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コラム

第5回 ダブルリフトについて考える (2002.9.25up)




2002年の7月23日(日)に、Josyua Jay のレクチャーがこのフレンチ・ドロップにおいて行われました。予想以上に楽しめたレクチャーで、アイデアと技術の素晴らしさを堪能しました。中でも、レクチャーの後、特別に見せてもらえたマルティプル・プッシュオフは感激的なテクニックのうまさでした。あやしい動作がなく、スムーズにデックのトップカードを左親指により右へ押し出していました。無論、そのカードは2枚になっていたのです。しかも、これを繰り返し行ってもらえました。それだけでなく、3枚ずつでも、4枚ずつでも、同様に行っていくのには呆然としてしまいました。

2001末には、Lea Asher のレクチャー行われましたが、そのときも、レクチャーの内容の素晴らしさとともに、ダブルリフトが印象的でした。ダブルリフトというよりは、ダブル・ターンオーバー・フラリッシュと言ったほうがよいのかも知れません。Joshua Jay とは対照的で、超アクロバット・テクニックというべき方法でした。トップの2枚を空中高くはじきあげて、デックのトップに表向きにキャッチするというものです。

アメリカの2人の若手のテクニックをみて、最近になって考えているダブルリフトへの私の思いを書いてみたくなりました。まずは、以前から考えていた私の疑問点と、それとは別に調査の必要性を感じていた項目を紹介させていただきます。

疑問点

1.

理想的な方法とは。

2.

書籍に解説されている”ダイ・バーノン”の方法がもっとも良いのか。

3.

昭和50年頃まで、日本では一般的であった手前の端を持ち上げて、タテ方向に返す方法は、いかなる場合でもよくないのか。

調査を必要とする歴史的事項

1.

1920年頃までのダブルリフトとは。

2.

1920年代とダブルリフト。 そして”ダイ・バーノン”とのかかわりは。

3.

昭和50年頃まで、日本では一般的であったタテ方向に返す方法の海外と日本でのそれぞれの出所は。

私が昭和40年代に教わったダブルリフトは、手前の端を持ち上げて、パチンとはじいて、縦方向に返す方法でした。昭和50年頃までの日本では、最もポピュラーなダブルリフトであったのではないかと思っています。

しかし、大きな転換期を向かえます。 昭和44年にダイ・バーノンが来日し、ラリー・ジェニングスも同行されて、昭和47年に、加藤英夫氏が「ラリー・ジェニングスのカードマジック入門」を発行されたからです。そこには「今までの方法は良くない。もっとより良い方法があるのであるから、それを使うべきだ」とありました。私の思いとしては、今まで使われていたダブルリフトでも、一般の人にはマジックを行う上では、特に支障はなかったように思っています。しかし、マニア相手には、「今、ダブルリフトをしています」と言っているようなものでした。この操作を行ったり、パチンという音を聞くだけでも、ダブルリフトをしているのが分かってしまったからです。そういった意味で、書かれていることは納得出来ました。そして、その後、この方法を行う人は激減しました。しかし、最近になって思うことは、そこに紹介されたバーノンの方法も、それ以外のあらゆる方法も「ダブルリフトをしているな」と感づいてしまうことには変わりなかったことです。

たしかにバーノンの方法は、他の方法に比べ、より自然に近い方法であることは間違いありませんが、1枚だけを扱ったときに比べ、やはり違和感がありました。ある書物には、ダブルリフトは、まだ未完成なテクニックだとありました。多様されている割には完全でなく、特にマニアにはばれやすいからです。パスやパームやチェンジはミスディレクション(心理的なものも含めて)により、感づかせないことは可能です。しかし、ダブルリフトはその操作を客に示しながら行うため、少しでも違和感を感じると、2枚取ったと思われてしまいます。これはとりわけ、マニアの間では敏感です。

一般の人には、ダブルリフトという概念がありません。 これを種明しして、そういったことが可能なんだと分かった時から、カードを取り上げるすべての動作があやしく思えてしまいます。真剣にマジックと関わろうとしている人意外は、一般の人には種明しすべきものではないのです。
そういった意味では、クラシック・フォースも同じです。
あまりにも、マジシャンにとっての被害が大きすぎます。
これらをテレビで種明しするというのはもっての外です。

ところで、理想的なダブルリフトとはどういったものでしょうか。
これの答えになることが、加藤英夫氏の本の中で書かれています。本人の一枚のカードを取り上げて返す動作を観察して、同じ動作に近づけることとあります。特に、私が着にかけているのが、最初の2枚を押し出す部分です。2枚目の下にブレークをつくってダブルリフトの準備をすること(GET READY)をしてから行うのもよいのですが、その操作のために違和感を生じることもあります。ダイレクトに行うことをスムーズにできれば言う事ないのですが、Jashua Jay はそれもうまく解決していました。

実を言えば、この親指の当て方は10数年前より私も「この方がより自然だ」と思って練習していた方法と同じでした。ただ私の場合は上手く出来ないことも多く、実践で使うにはまだまだといった状況でした。それをいとも楽々とこなしていたので、特に感激したわけです。バーノンの方法は良く考えられており、最初に指導する方法としては最適だと重いますが、まだ改良の余地も残っているといえるわけです。以前に聞いた話では、バーノンの書物に発表されているダブルリフトは、だれでも割合楽に行えるように工夫された方法であり、実践で使ってきた方法とは違うはずだということでした。それが真実かどうかは私にはまだ確証はつかめていませんが、その可能性はあると思っています。もっと自然に見える方法を行っていたと思われます。 Vernon Chronicles第1巻に書かれているダブル・ディールをダブルリフトに使っていたかもしれません。しかし、それだけでなく、Joshua Jay が実践しており、私も考え付いた方法をバーノンがもっと昔に考え付いていないわけがないと思ってしまいました。いや、もっとすばらしい方法で実践していたかもしれません。

あるとき、RRMCのメンバーの一人が面白いことに気がつきました。
少し離れた位置にある鏡を見ながら、右へ押し出した、その後デック上へ表向けるダブルリフトを行っていると、ひっくり返す動作がよくわからなくて、急に、デック上に表向いたカードが見えるというのです。違和感を感じてしまいます。サロンのように少し離れてみせる場合、それに応じた自然な取り上げ方や示し方があるはずです。デック上だけの小さい動きではなく、一定の枠を意識した空間内での動きが必要ごなってきそうです。それだけでなく、Lee Asher のように、テクニカルな面を前面に出して、少し変わった現象のマジックを見せられると彼が行ったアクロバット風のダブル・ターンノーバーも、あまり奇異に感じなくなります。そして、あそこまで徹底した空中高くへのはじき上げを見せられると、1枚か2枚かという考えすら吹き飛ばしてくれます。

ただこれは、彼が行うから意味があるのであって、我々はひまつぶしとして楽しく練習する程度にして、実践では使うべきではないと思っています。以上のことから、結局、そのときの状況や演技者の個性にあわせて各種のダブルリフトがあってもよいのではないかと思ってしまいました。

私は10年程前に、その当時までに出版された書籍でのダブルリフトを、出来るだけ書き出して分類したことがありました。GET READYを必要とするもの、ダイレクトに行うもの、自然な操作に近いもの、派手なもの、特殊なもの、そして、関連した付属テクニックについてです。また、デックに指をあてる部分での分類も行いました。しかし、最近では、そのことよりも歴史的経過のことの方が面白味を感じるようになってきました。

これらの調査は、これからというところですが、今のところわかっていることは、ダブルリフトという技法名として使われ出したのは、他の技法に比べて新しいということです。1920年代頃までは、そういった技法名が見当たりません(もし、あったらすみません)。1716年のリチャード・ニーブの本にはダブルリフトと同様の操作を行ったマジックの解説があるそうです。その後、1920年代まで、数冊の本の中でつかわれていますが、2枚を1枚として取り上げるとあっても、どのように取り上げるのかの詳細がありません。

1920年代に、ダイ・バーノン、アーサー・フィレイ、クリフ・グリーン等が大きな貢献をはたしたようですが、 これも具体的な内容は調査中です。ダブルリフトという技法名として使われ始めたのは、1920年代か1930年代でしょうか。さらに、2枚の取り上げ方や、ひっくり返し方の詳細が最初に書かれた文献といえば、何になるのでしょうか。こういったことを、これからコツコツと調べてゆこうと思っています。

ダブルリフトにかかわらず、このようなことを調べてゆくと1920年代のニューヨークでのダイ・バーノンの怪物ぶりが、じわじわと伝わってきます。ダイ・バーノンはニューヨークの裏側で多くのマジシャンをあらゆる方法で煙にまいてきました。彼を究極の研究課題とするならば、ダブルリフトはその第一歩と言えるかもしれません。

なお、日本での「タテにひっくり返す方法」に関しては、報告量が多くなりますので割愛します。最後にダブルリフト全体に関しては、より詳しい調査結果や分類内容、興味ある話題などをまとめて、いつの日にかは発表したいと思っています。


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