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コラム



第61回 2013年 I.B.M. フェニックス大会報告(2013.8.2up)




はじめに

11年間連続参加したI.B.M.大会を昨年は欠席し、2年ぶりの参加となります。2年前のダラスと同様で、今年も強烈な暑さのアリゾナ州フェニックスで開催されました。空港から市内電車(ライトレイル)までをつなぐモノレールの高所からの眺めが印象的で、インディアンが馬に乗って現れそうなアメリカ特有の景色で迎えられました。それでは、今回もコンテストの結果報告から始めることにします。

ステージコンテスト結果

23組の予選を勝ち抜いて決勝戦に出場したファイナル6の6組は、それだけで受賞したことになります。決勝戦ではゴールドメダルやピープルチョイス賞、そして、1位や2位の獲得を目差して演じることになります。各受賞者は次の通りです。

ゴールドメダル 受賞者なし
 1位 Ming Ya Lio(中国)
 2位 Chris Randall(米国)
 コメディー賞 キャラメルマシーン(日本)


ジュニア部門
 1位 Eli Portala(米国)
 2位 Smart Magic(台湾)彼はファイナル6に入っていません
ピープルチョイス賞 Ming Ya Lio(中国)


上記以外でのファイナル6受賞者は、プチレディー(日本)、James Wang(台湾)です。

クロースアップコンテスト結果

今年は14組だけの出場であったためかファイナル6の決勝戦がありません。ジュニアも数名が出場していますが、ここではアダルト部門のみの報告とします。

 ゴールドカップ 受賞者なし
 1位 Alberto Lorenzo
 2位 Rune Carlsen
 ピープルチョイス賞 Alberto Lorenzo

ステージコンテスト決勝戦に出場した6組

決勝戦へと勝ち進んだ6組は、日本が2組、アメリカが2組、そして、中国と台湾から一人ずつの出場です。

1位獲得のMing Ya Lioは、予選の段階からスタンディングオベーションで入賞は間違いないと思いました。カードとボールのマニピュレーションが中心です。真田豊実氏のサークルファンを両手同時に楽々とこなし、マーカーテンドー氏の指間のカードプロダクションも見事としか言いようがありません。ボールの演技も2003年F.I.S.M.グランプリのNorbert Ferreのフラリッシュが加わりますが、これも楽々と演じます。それに続く卵のプロダクションでは、指間の四つの卵を一つずつ片手で割って、中身をグラスの中へ落とし、本物であることを示していました。最後のカードシューティングもすばらしいの一言です。数年前の中国の大会で優勝し、その後、UGM大会にゲスト出演された時も、ほぼ全員のスタンディングオベーションで、しばらく拍手が鳴り止まなかった記憶がよみがえります。今回の決勝戦ではスタンディングオベーションとならなかったのが残念です。アメリカではオリジナル性が重視されることと、ゴールドメダル獲得のためには、決勝戦での多くのスタンディングオベーションを必要としているようです。

2位を獲得したChris Randallは、登場しただけで歓声が上がり、人気のあることが分かります。ラスベガスで活躍している若手プロのようです。今回はクロースアップコンテストにも出場しています。キザっぽく嫌みに見える点もありますが、それを上回る良さがあります。音楽にピッタリと合わせている点です。そして、シンプルで分かりやすい演技に徹しています。リングの演技では2本だけを使い、最初に会場の客に十分に調べさせています。その2本がBGMの中の特別な効果音に合わせて繋がったり離れたりします。もちろん、仕掛けのないリングでは不可能で、その点はイスに座ってうまく演じています。カードマニピュレーションでは、特に難しいことも特別なこともしていませんが、現象のメリハリがハッキリしています。そして、音楽と気持ちよく合わせている点で、うまさとかっこ良さを感じさせてもらえます。

コメディー賞を獲得された日本のキャラメルマシーンは、男性二人によるコメディーマジックで会場を大いに沸かせていました。まじめなマジックととぼけた相棒のマジックの差が絶妙で、マニアや一般客も関係なく笑えます。そして、もちろん不思議さもあります。2日間にわたる予選の初日に出場されていますが、その中では一番ウケていたように思います。

日本のプチレディーは女性二人によるコンビネーションを生かしたマジックです。お二人のチャーミングさが加わり、上記のキャラメルマシーンとは違った意味で初日のコンテスト会場を大いに沸かせていました。AKB48の衣装で、傘や紙幣プロダクションとゾンビボールの演技ですが、二人の動きがうまく融合し、マジック全体を引き立てていました。 台湾のJames Wangはストーリー性のあるマジックを演じました。ステージ中央に置かれた絵の女性に恋をした男性の心の葛藤を表現しているようです。顔半分の仮面や手紙とバラの花などを使ってうまく表現していますが、全体的に暗いイメージで地味な印象を受けました。

ジュニア部門1位のEli Purtalaは、アダルトと思ったのですがジュニア部門でした。ハトの演技が中心で、キャンドルやボールとカードも使用されています。ハトは昔ながらの内容ですが、キャンドルの面白い扱いをされており、その点ではうまさを感じました。クライマックスでは広げた布から女性も出現させています。しかし、つけ足しのようにしか見えず、意味がないように思ってしまいました。おまけに、決勝戦では道具の配置が悪かったためか、隠れていた女性がどのように移動しているのかが見えてしまい、せっかくのマジックの感動を低下させていました。

ステージコンテスト全体について

今年の特徴は、いつも上位を獲得している韓国からの出場者がなかったことです。変わりに日本、中国、台湾が中心に活躍しました。日本からの出場者は4組です。決勝戦に進んだ上記の2組以外では、オマタ・ミチヨさんとツルオカ・キョウコさんが奮闘されましたが、惜しくも決勝には進めませんでした。今回もファイナル6決定ラインの出場者が多かったと思います。ジュニアのレベルも高く、2位の台湾の出場者もファイナル6に加わってもよい実力を持っていました。

クロースアップコンテスト受賞者と印象的な出場者

1位のAlberto Lorenzoはダイスを中心とした演技です。特別のテーブルを持参し、その上で演じています。60才を超えていると思われますが、バラリノを感じさせる滑らかな動きで、次々と各種の大きさのダイスを取り出したり不思議な現象を起こしていました。そして、出現させたダイスを積み重ねると、二つの大きな塔が出来上がります。最後に二つの酒入りグラスを取り出すと、大きな歓声とスタンディングオベーションが起こりました。

2位のRune Carlsenは、シルクでカバーされた三つのワイングラスに入れられた予言のマジックです。三つともカードを選ばせての予言ですが、選ばせ方も予言の方法も違っています。第1のグラスには1枚のカードだけが入っています。それは、客に10までの数を言わせ、シャフルされたデックからその枚数目に配られたカードと同じカードです。さらに、その予言カードのバックには、言われた数も書かれていました。第2のグラスからは予言の用紙が取り出されます。それには、客に言わせたカードの数とマークが書かれていることが示されます。第3のグラスには数枚のコインが入っており、その合計金額が、客により選び出された数枚のカードの数の合計数と一致しています。それだけでなく、この当たっていた三つの予言ともに、共通した意外な結末となって終わります。ワイングラスへ戻されていたそれぞれの予言が全て消えた状態となります。予言のカードはブランクフェースとなり、バックの数字も消えています。予言の紙も予言が消えてブランクとなり、全てのコインも円形の単なる金属となります。コンテスト向きのクライマックスといえるでしょう。

ロシアのVadlmは受賞されませんでしたが、興味深いマジックを演じました。この人も50才は超えているように見えます。デックから1枚選ばせようとすると、デックがカードケースに入った状態に戻ります。よくあるマジックですが、この繰り返しが中途半端ではなく、ケースがテーブル上に山積み状態となります。さらに、ジャンボのカードケースを使って、ロシアのマトリョーシカ人形のように次々と小さなケースが取り出されます。最後のミニケースに入っていた紙を広げて折り畳むと、ジャンボケースとなり、ジャンボのデックが出てきます。デックから1枚選ばせた後、ブランクカードの絵のカードシルクを示し、変化させようとしますが、シルクを落としてしまいます。それを拾うためにテーブルの手前でしゃがんで立ち上がると、服の上下が黒から白に衣装チェンジされています。拾ったカードシルクは変化していますが客のカードではありません。客席に背中を向けると、大きく客のカードが描かれています。

気になる演技をしていたのが中国のAlan Woです。準備段階でテーブルの手前を黒布で数分間カバーさせてから開始していました。かなり長い時間かけていたような印象があります。演技を見ますと、隠す必要があったのか疑問に感じる内容でした。ストーリー性を持たせてしゃべらずにBGMだけの演技ですが、最初の数分間はほとんど何もせず、何の現象も起こりません。後半からは面白い現象が次々と起こしています。特に気になったのが準備段階での布によるカバーです。以前のI.B.M.大会の中国出場者も同様でしたが、中国ではクロースアップの準備を布でカバーするのが一般的なのでしょうか。このことは調べてみる必要性を感じました。

なお、今回もジュニアが数名出場していましたが、目立った人がいなかったのが残念です。

今回の大会全体について

大会参加者数は正確には分かりませんが、私の印象では700名は超えていなかったように思います。また、ディーラーの数は30店以内だったと思います。その中で日本の店は、コインを扱っている中島氏のクライスマジックと、ダイスケ氏がアメリカで経営されているセオマジックの2店だけでした。いずれも、他店にはない品揃えで人気がありました。毎日、夜にはステージマジックショーがあるのですが、木曜日の夜には面白い企画のショーが催されました。「マジック・マイク・ショー」のタイトルで、司会も出演者も全員がマイクの名前がついた一流のマジシャンばかりです。オープニングで「マジック・マイク・ショー」の場内アナウンスされると、ステージ中央のスタンドマイクにピンスポットが当てられていたのがシャレていました。このショーの中で、最も多くのスタンディングオベーションをうけていたのが台湾のマイク・チャオです。彼は2年前のダラスの大会でファイナル6に残ったものの、2位すらも獲得できませんでした。その時の1位と2位が韓国で、2位が昨年のFISMのマニピュレーション部門で1位とステージ部門のグランプリを獲得されたユー・ホー・ジンです。2年前のファイナル6の3名がカードマニピュレーションであったことが不運としか言いようがありません。

今年の大会で大きく改善されていたのが、コンテスト出場者の名前がハッキリと分かるようになっていたことです。これまでの長い年数、コンテスト出場者の名前がどこにも記載されておらず不便でした。大会の受付の前に掲示板があるのですから、そこに出場者名をコピーして貼ってくれるだけでよいのに、されていませんでした。もちろん、大会パンフレットに名前の記載はありません。コンテスト会場の入口に出場者名を貼り出すのが最も効率的で良いと思うのですが、それすらされていませんでした。ステージの決勝戦では、6名の名前が書かれた用紙を渡され、ピープルチョイスを決めるために1名をチェックする方式になっていましたので、これが唯一記載された名前でした。クロースアップコンテスト決勝戦はひどい状態です。白い紙だけ渡され、全ての演技が終わった後で、係員が確認のために6名の名前を読み上げているだけです。変わった名前の出場者の場合には、スペルを読み上げていますが、分かりにくい状態でした。今回からステージコンテスト予選では、会場入口に出場者の写真と名前がA4サイズで1名ずつ貼り出されるようになりました。決勝戦のピープルチョイスは、会場出口にその写真が貼られた箱が6個並べられ、各観客のチケットを入れるようになりました。クロースアップコンテストは予選がありませんでしたので、分割された4会場の通路に、写真と名前が書かれた14個の箱が並べられていました。観客へ配られた特別な紙を、その箱に入れてピープルチョイスを決定するようです。大幅に改善されたおかげで、私もこの大会報告をスムーズに書くことが出来ます。ところで、新しい方式に変わって、一つだけ気になる点がありました。ステージと違ってクロースアップの場合、投票する箱がある通路に、演技が終わった14名の出場者のほぼ全員が待機されていたことです。出場者がいる前では投票しにくいものです。

おわりに

来年はI.B.M.とS.A.M.との合同大会で、参加人員も規模も大きなものになりそうです。10年前までのI.B.M.大会は1000名以上の参加者が普通でした。それが年々少なくなる傾向にあります。景気の問題やマジック大会が増えたことが影響しているのかもしれません。特にFISM開催の年は、I.B.M.大会参加者がかなり少なくなるようです。今年は大規模のMAGIC Liveの大会が8月にラスベガスで予定されており、少し影響を受けているようです。それでも、日本からの参加者は25名を超えていたように思います。来年の合同大会は、日本からの参加者数もコンテスト出場者数もかなり多くなりそうです。一人でも日本人が入賞されることを期待していますが、そのためには、多くの観客のスタンディングオベーションが必要となります。完成度の高い技術と演技とエンターテイメント性。そして、不思議さか新しさで度肝を抜く発想が必要と思います。さらに、日本的趣が加われば言うことないのですが、私が出来ないことを期待を込めて書かさせて頂きました。頑張れ日本!


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