『花王名人劇場』がオン・エアーされてから早10年目を迎えることになる。
「安手のドラマや視聴率かせぎのきめの粗い番組にテレビがうつつをぬかしていては、誰が大衆芸能を育てるのだろうか-- 数ある大衆芸能のそれぞれのジャンルの中で鍛えぬかれた芸を提供したい」という極めて素朴ながら大変難しい注文を引受けて頂いた名プロデューサー澤田隆治さんとそのスタッフの方々、電通香川局の方々にとってはこの10年間はまさに苦闘の10年ではなかったかと思われる。
いわば使い捨ての大量消費的芸能が幅をきかせているテレビ界にあって、「名人」といういかめしいタイトルをつけて「いつまでも残る名人芸」と「新しい芸」を求めることは至難のわざというべきことで、その間けっして時世に迎合して質を落とすことなく、時には漫才ブームの火付け役になったり、数多くの新しい才能を世に出したりしながら番組として着実に高い視聴率を維持し、根強い大衆の支持を得ながらしかも『花王名人劇場』の格調高いコンセプトを守り続けてきたことは、広告主にとっては誠に嬉しく有り難いことであった。
この10年の間に世界の中で日本の地位が飛躍的に向上し、国際的に日本が大国として世界の人々に文化的・経済的に主体的な貢献をすることが求められ、また日本人自らの生活も質の高いゆたかさを求めるようになった。「質の時代・創造の時代」に入ったといえる。
日本の大衆芸能をめぐる環境は決して楽観出来るような状況ではないが、『花王名人劇場』が真価を発揮する10年になるのではないかと心から期待しています。 『花王名人劇場』に関係された多くの方々に心から感謝申し上げると同時に、今後の発展のためのより以上の御支援をお願いしたい。