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コラム



第56回 輪ゴムマジックの意外な歴史と発展 パート1(パート1はクレイジーマンズ・ハンドカフを中心に)(2012.9.14up)




はじめに

6月のRRMCの例会で、輪ゴムマジックのことが話題になりました。2本の輪ゴムを使った貫通現象(クレイジーマンズ・ハンドカフのタイトルで知られています)の特別な扱い方や、ダン・ハーランの両手の間に橋渡しされた2本の輪ゴム(4本の水平な線)のマジックの特別な方法についてです。ところで、1年前の6月のRRMCでは、台湾のハンソンによる新しい現象の輪ゴムマジックの「タッチ」で盛り上がっていました。演者の手に巻き付けられた輪ゴムに、客の手をタッチさせるだけで、輪ゴムが客の手へ移行して巻き付きます。さらに、今年の春に発行されたYuji 村上氏の "Heavy Rotation" の作品集では、輪ゴムマジックが2作品解説されていました。

輪ゴムマジックといえば、30年程前までは、アマチュア用の即席マジックやお茶の間マジックといった感覚でした。プロが営業で使用するものとは思ってもみなかった時代です。それが、クロースアップショーやテーブルホッピングでプロが使用するマジックに変わってきました。そのように脚光をあび出したのは1980年代後半になってからと思います。その頃から90年代前半にかけて、ダン・ハーランを中心にして、多数の作品や改案が発表されています。その後は、それを引き継ぐかのように Joe Rindfleisch も多数の作品を発表して、輪ゴムマジックのエキスパートの存在となりました。これ以上に脚光をあびる新しい作品の考案は難しいと思っていましたが、2011年の「タッチ」の発表に驚いたわけです。

今回はよい機会ですので、代表的な輪ゴムマジックが、いつ頃、誰により考案され、それらがどのように変化発展したのかを調査しました。意外な発見が多数あり、有意義な調査となりました。その点を中心に報告しますが、長くなりすぎましたので2回に分けることにしました。今回は、クレイジーマンズ・ハンドカフを中心にした報告となりました。ところで、その前に、今年はIBM大会の参加を断念しましたので、その理由から報告させて頂きます。

本来であれば、今の時期のコラムは、IBM大会の報告をしていました。IBM大会には、2001年から2011年まで連続して参加してきました。しかし、今年は悪い条件が重なりすぎましたので、参加を断念することにしました。今年は7月3日から7日まで、アメリカ東海岸のノーフォークで開催されました。FISMが開催される年のため、IBM大会の参加が少なくなることが見込まれるだけでなく、実際に少なかったようです。開催都市のノーフォークは日本から遠く、片道だけでも、私は2回の乗り継ぎで1日がかりです。いつものように6月末の開催であれば航空運賃がかなり安くなります。ところが、7月の出発になっただけで運賃が大幅にアップします。運賃以外に必要な変動制のオイル料金も今年は高くなっています。それでも、いつもの大規模の古書店が出店しているのであれば参加してもよいと思っていました。しかし、今年は出店していませんでした。来年はアリゾナ州フェニックスでの開催です。これには参加する予定をしています。

クレイジーマンズ・ハンドカフについて

何といっても1980年代の輪ゴムマジックの火付け役はクレイジーマンズ・ハンドカフです。マイケル・アマーがこのタイトルで演じ、1989年にはこのタイトルの解説書を発行しています。また、1986年にアメリカで放映された「デビッド・カパーフィールド・チャイナスペシャル」のTVで、カパーフィールドがこの輪ゴムの貫通現象を演じられ話題となりました。日本では1992年のNHKで放映されています。

もちろんこのマジックはマイケル・アマーの作品でもなければ、カパーフィールドのものでもありません。原案者は、イギリスのArthur Setteringtonです。1970年に発行されたイギリスのピーター・ワーロック編集によるマジック誌「ニューペンタグラム」Vol.7, No.3に "Get Away" として解説されています。問題は、そのことがほとんどの本にクレジットされていないことです。多くの本では、1972発行の「ターベルコース第7巻」を紹介しているだけで、それが最初に解説された文献のように思われています。問題はそれだけではありません。ターベルコースには、そのマジックの作者の記載がなかったことです。

1976年に発行されたSAMの機関誌 "MUM" 4月号に、Ed Mishellが "Penetrating Bands" として解説されていますが、ターベルコース第7巻をクレジットしているだけで作者名の記載がありませんでした。その後、"MUM" に連載したMishellの輪ゴムマジックシリーズが、1979年に "ELASTRIX" のタイトルのパンフレットとなり、再録されています。このパンフレットが1990年に再版されます。この1990年度版の興味深いことは、このマジックをメインにした表紙に変更されていたことです。表紙には、カパーフィールドがTVで演じた "Penetrating Bands" が解説されていることを目立つように書かれています。そして、そのマジックに使用されたイラストの中から三つが大きく印刷されていました。

混乱させるクレジットの記載をしていたのが、1990年発行のクリス・ケナー著による輪ゴム作品集 "Band Across The Globe" です。その中に解説された"The Great Rubber Band Escape" では、オリジナルはボブ・ジャーディンで、ターベルコース第7巻に載っているとだけ記載されていました。彼が影響を受けたマジシャンと著書名を書いていたのでしょうが、影響力の大きいマジシャンですので、キッチリ書いてほしかったと思います。

今回の調査時に最初に調べた本が、1991年発行の "The Magic of Michael Ammar" です。彼の演出による「クレイジーマンズ・ハンドカフ」が解説されているだけでなく、歴史が報告されていました。イギリスのArthur Setteringtonの方法が、ザロー(ザローシャフルで有名なザローです)により改良されて、ニューヨークで演じられていました。そのマジックを気に入ったルイス・タネンが、発行予定のターベルコース第7巻の編集者であるハリー・ロレインに、このマジックを含めることを推奨しました。残念ながら、ロレインはザローの方法を直接みたことがなかったために、ターベルコースの解説はよい内容とは言えませんでした。ニューヨークのマジックサークルのメンバーでもあるデニス・マークスが、ザローの方法をうまく演じていました。彼がロサンゼルスへ移ることになり、西海岸に影響を与えます。そして、マジック・キャッスルではボブ・ジャーディンのレパートリーとなります。1980年代にマイケル・アマーが、このマジックにクレイジーマンズ・ハンドカフの演出を加えて演じるようになります。このタイトルは、ダローの助言によるものです。1989年には、このタイトルでイラストを中心にしたパンフレットが発行され、その後、このタイトルが、このマジックを代表する名称となります。

クレイジーマンズ・ハンドカフのタイトルが付く以前の方法

上記のように、マイケル・アマーの本により、かなり詳しい初期の経過が分かりました。しかし、イギリスで最初に解説された文献名の記載がありません。また、原案とターベルコースでの解説の違いや、ザローの方法との違いも分かりません。幸運にも、これらの疑問の解答となる文献が見つかりました。1988年発行のカール・ファルブス編集のマジック誌 "The Chronicles" のNo.31と32です。原案が解説されたイギリスのマジック誌名を明らかにしただけでなく、その編集者のピーター・ワーロックから許可を得て、原案の解説を再録されていました。さらに、ザローの方法も解説されていました。ザローの方法では、2本が分離する方法を31号に、その反対のリンクする方法が32号に解説されていました。

原案のSetteringtonの方法は、右中指で右人差し指の輪ゴムを押さえることと、右指の輪ゴムを垂直にして、下方へ移動させた時に抜くための秘密の操作を行っています。その点を中心にしたシンプルな解説がされていただけです。ザローの改良は、右指の輪ゴムを上下動させたりストップさせて、リンクしていることを確認させつつ、その後の上下動の中で原案と同じ秘密の操作により分離させています。また、マジックとして行うためのリンクさせる現象は、左中指で右指の輪ゴムを引っ掛ける操作から開始して行っています。いずれも、右手で秘密の操作をカバーするような記載になっていました。

ターベルコース第7巻のハリー・ロレインの解説は、分かりにくいの一言です。それでも、読者なりの解釈を加えてうまく演じられていた方も多かったようです。ロレインの解説の問題は、当時のニューヨークで話題となっていたザローの演技を見て書いたのではなかったことです。他の解説に比べて異なっている点が数カ所あります。まず第1の点として、準備段階の輪ゴムをオープンにリンクさせる部分では、シンプルな方法をとっていなかったことです。原案やザロー、そして、マイケル・アマーやクリス・ケナーの方法では、右人差し指に垂れ下がっている輪ゴムを、左指にセットされた輪ゴムの内側へたらして、下側から右親指で引っ掛けているだけです。ところが、ロレインは右指の輪ゴムを左中指で引っ掛けてから行う、テクニカルに見える方法となっています。なぜ、そのような方法にしてしまったのでしょうか。ザローの方法も、分離させるだけであればシンプルな方法で解説されています。しかし、多くの場合、リンクさせる現象の後に続けて分離現象を行っていると書かれています。ザローが左中指を使って、マジックとして行うリンクさせる演技を、ロレインはマジックとしては使わずに、左中指の使用を準備段階として使ったのかもしれません。

2番目の違いは、右親指を上側にしている点です。多くの解説では右人差し指が上になっています。これは先ほどの準備段階と関連しています。左中指で輪ゴムを引っ掛けた後、右親指を輪ゴムからはずして、上から引っ掛け直しているからです。3番目の違いは、リンクしていることを証明する操作としての手の動きが、上下動ではなく、前後動にしている点です。そして、4番目の違う点として、秘密の操作を右手では行いにくくなったためか、左手で行っていたことです。つまり、右手の輪ゴムを大きく前方へ動かして引っ張った時に左指で抜いているわけです。違っている要素が多いので分かりにくい点がありますが、これはこれで一つの面白い方法と思いました。しかし、問題のある解説ととらえている人も多いようです。

1976年のMUM誌にED Mishellが解説した方法は、ターベルコースを元にしています。初めて見た時に、いくつかあるイラストは同じものを使っていると思っていました。しかし、2冊を比べますと似ている部分もありますが、大きく違っている点がいくつもありました。そして、解説もかなり違っていることが分かりました。最初の準備段階の左中指で右手の輪ゴムを引っ掛けている点は同じです。この印象的なイラストがほぼ同じであったために、ターベルコースの内容をそのまま再録しているものと思い込んでいました。しかし、解説を読みますと、左中指を使うセットの方法のすぐ後で、シンプルにセットする方法を書き加えられていました。右親指に輪ゴムをぶら下げて、下側から右人差し指を差し込む方法です。その結果、ターベルコースと同様で、右親指が上側になります。しかし、その状態で右手の輪ゴムを上方へ動かしつつ右側方へ引っ張って、下側の人差し指と中指で秘密の操作を行っていました。ターベルコースより分かりやすく面白い改案と思いました。この解説の中での興味深い点は、ターベルコースにはなかった重要なイラストが1枚加わっていたことです。両手を左右に少しだけ引き離して、輪ゴムがX状となってリンクしていることを表現しているイラストです。しかし、抜くための秘密の操作は、この動きを利用しつつも原案に近い方法のままとなっています。

結局、これらの初期の方法は、二つの輪ゴムが十字状になって接触していることが多く、手が邪魔をして現象が見えにくい欠点があります。しかし、それにより、種がばれにくくなっていることも見逃せません。それに比べて、1989年のマイケル・アマーや、1990年のクリス・ケナーの方法は、オープンでダイナミックスです。2本の輪ゴムがリンク状態で、両手を左右に大きく引き離しているからです。これにより、はずれないことを強調しつつ、秘密の操作が楽に行えるようになっています。二人の方法はほとんど同じですが、大きく違っている点は、右中指の使い方です。マイケル・アマーは、初期の方法のように、右中指で輪ゴムを押さえているだけです。クリス・ケナーは右中指を輪ゴムの中へ入れて保持しています。ところで、気になることは、このように大きく引き離しつつ秘密の操作を行うように改良したのは誰であるのかです。デニス・マークスかボブ・ジャーディンか、それとも他の人物でしょうか。

日本での状況

日本語でこのマジックが最初に解説されたのは、ターベルコース第7巻の日本語版となります。1981年にテンヨー社より発行されています。マイケル・アマーは1980年11月と1983年10月に日本でレクチャーされていますが、私が受けた2回共このマジックをレクチャーされていません。ただし、レクチャー以外で演じられていたかもしれません。海外のマジシャンが日本でこのマジックを演じるのを初めて見たのは、1984年3月のマジックランド主催「箱根クロースアップ祭」においてです。マイケル・ウエバーが少人数に分割されたレクチャーの中で演じられました。ターベルコースの解説の印象とは異なり、あざやかに演じられていました。その時の方法がどうであったのかは覚えていません。また、同年のNHKの放映の中で、カール・アンドリュースが手順化して演じられていました。これは、アメリカのノーフォークで開催されたIBM大会の放映です。1985年発行の「ニューマジック」誌 Vol.24 No.3には、カール・アンドリュースの方法を見られた武田光一氏が、ターベルコースの方法と武田氏が改良された方法を掲載されていました。改良点は、リンクした状態で両手を少し引き離す操作を加えている点と、クリス・ケナーの解説のように右中指を輪ゴムの中へ入れている点です。

1987年には、大阪アマチュアマジシャンズクラブ(OAMC)の30周年記念誌「私と奇術、奇術と私」が発行されます。この中で、奈良の山下裕司氏が、輪ゴムマジックを手順化して解説されました。1本の輪ゴムが2本に分裂して、2本がリンクし(クレイジーマンズ・ハンドカフの逆の現象)、そして、分離する現象です。最後の分離する部分を、岸本道明氏より見せてもらった方法を採用されていました。1991年発行の「マジックハウス」創刊号でのアンザキ・コウイチ氏は、2本がリンクした状態で、両手を少し左右に引き離したり戻す操作を繰り返して、はずれないことを示しています。分離させる時には工夫を加えて、プチンとはずれるようにしていました。

1991年11月末に来日されたクリス・ケナーは、このマジックを含めた輪ゴムマジックのレクチャーと、それが解説された日本語訳の小冊子を発行されています。そして、1992年1月2日のTVで、マイケル・アマーがこのマジックを演じられていました。

岸本道明氏の方法の意外な事実

岸本氏の方法は、一般的に知られています方法と大きな違いがあります。クレイジーマンズ・ハンドカフの現象を実現させるための基本的な要素は、親指と人差し指で引っ張っている輪ゴムに、中指を秘かに加えていることです。そして、2本の輪ゴムをこすっている間に、いつの間にか分離している現象です。ところが、岸本氏の方法は、中指を加えずに、親指と人差し指だけで行っています。そして、輪ゴムの中央部分で、お互いに引っ張ってもはずれない状態から、一気に分離させています。ビジュアルな現象と言えるでしょう。

岸本氏の方法は、1987年の山下裕司氏による解説が最初です。しかし、岸本氏自身が解説されるのは、1997年発行の厚川昌男賞受賞者記念誌 "Winners" においてです。その後、2001年発行のヒロ・サカイ著「バー・マジック」の中で、岸本道明氏の「ラバーバンド・ペネトレーション」として解説され、広く知られるようになります。そして、2011年の台湾のハンソンのDVD「タッチ」において、「クレイジーマンズ・マジシャンズカフ」のタイトルで解説されています。DVDの最後には、ヒロ・サカイ氏と岸本道明氏の名前がクレジットされています。

ところで、岸本氏にこのマジックのことでお話を伺いますと、意外な事実が分かりました。山下氏やサカイ氏やハンソン氏の方法は、厳密に言えば、岸本氏の方法と同じではないそうです。"Winners" の解説を読めば分かりますが、親指と人差し指しか使わないだけでなく、この2本がくっつかない方法で行っています。つまり、岸本氏の方法を見た山下氏が、岸本氏の方法として解説されたものは、山下氏のアレンジとなるわけです。こちらの方が、岸本氏の方法として広まってしまったようです。しかし、基本的には岸本氏の方法の特徴がそのまま残っていますので、岸本氏の方法と言っても間違いではないと思います。

山下裕司氏の輪ゴムマジックとダン・ハーランのビデオ

ダン・ハーランは、それまでに発表された輪ゴムマジックを、1993年には「バンド・シャーク」、1995年にはラバーバンド・マジックの3巻セットを発行されています。その後、それぞれがDVD化して発行されるだけでなく、2012年には、ラバーバンド・マジックの第1巻が日本語字幕入りで発行されています。この第1巻の最初の数作品が、「クレイジーマンズ・ハンドカフ」に関連した作品を取り上げています。2番目に解説されています "Mark Fitzgerald's Back Two-Gather" を見て驚きました。山下氏が1987年に解説されていた2本の輪ゴムをリンクさせるための方法と全く同じであったからです。ザローのリンクさせる方法に比べますと、一気に現象が起こせるために、不思議でインパクトがありました。ビデオでは、その作者は Mark Fitzgerald となっていましたが、発表されている文献があるのかを調べました。その結果、1989年のダン・ハーラン編集のマジック誌 "The Minotaur" 5月号、Vol.1, No.2 に解説されていることが分かりました。山下氏の発表の方が先ですが、シンプルで実践で通用する方法を研究すると、同じ結論に達するということでしょうか。

この第1巻のビデオで、もう一つの驚きが、15番目に解説された "1 ? 2 Split" です。1本の輪ゴムを左親指と人差し指にかけて、その中央部分を右指で引っ掛けて引っ張り、そして、離す操作を繰り返します。数回目の離した時に、輪ゴムが分裂して、2本の指には1本ずつ引っ掛かっている状態になります。このマジックの現象が、1987年の山下氏の輪ゴムの分裂と同じです。ただし、方法が少し異なります。ビデオでは、親指から輪ゴムがはずれて、かけ直す操作を行ってから分裂させています。スマートな方法とは言えません。山下氏は、もっと巧妙な方法を採用されており、感心させられました。この作品に関しては、山下氏の演技を見たのか、現象の話を聞くことがあって、解決方法を考えられたのではないかと思ってしまいました。

クレイジーマンズ・ハンドカフの関連作品

この現象に関わる少し変わった作品を紹介することにします。1991年のマイケル・アマーの本に解説されている方法が、1本の輪ゴムを客の両指の人差し指に引っ掛けて、左右に引っ張った状態にしてもらう方法です。演者の右親指と人差し指にはめた輪ゴムが、客の輪ゴムを貫通します。これは、ボブ・ジャーディンがバーで使用するかき混ぜ棒を客に持たせて、輪ゴムを貫通させていたことが元になっていると報告していました。

2001年のポール・ウィルソンのレクチャーノートに発表された方法は、客の親指と人差し指の先を合わせてリング状にさせ、その中へ通した輪ゴムを脱出させる現象です。客の指を使っているので、思っている以上に効果の大きい方法です。演者の指を使って、同様の現象を発表されていたのが野島伸幸氏です。2009年の彼のDVD "Impression 4thstage" の中の「EZ マインズ・ハンドカフ」で、全く違った方法で演じられ、発想が面白いと思いました。野島氏は、この方法に続けて、客の指を使うウィルソンの方法も演じられています。

今年発行されたYuji 村上著 "Heavy Rotation" には、二つの輪ゴムマジックが解説されています。その2作品ともに、クレイジーマンズ・ハンドカフに関連した現象になっています。"One Two Through" では、1本ずつ段階的にはずれる現象です。本来のクレイジーマンズ・ハンドカフでは、2本が同時に貫通することになりますので、大きな違いがあります。これは、2008年発行の「掌 Palm 23号」に解説されていたものです。この現象は、村上氏が独自に考案されていたものですが、今回の調査で、デビッド・ネイバーが既に発表されていたことが分かりました。1992年のマジック誌 "Minotaur" 9月号の "Twice as Crazy" です。そして、ダン・ハーランの輪ゴムマジックのビデオ3巻セットにおいては、その1巻目にネイバーの作品として含められていました。両者の違いは、村上氏の方法は、はずす段階で右中指を離して関わらないようにしており、右親指と人差し指だけが輪ゴムにかかっているだけのフェアーな状態で行っています。ネイバーの方法では、最後まで右中指は輪ゴムを押さえたままになっていました。ネイバーのすごい点は、ビデオの中で発表した次の作品 "Crazy Link" でのマニアックな発想です。さらに発展させた現象にしていたからです。まず、左指の輪ゴムの1本がはずれ、右指の輪ゴムが左指の輪ゴムの中に入った状態になります。その後、右指の輪ゴムの1本がはずれ、完全なリンク状態(リンキングリングのように)となり、さらに、最後の1本がはずれて完全な脱出状態となります。

村上氏のもう一つの作品 "Rubbers Agein" では、クレイジーマンズ・ハンドカフを演じるように十字の状態にした後、1本が消失してしまう現象です。これは、1990年の「掌 Palm 5号」に解説されていたものです。1本で十字状にして2本があるように見せて、1本が消失するだけの方法は、数年前に発表されています。1987年4月の奇術界報548号に高木重朗氏が「2本が1本になるゴムバンド」を解説されています。これはフランスに古くからある遊びをマジックにしたものと紹介されていました。また、1987年11月の Apocalypse Vol.10, No.11 には、George D. Franzen が同様のマジックを解説しています。しかし、2本の輪ゴムを示した状態から開始して、1本が見事に消失するのは村上氏ならではの方法です。テーブルがなくても行える点がすばらしいと言えます。1991年発行の「マジックハウス」創刊号では、アンザキ・コウイチ氏がこの現象を含めて手順化した方法を発表されています。村上氏とは別の方法で1本を処理されていました。

輪ゴムマジック・パート2の予告

パート1はこれで終わりますが、1ヶ月以内にパート2を掲載する予定です。パート2では、ダン・ハーランの代表的な二つの輪ゴムマジックを取り上げます。また、古い輪ゴムマジックである指から指へ移動する現象と、ちぎった輪ゴムの復元も取り上げます。これらの古い現象が、最近では改良されて発展していることに驚きました。それらを含めて、私にとっての意外な発見を中心に報告させて頂きます。


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