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コラム

第31回 「ロイヤル・ロード・ツー・カード・マジック」について (2007.4.4up)




はじめに

2006年の春には、「ロイヤル・ロード・ツー・カード・マジック」(以下「ロイヤル・ロード」と略)のDVDセットが、なぜか、二つのメーカーから発売されていました。L&L社は5巻セットで、マジック・メーカーズ社は4巻セットになっています。

なお、この元となるものは、1948年に発行された同タイトルの本からです。今日においても、再版が繰り返されているカード・マジックの名著です。残念ながら、DVDでは本の内容を全て紹介されていません。L&L社のDVDでは2/3、マジック・メーカー社では1/3作品だけでした。それだけでなく、演じられている内容は、本の通りとは限りません。大幅に変えていたり、部分的に変えている作品がありました。

今回、この二つのDVDや本の内容を、徹底的に調べることにしました。それにより、意外な発見や、面白い事実が分かりました。全てを報告しますと、一冊の本になるほどのボリュームとなります。そこで、特に印象的なことを中心に報告することにしました。

「ロイヤル・ロード」の本について

1940年に、熟練者向けのカード・マジックの本「エキスパート・カード・テクニック」が発行されています。今日においても、まだまだ研究され尽くせていない魅力満載の本です。そのような本を作り上げたのが、Jean HugardとFrederic Braueのお二人です。彼らは、それから8年後、今度はカード・マジックの初級者向けの理想的な本を作り上げました。それが「ロイヤル・ロード」です。最高級のものにしたいという二人の情熱が伝わってくる本です。「エキスパート」の本に比べ、熟練者には物足りなく感じそうですが、実は奥が深く、かなりのマニアでも新しい発見が出来る本です。1948年発行ですが、今日においても、そのまま通用する技法や作品がほとんどです。

最近になって、この本の形式を取り入れた膨大なボリュームの「カード・カレッジ」が、ロベルト・ジョビーにより発行されました。それにより、かえって、コンパクトに一冊の本でまとめた「ロイヤル・ロード」が、再評価されているのかもしれません。

「ロイヤル・ロード」が日本に与えた影響

「ロイヤル・ロード」ほど、日本のマジック界に大きな影響を与えた本はありません。他に著名な本が多数影響を与えていますが、それらは「ロイヤル・ロード」に続くものといってもよいでしょう。まず、最初に名前をあげるべき本が、この「ロイヤル・ロード」です。

その事に関連して、戦後の日本のマジック界に衝撃の本が登場します。1951年(昭和26年)発行の柴田直光著「奇術種明かし」です。180ページほどの本の半分以上がカード・マジックでしめられており、その技法と応用作品のほとんどが「ロイヤル・ロード」を元にしています。わずか3年前にアメリカで発行された、最も新しく理想的なカード・マジックの本の内容を取り入れたことになります。欧米では、20世紀に入ってから、カード・マジックが多数発表されるようになっただけでなく、技法や原理、考え方がかなり発展しました。しかし、それらのほとんどが日本には入ってきていませんでした。それが一気に、最新の情報が、一般書店で手に入る本に紹介されていたのですから、驚くのも当然です。この本により、欧米と日本の差が、かなりうめられたと言ってもよいのではないかと思います。

L&L社のDVDについて

2002年に撮影が行われ、なぜか、2006年初めになって、L&L社より販売されています。ポール・ウィルソンが全ての演技と解説を行っており、そこが、このDVDの値打ちのあるところです。私も彼が適任者であると思いますし、彼のDVDであるからこそ、購入したくなりました。また、マジック・メーカーズ社のDVDは、内容の期待をしないで、L&L社製との比較のために購入しました。

L&L社製では、ポール.ウィルソンがテーブルを囲んだ数人の客の前で実演しています。技法を解説した後で、いくつかの応用作品の実演・解説しているのは本と同じですが、本での78作品に対して、55作品だけの収録でした。マジック・メーカーズ社DVDは、2005年末には発売されていたようで、日本ではほとんど知られていない、プロ歴約20年のマジシャンRudy Hunterが、実演と解説を行っています。実演は客がいない状態か、または、手助けする客の手が映っている状態だけで行われています。つまり、客の反応は分かりません。収録作品は28作品だけです。あらゆる点で、L&L社製より見劣りしますが、Hunterの熟練した演技により、参考になる部分もいくつかありました。例えば「ピアノ・トリック」です。1枚を飛行させる時のマジカル・ジェスチャーとして、両手を使って、楽しい指ダンスを見せてくれました。

特徴のある「ピアノ・トリック」

「ロイヤル・ロード」の本の特徴をあげるには、「ピアノ・トリック」が最適だと思います。2002年のGenii誌6月号の29ページには、「ピアノ・トリック」について触れられていました。トム・マリカが「ロイヤル・ロード」の「ピアノ・トリック」を気に入っており、1960年代に多くのマジシャンに演じて、驚かせてきたことを報告していました。

「ピアノ・トリック」は数冊の著名な本に解説されていますが、その中でも、トム・マリカは「ロイヤル・ロード」を指定していたのです。この本だけ、特別な演出が加えられているからです。「純粋に技法を使用したマジックであるので、よく見ていてほしい」と言って、手元に注目させているのです。「もし、途中であやしい操作を見つけたら、すぐに演技を中断させてほしい」と注文をつけて、ゆっくり操作を行っています。このことが、マジックをより面白くするだけでなく、本当の種の部分から意識を遠ざける働きがあります。また、配るたびに「2枚のカード、ペア、イーブン」の三つの言葉を、毎回繰り返していたのは、この本だけです。他の本では、三つの中の一つか二つまででした。セリフや演出の念の入りようが違います。この本では他のマジックにおいても、セリフを重視して、観客に感銘を与える演じ方に気を配っています。本のまえがきにも、このことは、一番強調して書かれていました。

ところで、奇妙なことは、このマジックは全くのセルフワーキングであるにもかかわらず、「ロイヤル・ロード」では、パームの応用作品の中で解説されていることです。パームしているのではないかと疑惑をもたせて行うマジックであるためでしょうか。なお、ポール・ウィルソンのDVDでは、この演出が取り入れられておらず、あっさりと演じていただけであったのが残念です。

ポール・ウィルソンのお気に入りマジック「アンダー・ユア・ハット」

上記と同様の2002年Genii誌6月号で、もう一人、「ロイヤル・ロード」の本をあげていたのがポール・ウィルソンです。この本の中の「アンダー・ユア・ハット」を、他のマジシャンは、ほとんど演じていないが、彼の気に入っているマジックとして報告しています。

現象は、5人が選んだカードを封筒に入れ、帽子に立てかけますが、選ばれた一人のカードが封筒より消失し、帽子の下から現れます。DVDでは第3巻に収録されています。派手さはありません。しかし、ひと味違ったタイプの不思議なマジックです。彼のお気に入りですので、見逃さずに、是非、見て下さい。本では、二つの帽子を使っていますが、DVDでは、帽子と紙コップに変えています。

ところで、興味深いことは、この作品の原案が、1930年のArthur uckleyの作品集に発表されており、その時には、帽子とコップが使われていました。このBuckleyの作品集は、1947年のFitzkeeの「ザ・カード・エキスパート・エンターテインズ」に、そのまま全てが再録されています。

すばらしい改案の「レッド・アンド・ブラック」

DVDの中で「レッド・アンド・ブラック」の改案が、一番気に入っています。これは第5巻目に収録されています。本の場合、26枚ずつの赤と黒に分離させたデックを使っていますが、DVDでは奇数と偶数に変えています。タイトル名とはあわなくなりますが、こちらの方が、表向きにスプレッドしても、セットしているようには見えない利点があります。ところで、私が気に入っているのは、この改案の部分ではありません。これもすばらしいのですが、それよりも、もう一カ所の方の改案です。ちょっとしたことですが、完全にだまされ、そんなわけがないと思ってしまいました。もちろん、すぐに、もう一度、演技を見直したことは当然です。ある技法を使うための、前段階での見せ方がみごとでした。このことに関しては、具体的に書くことを差し控えます。ほんのちょっとしたハンドリングですが、是非、映像を見て下さい。私のように驚く方が、一人でもおられることを期待します。

大幅に変えてしまった「レディース・ルッキンググラス」

このマジックの現象の特徴といえば、2枚ずつ取らせたカードのペアが、デックのトップとボトムから同時に現れることです。そして、最後の2枚は、デックを空中へまき散らし、その中より2枚をつかみ取っています。クラシック・マジックの名作で、多くの場合、4人の客に2枚ずつ取らせて、この現象を行っていました。 「ロイヤル・ロード」の本でも、このスタイルは変わっていません。ところが、DVDでは、全ての部分で簡略化され、別のマジックのように思えてしまいました。5人が選んだ5枚のカードを、1枚ずつ違った方法で見つけ出しますが、最後の2枚の時だけ、テーブルの上空にまき散らしたカードの中から取り出しています。シンプルにすることは、すばらしいことですが、原案の特徴であるトップとボトムからの同時出現がなくなっており、最後の空中からの2枚取りだしだけが、残された状態となっています。このマジックは、ポール・ウィルソンのレパートリーとなっているもので、これはこれで、すばらしいマジックだと思いました。しかし、原案に近い状態での、ポール・ウィルソンの演技が見れなかったことは残念です。

客の反応がよかった、失敗を装ったマジックと「スプリング・キャッチ」

"Design for Laughter"、"Righting a Wrong"、「サーカス・カード・トリック」、「マッチング・ザ・カード」では、大きな笑いが起こっています。これらの共通点は、演技者が失敗していると思われるのに、だまされていたのは客であったといったマジックです。意外な結末の不思議さと、だまされてしまったことの照れ隠しの意味を込めた笑いも含まれていそうです。1〜2つ取り入れると、大いに盛り上がるため、私も好きなマジックです。しかし、多くならないように注意しています。このようなマジックばかりが続けられると、バカにされている思いも生じかねないからです。

また、「スプリング・キャッチ」では、びっくり箱的マジックといってもよい、驚きと不思議さを伴った笑いがおこっています。フラリッシュのスプリングにより、上空へカードをまき散らし、その中から、客のカードをつかみ取る演出です。目の前のテーブル上で、カードがまき散らかされるので、客はびっくりしています。本では、パームした手にデックを持ってスプリングしていますが、DVDでは、右手にパームして、左手にデックを持って、スプリングしていました。こちらの方が楽に行えそうです。なお、マジック・メーカーズ社のDVDでは、本の方法で行われていました。ところで、客の反応だけで、マジックの良さを判断しないように注意しています。心にしみるマジックや、じんわりとした不思議さのあるマジックは、大きな反応がない場合も多いからです。拍手をしたくなりますが、DVDでは、拍手を禁止させているようです

DVDに新たに加えられた作品と技法

2作品が新たに加えられています。一つは、パスの応用作品として加えられた"Roy Walton's Pass at Red"です。ロイ・ウォルトンの許可をもらって、ポール・ウィルソンのレクチャー・ノートにも取り入れられているほどのお気に入りマジックです。ミスディレクションが十分に生かされていますので、パスが楽に行えます。二つ目は、第5巻のアレンジメントの部分で「マッチング・ザ・カード」が加えられています。サカー・トリックの要素もあり、観客うけの良い作品です。技法では、アンダー・カットのかわりに、ダブル・アンダー・カットが新たに加えられています。また、カラー・チェンジでは、ダブル・カラー・チェンジのかわりに、パームにより行うカラー・チェンジに変えられています。

テーブル上で行うパスについて

DVDでは、パスの技法解説や応用作品は、全てイスに座って、テーブル上でのパスとして行われています。しかし、この状況では、パスを行っていることが露見しやすいのではないかと考えています。ポール・ウィルソンは、もっとパスがうまいと思うのですが、パスの解説や演技の部分では、パスをしていることが露出した状態になっています。前方からのパスの動きが見えないように、デックの外端を傾けると、テーブルがあるために不自然な手つきになります。また、テーブル上では、手や肘の動きが目立つようにも感じられます。速くすればするほど目立ちます。カラー・チェンジのように、デックのトップ・カードの変化現象として見せるパスであれば、それでもよいのですが、秘かに行うパスとしては、何かをしたといった印象が残ります。立って演じるか、あるいは、イスに座っている場合でも、テーブルを使わないのであれば、パスがうまく出来そうです。テーブルという障害物がないために、上肢や身体全体の動きが解放され、パスが行いやすく、角度の関係からも、露見しにくくなるようです。テーブル上で行う場合には、かなりの完成度の高い技術を持っているか、何らかの工夫が必要です。ミスディレクションを使うことが、現実的な解決方法といえそうです。そういった意味で、ロイ・ウォルトンの上記の作品は、テーブル上で行うパスを使った名作といえます。

ところで、「ロイヤル・ロード」の本でのパスの応用作品は、5作品ありますが、その内の4作品は、客のカードをデックに戻させて、単にトップに移すために使われているだけです。それならば、パスを使わなくともよさそうです。DVDでポール・ウィルソンは、2作品でパスを使わず、シャフルで代用していました。

失敗する可能性のある作品となった、DVDでの"Mentalivity"

DVD第4巻に収録されています"Mentalivity"は、単なる改悪ではありません。すばらしい発想が加えられており、本来ならば改案作品といってもよいものです。しかし、細かい部分までの配慮が十分でなかったために、場合によっては、完全な失敗状態となります。

現象は、第1の客が思った枚数目のカード(1〜10の間の数)が、第2の客が思った枚数目(10〜20の間の数)より出現するものです。本では、第1の客が思った枚数目までカードを配り、客のカードがないことを示した後、第2の客が思った数を聞き、その枚数目まで1から数えなおしています。DVDでは、1から数えなおさず、第1の客の数に続けて数えています。こちらの方が、すっきりした現象です。しかし、この方法では、第1の客の数を2倍した以上の数を第2の客に思ってもらわないと、マジックが成立しません。DVDでは、6と16ですので成立していますが、そうでない時は、本の方法で行う必要があります。DVDでは、その事の説明がなされていなかったのが問題です。

DVDでの"Insidious Dr Fu Liu Tu"は改案か改悪か

本の中でも、特に不思議で楽しく、私の気に入っているのがこの作品です。デックの中から、意味不明の文字が書かれたカードが出現し、その内容を読み上げる演出で、突然、客のカード名を当ててしまいます。フォースでもなく、カードの表を見る機会もなかったのに、早い段階で、一気に当てるので驚きです。

本では、ジョーカーの表に意味不明な文字を書いているのですが、DVDでは裏に書いています。この方が、ジョーカーをひっくり返す操作を加えられるため、グリンプスする場合のミスディレクションがより強くなります。問題は、最後の段階で裏向きスプレッドして、中央に表向きの客のカードを出現させますが、その横のカードの裏には、文字が少し見えていることです。DVDの映像では、ほとんど気になりませんが、文字の一部分がはみ出して見えていました。文字をカードの裏に書くのであれば、もっと中央部分に集中して書くべきです。本では、中国語を書くように解説されていましたが、ポール・ウィルソンは日本語で「お早う、ポール・ウィルソン」と横書きしていました。ユニークで楽しい気分になりましたが、このことにより、文字露出の原因となったことは残念です。

「レディース・ルッキンググラス」と「スリーカード・アクロス」

本の第3章は、プラットホーム・マジック(パーラー・マジック)として、9作品解説されています。しかし、DVDでは、第5巻のラストに2作品収録されているだけです。この2作品だけにした理由は、ポール・ウィルソンのレパートリーであるからのようです。そして、この2作品とも、テーブル上で行うマジックとして演じています。「レディース・ルッキンググラス」は前記していますように、大幅に変更されています。それに対して、「スリーカード・アクロス」は本の通りです。しかし、この映像は見逃せません。パームしたカードを、テーブル上のパケットに加える絶妙のタイミングと方法を知る上で、最高の映像であるからです。

"Do It and Fail"がDVDに収録されなかった理由

「ロイヤル・ロード」の本には、この作品は客の記憶に残るマジックと書かれています。私にとっても、このような面白い原理と現象のマジックの存在を知ったことが、大きな収穫でした。機会があれば、是非、演じてみたいマジックです。ところで、これほど不思議で楽しいマジックが、DVDには収録されていません。しかし、当然だと思ってしまいました。それは、あまりにも時間がかかりすぎるからです。デックの半分ほどのカードを使って、四つの山に配る操作を2回も繰り返し、やっと現象が起こっています。条件に従って行うと、配られた四つの山が、四つのマークの山に分かれます。それだけでは終わりません。結果的には、これを4回繰り返しています。1回目は演者が見本を示し、2回目は客に行ってもらいます。そして3回目に、出来なくなる暗示により不可能となり、最終的に、暗示の解除により出来るようになります。ほとんどの操作を客が行っているために、全くのセルフワーキングのように見えます。しかし、本当は、そうではないのが面白いところです。セルフワーキングの原理に技法を融合させた意欲的なマジックです。長期の船旅での演目としては最適です。

意外な発見の「パルス・トリック」

客の手首の脈拍に触れることにより、客のカード名を当てるマジックです。フォースが使われていますが、グリンプスを使ってもよさそうです。後は演技力だけです。数年前のテレビ番組で、脈拍により客のカード名を当てた演者が、客にも出来ると言って、同様のことをさせていました。演者が覚えて裏向けたカードを、脈拍により当てさせていたのです。その当時、これはサクラを使っていると思い込んでいました。演者が当てるだけの方が不思議であるのに、第2段で、サクラを使ったために、全体がインチキくさいマジックになったと考えてしまいました。ところが、DVDでも同様のことを行っていたのでびっくりしたわけです。サクラではなく、本当に客に当てさせていたことが分かり、驚いてしまいました。もちろん、本にも解説されていたのですが、見過ごしていました。なお、DVDでは、第3段目が追加されています。

このマジックには、もう一つの意外な発見があります。ロベルト・ジョビーの「カード・カレッジ 第1巻」にも、同様の方法が解説されていることが分かりました。しかし、日本語版を読みますと、第2段の客にさせる場合の記載が、間違った解説になっています。英語版の方を読んで、間違った理由が分かりました。その部分の記載が、誤解されかねない表現になっていたからです。これでは、このマジックの方法が分かっている人以外は、間違った日本語訳を書いても仕方がないと思ってしまいました。

「ロイヤル・ロード」の本への苦言

何度も繰り返しますが、「ロイヤル・ロード」はすばらしい本です。しかし、苦言を言いたいことがあります。各作品の作者名の記載がないことです。もちろん、原案者名や参考にした本の名前もありません。例外は、タイトル名に人物名が入った"Gray's Spelling Trick"と、第3章のプラットホーム・マジックとして解説されたクラシック・マジックの場合だけです。今回、発売されたDVDを見ますと、5枚の各DVDの最後には「ボーナス・マティリアル」のコーナーがあり、作品のクレジットがされていると期待しました。しかし、全く別の内容でした。残念です。

技法に関しての苦言は、一つだけ取り上げたいと思います。ダブル・リフトにおいて、ダブル・カードをデック上でひっくり返す時の方法です。解説では、最後まで、指をカードから離していない点が気になりました。デックより少し手前へずらしているため、2枚がずれる恐れを感じてのことと思います。しかし、自然な動作に見せるためには、途中で指を離すべきです。DVDでは、この方法を解説した後、改案として、ひっくり返したカードを手前へずらさずに、左サイドにブレークを作る方法を解説しています。これであれば、デックにそろえつつ行えるので、途中で指を離しても、問題なく行えます。

苦言を言いたい作品"Gathering of the Clan"

この作品の原案は、1932年に発表されたダイ・バーノンのフォーエース・アセンブリーです。本来のクラシック・フォーエースでは、3枚のエースを普通のカードとスイッチする必要があります。それをバーノンは、2枚だけにしました。このことによる利点がいくつかあります。その中でも、最もすばらしいことは、選ばれなかった三つのパケットをデックに戻す時に、なにげなく1枚のエースをチラッと見せられることです。それにより、各エースがデックに戻ったことを確信させることが出来ます。そのすぐ後、テーブルに残った一つのパケットにフォーエースが集まっているので、不思議さが強くなります。そのかわり、サイド・スティールかパームが必要となる難点があります。"Gathering of the Clan"では、なぜか、エースをチラッと見せていないのです。これは本だけでなく、DVDでも同様です。何のために、苦労してパームを使ったのか、意味が分からなくなってしまいます。見せないのであれば、本来の3枚のチェンジする方法の方が、最後にパームの必要がなくなり、楽に行えるからです。もう一つ気になる部分があります。いずれのパケットにエースを集めるのかを、客に選ばせずに、演者が勝手に決めていることです。これでは、不思議さがかなり減少します。原案のバーノンの方法や、「エキスパート・カード・テクニック」に収録されていますチャーリー・ミラーの改案は、いずれも、効果を高めることは取り入れています。なぜ「ロイヤル・ロード」では、このようにしなかったのかが不可解です。

「アクロバティック・エーセス」と私

私が最初に購入したカード・マジックの洋書が「ロイヤル・ロード」でした。1970年代初めのことです。届いた本を開いて、がっかりしたのを思い出します。私の期待していた内容とは、全く違っていたからです。その当時は、テクニカルでビジュアルなマジックにしか興味を持っていなかったからです。私にとって、この本が、あらゆる点で重要な価値を持つようになるのは、かなり後になってからです。まず最初に、タイトル名から興味を持ったのが「アクロバティック・エーセス」です。思っていたほどのアクロバティックな動きはなく、がっかりしましたが、それでも一生懸命練習しました。ワンハンド・カット(シャーリア・カット)をパスとして、2回も使っているマジックです。パスとして成立させるためには、どのようにすればよいのか、知恵をしぼって工夫した思い出が残っています。DVDでは、最初に見たかったのが、このマジックでした。ポール・ウィルソンは、どのように見せているのか。そして、客の反応はどうであるのかといった点です。ところが、がく然としました。このマジックに関しては、解説だけで、客を前にした演技が除かれていたからです。不可解なだけでなく、残念な思いが残ってしまいました。

おわりに

今回の調査で感じましたことは、DVDと本の併用の必要性です。特に今回のDVDでは、収録されなかった作品がかなり残っているだけでなく、演技者による改案や個性により、本から受けた印象とは違った作品も見られました。それぞれの改案もすばらしいのですが、本の通りの方法も、捨てがたいものがあります。今回、もう一度、本を読み返すにあたっては、英語版だけでなく、翻訳版も併用することにより、かなりのスピードアップと負担の軽減がはかれました。翻訳版は、まだ全体の2/3までしか完成されていませんが、RRMCのメンバーである宮島昇氏の労力による賜物で、会のメンバーのみに配布されたものです。おおいに活用させて頂きました。お礼を申し上げます。今後は、この「ロイヤル・ロード」のDVDが発行されたように、熟練者向けの「エキスパート・カード・テクニック」のDVDも発行されることを期待しているところです。


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