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コラム

第20回 2005年 I.B.M.大会報告(2005.9.23up)




キーポイント

今回の大会で、私の印象に残ったことがいくつかあります。それを「キーポイント」として、最初に紹介させて頂きます。
詳しくは本文の報告を御一読下さい。

  • 1.クロースアップ・コンテストで、全ての観客の投票により1名だけが選ばれる"People's Choice Award"を受賞したのに、審査員による本来の賞は、1位だけでなく、2位すらも受賞出来なかったホンコンの Chow Man Chung。
  • 2.ステージ・コンテストにおいて、3年ぶりにゴールド・メダルの受賞者が出現。
  • 3.大きすぎるステージによる弊害。
  • 4.マジックとジャグリングのコンビネーションが増えてきそうな気配。
  • 5.コスチューム・チェンジがレクチャーされる時代に。

はじめに

今年は6月28日より7月2日まで、ネバダ州リノにおいて開催されました。リノはラスベガスよりも歴史のあるカジノの町です。しかし、華やかなラスベガスに比べますと、大きな差を感じてしまいます。今回の会場となりましたリノ・ヒルトン・ホテルが、リノの中では、もっとも活気にあふれていました。このホテルには、飛行機の消失を演じることが可能な巨大ステージがあり、毎晩、ここでゲスト・ステージショーが演じられました。

今年の参加者数は、1200名は参加されていたのではないかと思われます。今回の報告は、クロースアップ・コンテストを中心におこないますが、その他の印象に残りましたことにも触れたいと思います。

クロースアップ・コンテストについて

今年も予選は、朝8時から12時までの4時間を、25人がチャレンジされました。4部屋を順に演技してまわる形式です。今回はジュニアが何名出場されたかを、正しく報告出来ませんが、いつもの年よりも少なかったようです。この予選の上位6名が、翌日に行われますファイナル6の決勝戦に出場出来るのです。これにより、1位、2位と最高位のゴールド・カップが決定されます。この時も、4部屋を順にまわって演技が行われました。なお、この時には、観客全員に渡された用紙により、観客が選ぶ賞1名も決定されます。ところで、今年はめずらしく、このファイナル6にジュニアが1名も含まれていませんでした。

審査の結果、今年は残念ながらゴールド・カップの受賞者はありませんでした。この賞は3〜4年に1人しか受賞者が出ていない状況です。

1位受賞者の演技

カルフォルニアの Ivan Amodei が受賞されました。昨年、彼はほとんど同じ内容の演技で2位を獲得されています。ビリヤードボール・ゲームに使用する道具を中心に扱ったマジックです。

全体がスピーディーで、フラリッシュやテクニカルな扱いが含まれているにもかかわらず、安定感があり、失敗が無いだけでなく、そのおそれすら感じさせられません。小銭入れのがま口の部分に、中に入りきれない大きさのボールが繰り返し出現させたり、突然にカラーチェンジさせていました。また、小さいボールがビリヤードボールの大きさになり、さらに、ソフトボールの大きさの重いボールに変化させていました。これらの現象にはめりはりがあり、ほれぼれしてしまいます。それに比べますと、キュー(ビリヤードで玉を突く棒)の先につけるキャップを使ったシンブルのプロダクションのような現象は、うまさがあっても、新しさがないために、時間だけが長く感じてしまいました。さらに、クライマックスのテーブルマットがミニのビリヤード台に変わり、多数の小さいボールを台上にぶちまけるシーンも、問題を感じてしまいました。構想は面白いのですが、この部分の肝心のマジック的要素が少なく、もっと工夫の必要性を感じてしまったからです。

2位受賞者の演技

Jason Michaels がカップ・アンド・ボールの演技により2位を受賞されました。演技用のテーブルを持参し、数世紀前のヨーロッパの大道芸マジシャンのコスチュームで、カップ・アンド・ボールが演じられました。ポケットを使用するかわりに、腹部前面にある大きな袋が使われていました。三つのカップ以外に、一つの鐘も使われていました。この鐘の使用は、彼独自のアイデアなのか興味のあるところです。最初に、三つのカップを取り出した段階で、ジャグリング的にカップを扱っていました。一般的なカップ・アンド・ボールの演技との違いは、横に置いてあった鐘の下からもボールが出現することです。また、クライマックスでは、テーブルに置いた帽子の下より頭蓋骨を出現させていました。この頭蓋骨の出現はダジャレ的な意味があるのか、それとも、何か特別な意味があるのか、よく分かりませんでした。

カップ・アンド・ボールのテクニックとしては普通で、操作においても、工夫されてはいますが、特別な新しさは感じられませんでした。しかし、彼がストリートでこのマジックを演じると、うけるだろうと想像してしまいました。数世紀前のストリート・マジシャンのコスチュームで、迫力のある演技者の声とジャグリング的要素がある上に、鐘を鳴らして注目を集める演出も加えていたからです。

観客が選ぶ人気投票による賞

ホンコンの Chow Man Chung が受賞されました。ある部屋では、演技後にスタンディング・オベーションもあったそうです。それほどに観客での人気が一番であったのに、審査員による賞では、1位だけでなく2位すらも獲得出来ませんでした。

哀愁のあるBGMが流れる中、カードやコインのマジックが演じられました。ビジュアルな現象でめりはりがはっきりしており、うまさを感じさせられました。例えば、1枚ずつ消失していった4枚のコインが、一気にテーブル上に整列して現れたりして、見ていて気持ちよくなります。それだけでなく、デックの入ったカード・ケースが、テーブルの上空で急に出現したり、バラの花が現れたりします。さらに、ワインが入ったいくつかのグラスの取り出しがあり、盛り上がる演技が行われました。

本来ならば、技術的なうまさと観客のうけから考えて、1位を獲得してもおかしくない状態でした。しかし、2位も受賞出来ない程に、審査員の点数はよくなかったようです。制限時間をオーバーしていないことを前提に考えますと、オリジナルの問題があげられそうです。

カードの扱いが、フランスのバラリノ(Jean Pierre Vallarino)のタッチで、彼の顔を思い出してしまいそうです。さらに、突然、テーブルの上空で物体が現れたり、別の物に変化させたりするのも、バラリノが演技に取り入れている方法です。バラリノのラッピングとロードの組み合わせのようです。そのうえ、ワインが入ったグラスのいくつかの取り出しは、バラリノのまねをしていることを、さらに強調していることになります。それだけでなく、途中で、レナート・グリーンのマジックそのものが演じられていました。10枚程のカードを1枚ずつテーブルへ配るのですが、配ったはずのカードが、順次見えなくなってしまうというものです。現在、活躍中の個性の強いバラリノや、同様に独自性の強いテクニックを使うレナート・グリーンのまねをしていることになります。これでは、コンテストにおけるオリジナルの審査点数が低くなることが考えられます。もちろん、自分自身のアイデアを取り入れたり、彼独自のマジックも行われていたと思われます。しかし、全体の印象がバラリノのイメージが強く、まねをしていると思われてもしかたのない内容でした。各地区のコンテストでは高得点を得られても、世界を目標にしたコンテストでは、独自性のあるマジシャン、オリジナル性のあるマジックが、大きなウエートをしめていることを考えさせられました。

彼の気になる点は、これだけではありません。準備段階でも問題を感じてしまいました。助手により、テーブルの前面を大きなつい立てでカバーさせていたのです。しかも、その時間が長く感じました。ものものしいことをしなくても、もっと簡単にスムーズに始める工夫が出来なかったのかと思ってしまいます。こういった点も、審査点数のマイナス・ポイントになっているのではないかと考えてしまいました。

ステージ・コンテストの受賞者

予選は朝の8時から1時すぎまで30組以上がチャレンジされました。この中から6組が、二日後の夜に、巨大ステージでゴールド・メダルをめざして決勝に出場されます。

アダルト部門では、Arthur Trace が1位と観客が選ぶ賞も受賞されました。それだけでなく、ゴールド・メダルも獲得されました。前回のゴールド・メダル受賞は、2002年の武藤桂子さんでしたので、3年ぶりに受賞者が出たことになります。ボールとカードが中心に演じられました。モダンな絵が描かれたキャンバスから、円形の部分を抜き取るとボールになり、ボールのマニピュレーションの後、色を変えて元の絵に戻したりしていました。最後にはモダンな人物画となります。決勝でのステージが大きすぎたためか、迫力には欠けますが、ヨーロッパ調のシャレたタイプのマジックに仕上がっていました。

ジュニア部門では、Farrah Siegal が1位を獲得されました。16才のキュートな女性ですが、ジャグリングとマジックを組み合わせて、観客を大いにわかせていました。2本のダンシングケーンで始まり、両手でのヨーヨーの扱いに続き、一つのソフトボール大のボールのジャグリング的扱いと、それを4個に分裂させました。その後、四つのフラフープによるリンキング・フラフープ、そして最後に、2枚のマントを使った舞踏で終わりました。どれも結構むずかしいことを楽々とこなし、予選でも決勝でも失敗するおそれすら見せませんでした。

リンキング・フラフープの演技は、原案のジマーマンとほぼ同じですが、彼女の動きが軽やかで、ジマーマンとは違ったあじわいを出していました。問題はヨーヨーです。二つのヨーヨーを両手により、かなりむずかしいことをこなしていました。気になったことは、自信があって扱いなれているためか、かなりの時間をとりすぎたことです。そして、この部分にはマジック的要素がなかったことが残念でした。それとよく似たことが、最後のマントについてもいえます。

二つのマントを華麗に振り回すのは舞踏としてすばらしいのですが、それにより身体を隠して、最後にはコスチューム・チェンジか何かが起こりそうな期待をもたされました。ところが、単に赤い首に巻き付けられたものが出現しただけで終わっていました。しかし、16才の女性で完成度の高いテクニックには感激させられました。

大きすぎるステージでの問題

ステージが小さすぎるのは問題ですが、大きすぎるのも問題があることが今回の巨大ステージでよく分かりました。大会二日目の夜より、毎晩、その巨大ステージでゲスト・ショーが演じられました。毎回、ラスト・ステージには、もっとも盛り上がるゲストが出演されています。初日のステージ・ショーのラストには、ジュリアナ・チェンが登場しました。いつもどおりのすばらしい内容ですが、ステージ上の空間が広すぎて、何となく迫力に欠けるのです。特にそれが強く感じられたのが、クライマックスでの真上へのカード飛ばしです。いつものように飛んでいるのでしょうが、高く飛び上がっているようには見えないのです。天井までの高さがあまりにも高すぎて、迫力が出ないのです。本来ならば、スタンディング・オベーションになってもおかしくない演技でしたが、拍手だけで終わっていました。

翌日のステージ・ショーのラストは深井洋正&キミカさんです。軽快なテンポと次第に盛り上がってゆく傘の演技で、大きな拍手がわきおこりました。しかし、それでもスタンディング・オベーションはありませんでした。その次の日は、ステージ・コンテストの6人の決勝演技と、3人のチームによるジャグリング・ショーです。そして、その翌日の最終日となるショーのラストをかざったのがペン・ドラゴンズです。彼らの演技でスタンディング・オベーションがないわけがないだろうと思っていました。しかし、10人ぐらいが立ち上がった程度でした。I.B.M.大会に何回か参加してきましたが、このようなことは初めてです。ゲスト・ショーでは、毎回、2〜3組のゲストにはスタンディング・オベーションがあったからです。ゲストはいつもの年に比べて悪い方ではありません。ステージが大きすぎると、演技の迫力が出しにくいこともありますが、観客との一体感も出しにくくなっているのではないかと思ったりもしてしまいました。

ジャグリングとマジックのコンビネーション

2003年のFISMは、マジックにジャグリング要素を融合させたノベール・フェレがグランプリを獲得されました。その影響があってか、この二つがより接近してきたように思われます。今回の大会においても、ジュニア1位の女性は上記に報告しましたように、両方を取り入れた演目を行いました。また、ゲスト出演の3人のジャグリング・ショーは、ジャグリングの途中に、四つ玉やカードのマニピュレーションも取り入れられていました。このような試みは今までにもあったのかもしれませんが、あまり記憶には残っていません。ただし、今回の残念なことは、個々のテクニック内容には新しさがないことです。ショーとしては、それで十分楽しませてもらえますが、コンテストとなりますと、フェレのような独自性の工夫が必要になってくるといってもよいでしょう。なお、クロースアップ2位の演技者も、最初に三つのカップをお手玉のジャグリングのように扱っていました。

コスチューム・チェンジがレクチャーされる時代に

最近になって、安田悠二氏のコスチューム・チェンジのDVDが、日本ではUGMより、そして、アメリカではスティーブンスより販売されました。そのような時期に、今回のI.B.M.大会のゲストに、フランスのValerieが出演されました。彼女は、コスチューム・チェンジとイリュージョンをコンビネーションさせたオシャレなあじわいのショーを演じられました。その彼女が、本人自身がモデルになり、コスチューム・チェンジの準備段階からレクチャーされていました。安田氏のDVDをすでに見ていた人は、二人の方法には違いがあり、その点が興味深かったことを話されていました。

おわりに

I.B.M.大会の数日後にS.A.M.大会が開催させています。そこで、その大会でのクロースアップ・コンテストの順位を調べました。興味深いことは、1位と2位が、I.B.M.大会と同じ演者により、同じ順位で賞を取られていました。ところが、観客が選ぶ賞は、I.B.M.大会と異なり、1位の Ivan Amodei が獲得されていました。Chow Man Chung も S.A.M. 大会にチャレンジされていましたが、特に賞は獲得出来なかったもようです。

今回も I.B.M. 大会のディーラー・ショップで、いくつかの購入したかった本が手に入りました。100年以上前の本や、逆に最近発行されたばかりの本等です。このことにより、今までのコラムで書き足らなかった部分や、新たに分かった部分を、補足する必要性が出てきました。これらのことは、近日中に、補足報告として発表したいと思っています。


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