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コラム

第12回 フェロウ・シャフルはトップからかボトムからか (2003.12.18up)




はじめに

私はフェロウ・シャフルはボトム側からかみ合わせるものとばかり思い込んでいました。 ところが、そうとばかり言えないことが分かってきましたので、可能な限り調べましたことを報告したいと思います。 まず最初に、私のフェロウ・シャフルとの出会いから述べさせていただきます。私は小学生時代より、うまくはありませんがフェロウ・シャフルを行っていました。テレビに登場するマジシャンがジャンボ・ファンを行う時に使用していたのを見ていたからだと思います。 また、当時の一般書店で販売されていました柴田直光氏の「奇術種明かし」(1951年)にも、ジャンボ・ファンを行うために必要な操作として解説されており、その部分だけを立ち読みしていた記憶があります。練習をしても、テレビで見ていたようにスムーズに出来なかったので、特に興味を持っていたのだろうと思います。無理矢理行っていたので、当時のカードのエッジは相当傷めていただろうと思われます。 デックを水平にして、二つのパケットに分けて、両外端周辺を指先が上向く状態で待って、ボトム側からかみ合わせてゆく方法です。シャフルの途中は、少しだけ山の形になる方法といえるでしょう。海外の文献では、やはり、ジャンボ・ファンを作る時のカードをからみ合わせる方法として、Dodson(1935年、両小指をボトム側からサポート)、Hilliard(1938年、グレーター・マジックにて両親指をボトム側からサポート)、Ganson(1946年)、Norman(1948年)が同様の方法で解説されています。

高校時代になって、本格的にカードマジックの指導をうけるようになり、アメリカ製のキャラバンのカードを使うよう指摘され、フェロウ・シャフルを行うと、あまりにもスムーズに出来るので驚いた記憶があります。 カードの紙質の違いや、裁断によりエッジの状態に違いがあるなどとは考えもしていない頃でした。なお、当時はブリッジサイズのデックを使用するのが普通の時代でした。

その後、1972年の加藤英夫氏の「カードマジック研究2」の中で解説されたフェロウ・シャフルの方法に大きな影響をうけることになりました。この方がクロースアップ・マジックには最適であると確信して取り入れることになったからです。左手はデックを下から、右手は上から待って、半分に分け、ボトム側からかみ合わせる方法です。左右の手に持ったパケットは、ヒンズーシャフルをしている途中のような状態になっています。 後で分かりましたことは、エド・マルローの方法を採用されたのはないかと思えたことです。 マルローはフェロウ・シャフルの技術面の事を研究された内容を、1958年に”The Faro Shuffle”という小冊子で発行されていました。なお、この中では上記の方法を解説した後に、左小指によりボトム側からサポートすることも追加して解説されていました。 また、この方法とほぼ同じ方法が、1983年に東京堂出版より発行された高木重朗編集による「カードマジック辞典」で解説されています。ただし、こちらの方法では、左小指によるボトム側のサポートだけでなく、右人差し指によりトップ側からもサポートすることが加えられていました。
つまり、いずれにしましても、私にとってはボトム側からからませるのがフェロウ・シャフルでは当然と思い込んでしまっていたわけです。

そういった状況の中での最初のトップからからませる方法との出会いは、1973年頃に手に入れましたフューガードとブラウエによる「エキスパート・カード・テクニック」でした。二つのポケットをテーブルから少し浮かした位置で水平状態にして、両手共に外側上方より二つのパケットの両外側周辺を持って、下方向に山の形が出来るようにからみ合わせていました。部分的には可能であっても、パーフェクトにフェロウ・シャフルを行うためには少し無理があると思った方法でした。

次の出会いは、1970年代中頃に手に入れましたハリー・ロレインの「クローズアップ・カードマジック」(1963年発行)だったと思います。手の位置は上記のマルローの方法と同じですが、右人差し指を上から当てて、少し下へ湾曲させて、トップ側からからませていたのです。この状態をイラストで描かれていましたが、私としては完全に無視したような状況でした。ボトム側からからませる方法で十分であるのに、変わった方法を解説しようとしているというぐらいにしかうけとっていませんでした。

今回この方法が使用されたマジックを読んでみますと、フェロウ・シャフルがポピュラーでなかった頃より使用していたそうです。そういった意味では、古い方法よりも一歩前進させた考え方であるのかもしれません。

また、この本と同時期に購入しました本が、アンドラスのオリジナルなカード・フラリッシュばかりを解説した本です。この中でのフェロウ・シャフルも、ハリー・ロレインと同様の方法が解説されていました。この本に解説されていますフラリッシュは少し変わった方法が採用されていましたので、フェロウ・シャフルも少し変わった方法になっているといった程度にしかうけとめていませんでした。

1990年代に入って、Maskelyneによる1894年の「シャープ&フラット」のフェロウ・シャフルに関係する部分を読みました。この本はフェロウ・シャフルが初めてイラスト入りで紹介された本であろうと思われます。ギャンブルのいかさまの秘密や、フェロウという名のゲームを解説した本です。フェロウ・ゲームのディーラーが使用しているシャフルとして「フェロウ・ディーラーズ・シャフル」と呼ばれていたそうです。このイラストには手は描かれていませんが、二つのパケットを水平状態にして、下の方向に山の形が出来るようにトップ側からからみ合わせていました。このイラストを見た時の私の印象は、古い時の本であり、まだ技術も洗礼されていないので、ぎこちない方法を使っているとしかうけとれませんでした。つまり、この時も私は無視した状態でした。この方法を元にして、手のイラストも加えて解説されていたのが前記の「エキスパート・カード・テクニック」(1940年)であったわけです。

これまでを振り返ってみますと、トップ側からのシャフルも結構見ていたわけですが、全く気にもとめていませんでした。ところが、私の気持ちをゆらぎ始めさせたのが、レベルト・ジョビーの「カード・カレッジ 3」でした。この本の1と2は日本語版が発行されていますが、この第3巻は残念ながら、まだ日本語訳にはなっていません。この本でのフェロウ・シャフルの方法が、ハリー・ロレインの方法と同じように行ってトップ側からからませていたのでした。特に誰の方法とは書かれていません。チェック・ポイントの項目では、フェロウ・シャフルの大家の何人かはボトム側からからませることを主張しており、それを行いたい方はマルローの本を読まれることも紹介されていました。では、なぜ彼はこちらのタイプの方法を解説することにしたのかが気になります。今回、この本を読みなおしてみることにしました。マジックとしては3作品が解説されていますが、その内の2作品がトップ側からからませる方が少し有利なように思われました。特に最初の作品は、トップの4枚だけフェロウ・シャフルがきっちり行われておればよいといった作品でした。

この経験を元にして、ハリー・ロレインの本でのフェロウ・シャフルを使用したマジックも調べてみることにしました。3作品ありましたが、その内の2作品はトップに特定の4枚のカードを集める現象のもので、結局はトップ側からのフェロウ・シャフルの方が有利なことがわかりました。 ここで思い出されますが、ル・ポールの1949年の本に解説された”The Gymnastic Aces”です。 4Aをトップから1枚おきの位置にもってくる必要のあるマジックですが、4Aをトップから1枚おきの位置にもってくる必要のあるマジックですが、4Aをトップに集めた上で、デックを表向けて、下側からからみ合わせていました。裏向きのデックでも、トップ側からからませるフェロウが出来るのであれば、わざわざ、フェロウ・シャフルの時だけデックを表向ける必要がないわけです。
結局、トップ側の数枚だけフェロウ・シャフルを必要とする場合、トップ側からのほうが少し有利な気がしてきました。

それでは、デックのすべてが関わってきますパーフェクト・フェロウ・シャフルの場合は、どちらの方が有利なのでしょうか。 2001年の末頃にマイケル・クローズのフェロウ・シャフルのCD-ROMが発売されました。私は購入していませんが、このパッケージには短期間でパーフェクト・フェロウが連続して可能になったことが述べられています。また、Genii誌を見ますと、マルローの方法を元にしたマイケル・クロースの方法であることが書かれていました。そこで、マイケル・クロースの本でフェロウ・シャフルの解説がされています本を探しましたところ、1996年の「Workers 5」を見つけました。そこには、彼が13才の時にハリー・ロレインの方法を知って練習したことが書かれていました。しかし、この方法はコントロールしにくく、フェロウ・シャフルを練習するのであれば、マルローのフェロウ・シャフルの小冊子を、まず購入しなさいと書かれているのです。そして、マルローの方法に追記されています左小指でボトル側をサポートする方法も読むことをすすめています。マイケル・クロースがそれに加えることで強調しているの が、右小指を外エンドに当てて、二つのパケットの接触部に軽く圧を加えて安定させることを述べています。そして、フェロウ・シャフルは押し込むのではなく、圧を加えた後、力を抜くことでからみ合ってゆくことを強調されていました。やっぱりマルローの方法のようにボトム側からからみ合わす方法でないとダメなのかと思ってしまいました。しかし、そうとばかりは言えないことが、最近になってたまたま読んでいました古いMUM誌により感じさせられました。

1960年代に「フェロウ・シャフル・キング」と呼ばれていたことのある人物をご存じでしょうか。 アウトのパーフェクト・フェロウを8回繰り返すと元の配列にもどることは知っている人も多いと思いますが、これを45秒間でスムーズにやりとげたのでした。その人物とはハリー・ライザーのことです。

彼はSAM機関誌「MUM」に1985年から「ライザー・レポート」を連載されています。MUMの1986年11月号に彼の特集がありますが、その中でこのことが報告されていました。 1960年頃シカゴに移って、シカゴのマジックメンバーのミーティングに初めて参加した時に、ジェイ・マーシャルにすすめられて参加者にタイムを計ってもらい、8回連続のパーフェクト・フェロウを行ったそうです。この事が、1週間後にはアメリカ中に伝わったと書かれています。そして、このMUMの表紙にフェロウ・シャフルを行っている写真がのっていますが、なんとトップ側からからませる方法となっていたのです。パーフェクトに行うためには、こちらの方がよいのかと思わせられる写真でした。

この45秒という記録はたいへんなものです。正確に26枚ずつに分割して、最初にかみ合わせる部分も間違いなく行い、シャフルの途中で重なって入ったり飛ばすことがないように注意しながら行う必要があるからです。私は正確さを意識しつつもあまり気にせず、何カ所も間違ってもそのまま8回繰り返しましたが、それでも40秒近くかかってしまいました。これを正確に行った場合には、何倍もの時間がかかってしまいました。

1994年にスティーブン・ミンチによるエルムズリーの作品集の2冊目の厚い本が発行されました。 この本には、フェロウ・シャフルの原理やマジックでかなりのスペースを取って解説されていました。そして、その項目の最初の部分には、ハリー・ライザーが「フェロウ・シャフル・キング」と呼ばれる程の記録を出すことが可能となった謎を解く鍵が明らかにされていました。もちろん記録を出すためには練習と努力が必要ですが、それだけではないことが分かりました。

1959年にエルムズリーが初めてアメリカを訪れて、各地でレクチャーを行った時のことです。ハリー・ライザーがエルムズリーを食事に招待して、その時にフェロウ・シャフルについて質問したそうです。もっと精度を高めるためには何か良い案があれば教えて欲しいといった内容でした。その解答として、エルムズリーはにっこり笑って本人のデックを手渡したそうです。そのデックでフェロウ・シャフルを行うと、デック自身が自分でかみ合わさっていくようで驚いたそうです。そして、このデックの秘密を教わりました。各コーナーのエッジがかみ合いやすい形状にするためにSandingが加えられていたことと、すべりやすくするためにパウダーが使用されていたのでした。つまり、パーフェクトに続けて行うためには、ガードのコーナーのエッジの状態が大きな意味をもってくることがわかりました。なお、Sandingはアンドロスの本にも書かれていました。

ところで、本来のデックのエッジの状態はどのようになっているのでしょうか。このことについては、このコラムの最初にも取り上げました「マジックに適したカードとは」の中でもふれています。エッジの形状というよりも、フェロウ・シャフルのしやすさといった内容で報告していますが、今回、報告を書き加えて、アメリカのデックに関してだけ、再度報告したいと思います。
アメリカ製の多くのカードは、ボトム側からのかみ合わせの方がスムーズにフェロウ・シャフルしやすくまっています。もちろんトップ側からも可能ですが、少しひっかかる感じがした後でかみ合うことになります。ところが2000年頃のデックや1996年頃のデック、または記念のデック等にはトップ側からの方がスムーズで逆転している場合があります。私が不思議に思っていましたことは、カードのメーカーは、なぜすべてのデックをボトム側からフェロウ・シャフルしやすいように統一しないのかということでした。しかし、今回の調査により、時々逆転しているデックがあっても悪くないという気がしてきました。ただし、フェロウ・シャフルを行う時には、逆転しているかどうかは知っている方が演技がスマートに出来てると思います。

おわりに

今回は、テーブル上でリフル・シャフルのように行うフェロウ・シャフルの場合や、フェロウ・シャフルを行う上で重要な要素であります、コーナーどおしを合わした後のツイスティングの問題等は割愛させていただきました。

結局、今回の調査による結論は、トップからかボトムからかということよりも、エッジの状態の重要性を再認識させられたような結果となりました。どのような持ち方で、どちらから行うかは、基本的には本人の使いなれた方法でようのではないかと思わされました。ただし、トップの数枚のフェロウ・シャフルが必要な時は、トップ側からからませる方が有利であり、エッジの状態がボトム側からの方がからませやすくなっているデックを使用の場合は、ボトム側からのほうが有利かと思ったりもします。ボトム側派でありました私としては、ボトムからの方がコントロールしやすいような気がしていますので、初心者にはマルロー的なシャフルをすすめたくなります。そして、パーフェクトのフェロウ・シャフルを続けて行う場合には、どのような方法で行うにして も、コーナーのエッジの下準備は是非必要であろうと思いました。

最後に忘れてはいけない注意点があります。実際の演技の中ではパーフェクト・フェロウ・シャフルは続けて行なわない方がよいということです。いくらスムーズに行えるようになったとしても2回が限度で、出来れば1回までの方がよいと思います。どうしてもデックに演者の意識が移ってしまいますので、演技が中断したような状態になってしまいます。つまり、これを行っている時だけ異質なムードがただよってしまうことになるからです。そして、これとは反対に、もっとおすすめしたいのがパーシャル・フェロウ・シャフルです。例えば、トップの3分の1程をカットしてデックの中央あたりにフェロウ・シャフルするような方法です。いろいろな活用方法が報告されています。割合気楽に行える利点があります。これであれば、話しながら、しかも、デックを全く見ることもなく、なにげなく行うことも不可能ではありません。これはもっとマジックの中に取り入れるべきであろうと思っています。


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