• HOME
  • カードマジック
  • コインマジック
  • 日用品・雑貨
  • マジック基本用具
  • DVD
  • 書籍
  • ムービー

コラム



第51回 最近のフラリッシュの状況 パート2(2011.10.11up)




はじめに

2マドンナ、ジャクソン・ファイブ、パンドラから フラリッシュを連想したとしたら、ちょっとしたマニアです。Fat Fingarz、Max V、が何であるか分かっているとすれば、かなりのマニアです。

2006年に、このコラムで「最近のフラリッシュの状況」を報告しました。それから5年が経過し、どのような変化があったのかをまとめてみたくなりました。5年間で、さらに、パソコンの機能が進化し、インターネットでの動画の環境も進展しました。このことが、フラリッシュの発展に貢献しているようです。De'Vo を中心とするグループとDan and Dave のグループが、大きな勢力として活躍しています。今回、私が調査して分かったことを中心に報告させて頂きます。

2000年から2006年までのフラリッシュの概要

前回のフラリッシュのコラムの復習となりますが、2000年頃、フラリッシュがちょっとしたブームになります。1999年発行の Brian Tudor の "Show Off" のDVDや、Dan and Dave、De'Voの登場が大きく関わっています。ところで、2000年代に入っても、フラリッシュ使用の賛否の問題が、かなり根強く残っていました。否定的な見解が、まだまだ優勢な状況でした。2011年の Genii 誌1月号の De'Vo の記事には、2001年当時、まわりのマジシャンから、フラリッシュのブームは1年も続かないと言われたそうです。そして、De'Vo も半年で消え去ると言われたことを報告しています。 ところが、ブームが低下するどころか、その後、いくつものフラリッシュの DVD が発表されるようになります。また、インターネット上でも、フラリッシュの動画を多数見かけるようになります。そして、マジック・コンテストにおいても、フラリッシュを取り入れた演技者が増えるようになりました。その中でも、2003年の FISM で、ジャグリング要素の多い Norbert Ferre が、ステージ部門のグランプリを獲得したことは大きな出来事です。

ところで、クロースアップでよく取り入れられているのが、Sybil を発展させたマルティプル・カットです。デックを両手の間で4分割か5分割して、それぞれのパケットの位置をリズミカルに入れ替えるカットです。Brian Tudor がブームに拍車をかけましたが、その後、Dan and Dave が次々と新しい発想を取り入れて発表しました。彼らはフラリッシュだけでなく、ビジュアルなマジックも発表しています。これに対して、マルティプル・カットよりも、他の新しいフラリッシュを開発し、マジック要素を排除して発展させたのが De'Vo や Jerry Cestkowski です。De'Voはバランスを取り入れたフラリッシュに、独特のセンスを持っています。

De'Vo や Dan and Dave は、2006年以降の活動として、才能のある人材の発掘とプロジュース活動を、精力的に行っている点が特徴的です。

マルティプル・カットの歴史の再調査

2006年のコラムで、Sybil を元にした数名のマルティプル・カットについて報告しました。Sybil は1992年の "Out of Control" の本に発表されたクリス・ケナーの方法です。画期的なマルティプル・カットとして脚光をあびました。ところで、このコラムの報告以降、マルティプル・カットの歴史をもう少し詳しく調べ直したくなりました。その結果、このようなカットは、クリス・ケナーの Sybil が最初ではないことが分かりました。

Sybil で多くの部分を占めているのは、4分割してそれぞれが入れ替わるカット操作です。そのような4分割カットは、1985年の「アポカリプス」誌11月号に解説された Gianni Mattiolo の "Illogical Shuffle" が最初のようです。シャフルとなっていますが、操作内容はカットです。そのカットでは、トップとボトムのパケットの位置は元の状態に戻りますが、中央の二つのパケットは入れ替わっています。Jay Sankey が全てのパケットを元に戻す方法を考え出し、Troy Hooser がそれを改良して、1990年の "The Minutaur" 11月号に "Ultimate Illogical Cut" のタイトルで発表しました。彼の方法は、2000年発行の Troy Hooser 作品集 "Destroyers" に再録されています。 問題点は、1992年のクリス・ケナーの本の解説に、そのような経緯の記載がなかったことです。Sybil として三つの方法が解説されていますが、クレジットとしては、その一つに Bill Kalush の方法を取り入れていることの記載があるだけです。しかし、それは、前方回転を伴った3分割カットで、他の二つの方法とは違ったタイプのマルティプル・カットになっています。そのような問題がありますが、結局、Sybil がマルティプル・カットの代表的な名前となり、広く普及してしまいました。それは、クリス・ケナーの知名度と、彼の本 "Out of Control" が好評で、よく売れたことによるのではないかと考えています。

マルティプル・カットのその後の進化

1999年の Brian Tudor の "Show Off" のDVDが、かなりの話題を呼びましたが、その後は、特にDan and Dave の活躍にすばらしいものがあります。2004年発行の "Dan and Dave System" のDVDでは、多数のフラリッシュが発表されています。その中でも私の好きな作品は「マドンナ」です。横回転やスイングの加わった動きが、マドンナのステージでの華やかさを感じさせられます。2007年の "The Trilogy" のDVDでは、さらに多数のフラリッシュが発表されます。代表的なものとして、独特の動きが加わった「パンドラ」や「ジャクソン・ファイブ」が発表されています。後者では5分割を基本にして、次々と違った動きへ変化させているため、覚えるのがたいへんなフラリッシュの一つとなっています。2011年には、Dan and Dave のプロジュースによる Chris Hestnes のDVD "Paper Cuts" にも、多数のマルティプル・カットが解説されています。その中では、回転の動きが面白い「リボルバー」が気に入っています。

De'Vo によるフラリッシュ・トーナメントについて

De'Vo が中心となり、フラリッシュを広める活動の組織を結成しています。ここでは、カード・フラリッシュのことを Extreme Card Manipulation と名付け、これを略して XCM と呼んでいます。2006年より9ヶ月近くをかけて、第1回ワールド・トーナメントが開催されました。2007年に最初のワールド XCM チャンピオンが決定しています。台湾の J. S. Lin です。2008年には、カナダの Max Vlassenko が獲得しています。当時、彼は16才です。二人の映像は、2010年に発売されたDVD "World XCM Champions" で見ることが出来ます。また、インターネットでは、Fat Fingerz や Max V の名前で、トーナメント時の映像が見れます。トーナメントは、その後も毎年、開催されています。カナダの Vlassenko の場合、難易度の高いジャグリング要素の強いフラリッシュです。彼の映像を見ていますと、あまりのすごさに圧倒させられてしまいます。このようなフラリッシュを見せつけられると、私の場合、フラリッシュでは太刀打ち出来ないので、マジックの方で、もっと頑張ろうといった感覚にさせられます。

出場者は国籍や年齢を問われません。登録することと、各ラウンドごとに1~2分の動画を作成する必要があります。トーナメント方式で、勝ち進むとたいてい9ラウンドまで対戦することになります。厳しいことは、ラウンドごとにテーマが変えられ、その都度、動画作成が必要になることです。2回負けると敗退となります。オン・ラインで動画が数週間公開され、審査員により勝敗が決定されます。技術やオリジナル性が審査の対象となるようです。もちろん、動画はノーカットの撮影が義務づけされています。私が面白いと思ったのは、最初の方のラウンドで「ノーカット」のテーマがあったことです。ここでの「ノーカット」の意味は、マルティプル・カットのような操作を使わないフラリッシュのことです。アーム・スプレッド、カスケード、ファン、ブーメラン・カード等を駆使して、次々と技を披露します。最近のフラリッシュがカットを中心とする傾向にあるためか、全く別路線の戦いが必要となります。また、私の好きなテーマは「テーブル・ワーク」です。テーブル上で行う、このようなフラリッシュもあったのかといった驚きと感動があります。リボン・スプレッドとターンオーバーは基本中の基本です。様々に工夫されたフラリッシュが楽しめます。

De'Vo の活躍と腕の損傷

フラリッシュの発展に貢献してきたDe'Voですが、2008年の事故により、片手と片腕が使えなくなります。治療と訓練により、かなり改善しましたが、以前のような繊細さとスピードを必要とするフラリッシュが出来なくなりました。それでも、2010年にポルトガルで開催されたEMC( Essential Magic Conference )の大会には出演しています。その内容のDVDが発行されましたが、彼の顔だけは、一切、映さないようにしていました。実演したのは、指にはめた指輪の素早い取り外しと、はめ込みのフラリッシュだけです。残念ながら、カードのフラリッシュは実演されていません。また、フラリッシュ(マニピュレーション)のアートとビジネスについてスピーチしています。その中で、トーナメントの優勝者がテレビ出演したり、コマーシャルで活躍されている状況を映像に映し出していました。この映像は、You Tube でも見ることが出来ます。彼自身のDVDは発行されなくなりましたが、本の発行とマジック誌への掲載は精力的に行っています。2009年と2010年にDe'Voの本が発行されています。また、2011年のGenii誌には、1月号から6月号まで、De'Voに関連したフラリッシュが、毎回、数ページにわたり紹介されていました。なお、これら以前にも、2007年に6回発行された「ストリート・マジック」誌に、毎回、フラリッシュを解説していました。2008年に1回だけ発行された「マジシャンズ・マガジン」誌においては、16ページにわたり多数のフラリッシュを解説されていたことには圧倒されました。

フラリッシュ要素の加わったマジックの最近の状況

以前より、フラリッシュ要素の加わったマジックは演じられていました。例えば、4枚のエースを一気に取り出して、表向きに広げてディスプレイする方法があります。あるいは、1枚ずつフラリッシュ的に取り出してゆく方法もあります。また、カラーチェンジも数枚で一気に行われた場合には、フラリッシュ度が高くなります。

2000年から2006年までは、Brian Tudor のDVD "Generation X" で発表された作品や、Dan and Dave の Genii誌やその他で発表された作品が話題になりました。私の印象では、ビジュアルな点は面白いのですが、スピーディーなためか、数作品を見続けますと、テクニカルなうまさだけが前面に出過ぎているように思います。Brian Tudor のDVDを見ますと、最初の部分で掲載作品の全てを次々に演じていますので、その点の欠点がよく分かります。個々の作品には面白さがありますので、利用の仕方が課題と言えます。

2007年の Dan and Dave のDVD "The Trilogy" に、これまでに考案されたトリックが14作品発表されています。全てが面白く、私にはよい刺激になります。例えば、最初の2作品 "Tivo Transpo" や "Tivo 2.0" は、不思議すぎて、頭がパニック状態になります。解説がなければ、余分なカードを1枚使っているといった、勝手な解釈をしてしまいそうです。もちろん、余分なカードを使用せず、テクニカルで巧妙な方法が使われていました。すばらしい作品なのですから、勝手な解釈をさせない見せ方が必要です。2008年には、Kevin Ho の作品集のパンフレットが、Dan and Dave により発行されました。同数のカードを4枚取り出して、変わった形にディスプレイする作品が、いくつか発表されています。彼のコレクターでは、客のカード3枚と4枚のクイーンを、デックより一気に取り出して、テーブル上へ特別な状態に配列しているのが特徴です。つまり、これまでのコレクターの概念から、大幅に外れた考え方になっています。

ところで、Dan and Dave の最近の発表の中では、"Uzumaki" が特に気に入っています。アウトジョグした1枚のカードを、その場で回転させると、アウトジョグのままで数枚上に上昇し、回転させるたびに次々と上昇します。そして、最終的にはトップまで上がってきます。つまり、フラリッシュを取り入れたアンビシャスカード現象になっています。タイトルに日本語が使われている点も面白いと思いました。

フランスからも面白いDVDが発行されています。2010年発行の3枚組DVD "Bluff" です。マジックだけでなく、フラリッシュを取り入れた作品がいくつか含まれています。その中でも、3巻目のトップの "Sonic Boom" の作品に興味が釘付けとなりました。客のカードとは関係のない1枚のキングが表向きにされた後、一気に4枚のキングが特別な形でディスプレイされます。その後、それらが、一気に、客のカードを含めた4枚の同数のカードにチェンジします。つまり、マルティプル・カラーチェンジが行われるわけです。ところで、このような面白い作品は、もっと私好みの現象に改案したくなります。最初に客のカードが見つけ出されて表向きにすると、同数の他の3枚も出現して、4枚がディスプレイされるようにしました。そして、そのすぐ後に、客のカードを含めたロイヤル・ストレート・フラッシュにチェンジするように変更しました。

小わざで面白さを感じたのは、2010年の Eric Jones のDVD "Extension Me" の中で解説された「エレベーター・カット」です。Karrell Fox の「バタフライ・シャフル」の応用ですが、エレベーターのようにパケットを上昇させる楽しい動きがあります。本来の方法では混ざってしまうのですが、このカットの後、すばやく元の配列に戻す方法も解説されています。楽しい味わいを加えつつ、フォールス・カットとしての機能を持つカットです。ところで、Karrell Fox の方法ですが、シャフルとなっていますが、4分割カットです。昔は、両手の間で4分割以上する場合には、シャフルの名前で呼んでいたのでしょうか。Fox の方法は、1976年発行の "Clever Like a Fox" に解説されています。

おわりに

「フラリッシュの最近の状況」のタイトルにした割には、私の興味ある狭い範囲の報告で終わってしまいました。Dan and Dave の最近の活躍も、ほとんど報告出来ていません。De'Vo によるトーナメントとは違った Dan and Dave 主催によるコンテストが行われています。もちろん、投稿された映像によるコンテストです。また、2010年には、DVDによるマガジン "Reel Magic" の2月号で、彼らが表紙を飾り、メイン・ゲストとして対談されています。その中で、今後の彼らの進むべき方向性を語っていますが、正確な内容を聞き取れていませんので、ここでは割愛しました。そして、2011年に開催された第2回の EMC の大会では、彼らがゲスト出演しています。何を語り、何を実演されたのかも、今のところ未確認です。

国内において、私が驚いたのは、2009年の日本のミステリー小説に、フラリッシュについてが取り上げられていたことです。相沢沙呼著「午前零時のサンドリヨン」です。109ページから115ページにかけて、「シビル」や「ジャクソン・ファイブ」と「ワーム」の名前が登場します。また、フラリッシュの利点と欠点にも少しふれています。

日本においても、もちろん、フラリッシュのかなりの熟達者がおられます。その中でもトップクラスが、アルス氏やカマカリ氏です。アルス氏はフラリッシュだけのDVD "Unnaturals" を発行されていますが、カード・マジックのDVDも発行予定のようで、今後が楽しみです。

私の印象では、2000年以前に比べて、マジックの中にフラリッシュを含めることが、それほど異質ではなくなりつつあります。特に最近では、その傾向が強くなっているように思います。そうであるからといっても、無意味なフラリッシュは控えるべきだと思います。特にコンテストにおいては、減点対象になりかねません。オリジナル性のあるフラリッシュを、うまくマジックの中に融合させて、適切に取り入れた場合には、高い評価が得られそうです。コンテスト以外での使用では、状況に応じた演技者の適切な判断が必要です。 今後は、さらに5年後、フラリッシュがどのような状況になっているのかが楽しみです。


pagetop
当サイトは日本ベリサイン株式会社の認証を受け、SSL暗号化通信を実現しています。