏の普通のカードが1枚ずつエースにかわり、さらに、それらのバックが、ビール、ウイスキー、バー、そして、女性のイラストになります。これは1956年に英国で発売された商品ですが、TV でデビッド・ニクソンが演じたり、その後、ポール・ダニエルが演じたことでも話題となりました。米国でもかなり以前からルイス・タネン社で "Gamble Amble" のタイトルで販売されており、ラストでは4種のフロリダ旅行のイラストとなって終わっています。ルイス・タネンの1983年度カタログでは、パケットトリックは60ほどありましたが、1960年度カタログでパケットトリックらしいものといえば、"Gamble Amble" ぐらいでした。バックルカウントだけが使われています。10 位の2作品は、日本ではベスト10 に入らない作品だと思います。日本のベスト10 は、かなり違ったものになると考えられます。

50万個売り上げた「カラーモンテ」について

驚異の売上数となったのがエマーソン&ウエスト社の「カラーモンテ)(ジム・テンプル作)です。前記のポール・ハラスの本に50万個の売上げと記載されていたのですが、間違っているのではないかと疑いたくなるほどです。3枚のカードだけで演じる3カードモンテですが、3枚ともバックはレギュラーのバックです。表には中央に大きな赤ダイヤのマークのカードが2枚と、青ダイヤのカードの1枚が示されます。青ダイヤをボトムに置いた状態で、1ドルを賭けて青ダイヤの位置を当てることになるのですが、下上中の3枚ともに赤ダイヤになっています。3ドル損をしたことになります。もう一度青ダイヤが示され、今度は赤ダイヤを当てる賭けとなりますが、3カ所ともに青ダイヤで合計6ドルの損です。さらに負けて7ドルとなり、赤と青ダイヤの1枚ずつが表向けられた状態で、残りの1枚のカードの色を当てる賭けとなります。今回は7ドルを賭けた大勝負ですが、意外なクライマックスになります。

私もマジックショップで「カラーモンテ」の演技を見たことを思い出しました。現象は面白いのですが、購入はしませんでした。これが大ヒットになった理由はよく分かりませんが、3枚だけの使用で、一つだけのダイヤの大きなマークがシンプルでよかったのかもしれません。カードによるギャンブルトリックでは成人男性向きとなりますが、シンプルで派手さがある大きなダイヤは、女性や子供にも受け入れられるマジックとなりそうです。ギャンブルトリックといっても、客は第3者としての存在で、賭けに負けたりトリックに騙された思いを持たなくてもよい点が優れています。もちろん、意外性のある結末も魅力の一つです。

驚異の作品数のフィル・ゴールドステイン

彼の最初のパケットトリックは、1973年の "Full Circle" といわれています。翌年には "Rapid Transit" が発表され、その後、ちょっと変わった商品として"Pointer" があります。商品化されていないパケットトリックも多数あり、1990年発行の "Focus" では60作品も解説されていました。2005年にはトン・小野坂氏により日本語訳され、東京堂出版より「パケット・トリック」の名前で発行されています。この本の中で私に大きな影響をあたえた作品が "Bodkin" で日本語版では「奇数偶数」となっていました。私の好きなテーマの現象ですが、ダブルリフトの繰り返しが多く、なんとか減らせないかと考えていると、全く使用せずに行える方法が考案でき、私のマニア相手のレパートリーとなりました。この本の発行後もパケットトリックの考案は続けられており、商品化もされています。その中でも1番の代表作が "B' Wave" でしょう。そして、その後発売された「選ばれた色」の面白さと不思議さが強烈で、パケットトリックを買うことがなくなっていた私が購入し、頭の良さに感心させられました。

意外と歴史が古いパケットトリック

テンヨー社から三つのカードトリックをセットにした「ニューカードマジック」が販売されています。この3作品ともにパケットトリックとして歴史のある名作ばかりであることが分かりました。特に4枚のキングが4枚のエースになり、そして、4枚のブランクになるトリックが、英語で解説された最初のパケットトリックであったことに驚いています。1612年発行の英国のサミュエル・リッドによる "The Art of Lugling or Legerdemaine" (奇術と手品の技術)に解説されていました。これを日本では「三面相カード」や「ショッキングカード」等の名前で販売されていたことがあります。この記載より古いパケットトリックの解説は、イタリア語で書かれた1593年のHoratio Galasso著による "Giochi De Carte" の4枚のカードが別のカードに変わるトリックだけです。その後、19世紀のモダンマジックの本にも、同じ原理を形を変えて発表されていますが、やはり、私が気に入っているのはサミュエル・リッドの2回変化する方法です。

1905年から9年にかけてパケットトリックが次々と販売されていたのも意外でした。1905年にはヘンリー・ハーディンが「プリンスカードトリック」を、その後セオドア・デランドが1907年に「ファントムカード」、1908年に "Pick it Out" ,1909年に「ツーカードモンテ」を発表していました。この中のデランドの「ファントムカード」は、5枚のカードにハンカチをかけて2枚を取り去ると、残りの3枚が消失するトリックです。これがテンヨー社のセットに含まれている二つ目のトリックです。これがその後、ハンカチのかわりに帽子が使われたり、ジョンボカードにして封筒に入れられたりと変化して商品化されています。そして、テンヨー社のセットの残りの1作品が「アラビアンカード」の名前で販売されていたものです。3枚のカードを広げて表を示して、広げたまま裏向けて中央のカードを取り出して表を見ると、別のカードに変化している現象です。このタネの原理は、かなり古いと言われていますが何が最初か分かりませんでした。1929年のブラックストーン著「シークレット・オブ・マジック」には解説されているのですが、これが最初とは思えません。

結局、テンヨー社のセットの3作品は、初心者でも楽に演じることが出来て、効果が大きい作品です。これらは1930年以前のパケットトリックとなりますが、その頃までのパケットトリックはトリックカードを使用して、技術を使わずに大きな効果を得るのが目的のようでした。ところが、1930年代以降、レギュラーカードで技術を使ったり、トリックカードを使っても技術を必要とするものが次々と発表されるようになります。そして、1950年代から60年代にかけて、基本的なパケットのフォールスカウントが出そろうことになり、1970年代からの黄金期へと続くことになります。最後の部分は駆け足となりましたが、1970年頃までのパケットトリックに関した発表や文献の一覧を報告して終わることにします。

パケットトリック作品文献一覧

1593 Horatio Galasso Giochi De Carte 4枚が他の4枚に
1612 Samuel Rid The Art of Jugling or Legerdemaine 4Kー4Aー4白
1876 Hoffmann Modern magic 4枚の8ー4枚の2ー4枚の黒ー4枚の赤
1905 Henry Hardin The Prince's Card Trick 商品
1907 De-Land Phantom Cards ハンカチから2枚を取ると残り3枚が消失
1908 De-Land Pick it Out 商品
1909 De-Land Two Card Monte 商品
1909 George Pugh The Piano Trick The Art of Magic
1919 Charles T. Jordan The Phantom Aces 30 Card Mysteries
1920代後半 U. F. Grant You Can't Do As I Do 商品 ダブルフェイス使用
1932 Dai Vernon Card Puzzle The Twenty Dollar Manuscript
1933 Dai Vernon Follow the Leader Five Close-up Problems
1936 Tommy Tucker Six Card Repeat Expert Manipulative Magic
1940 Walter Gibson Like Seeks Like The Jinx 91
1942 Edward Marlo Hotel Mystery Let's See The Deck 4Kと4Q
1946 George Sands Super Optical Illusion(バックルカウント使用)H.M.M.
1947 Elmer Biddle Transcendent Genii 4月号 ビドルムーブ使用
1948 Braue The Homing Card Show Stoppers with Cards
1950代初 Edward Victor 11 Card Trick Willane's Methods for Miracles
1953 Tenkai Card Flight Six Tricks By Tenkai
1953 Edward Marlo Oil and Water The Cardician
1955 Norman Houghton Color Blind Ibidem 6月
1956 Hamman The Mystic Nine The Card Magic of Bro. John Hamman
1957 Dr Jacob Daley The Last Trick The Dai Vernon Book of Magic
1959 Alex Elmsley The Fore Card Trick 商品 コンベンションで実演
1959 Lin Searles Cannibal card 商品(Owen Bros)
1960 Dai Vernon Twisting the Aces More Inner Secrets of Card Magic
1962 Peter Kane Watch the Ace(Wild Card)Hugard 's Magic Monthly
1962 Frank Garcia Wild Card 商品
1963 厚川昌男 整頓好き 奇術研究 31
1963 Verne Chesbro Ultimate Color Separation No. 1
1965 Edward Marlo The Olram Subtlety The New Tops 11月号
1969 Roy Walton Oil and Queens Ibidem
1969 Bro. John Hamman Flushtration 商品
1970 Larry Jennings Look-An Illusion Genii 5月号
1970 Verne Chesbro and Larry West Tricks You Can Count On
1970 Arthuro Ascanio Ascanio Spread FISMコンベンションで披露


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