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コラム



第84回 ボブ・ハマー原理の表裏ごちゃまぜとCATO(2018.4.19up)




はじめに

1981年にダイ・バーノンと共にスティーブ・フリーマンが来日されました。この時にフリーマンが演じられたセルフワーキングマジックにより、私は大きな影響を受けることになります。それまで好きではなかったセルフワーキングが面白いと思えるようになったからです。セットしていない20枚ほどのカードを表裏ごちゃまぜしたのに、スプレッドするとロイヤルストレートフラッシュだけが表向く現象です。これは1940年代に登場するボブ・ハマー原理を発展させた方法です。1990年代にはマーカー・テンドー氏や加藤英夫氏だけでなく、私もフリーマンの方法に関連した作品を発表することになります。その後、Mr マリック氏もTV番組で、さらに素晴らしい改案を披露されています。意外であったのは、米国では最近まで、このフリーマンの方法が一部のマニアにしか知られていなかったことです。

さらに、1987年には私も魅了されるセルフワーキングが発表されました。「カードマジック入門事典」に解説された「魔法の絨毯」(フライングカーペット)です。これもボブ・ハマーによる同じ原理が使われています。しかし、カードをカーペット状に広げて折りたたむ新しい考えが導入されていました。意外であったのは、これはヨーロッパで考案された可能性が高いのですが、最初に文献へ登場するのが日本であったことです。その後、ドイツ語や米国の文献でも解説されるようになります。この現象に私も虜になり、意外な結末になるように手を加えました。 そして、2000年5月のGenii誌に発表された素晴らしい作品が藤原邦恭氏のオートマチックエーストライアンフです。後でも報告しますが、私にとってはあり得ないと思ってしまった作品です。これもボブ・ハマー原理の進化系で、シャフルができるだけでなく、見事な発想で4Aだけを表向きにしていました。

原案や初期のボブ・ハマー原理の作品は、テーブルの下や背中へ回して行う操作が多く、好きにはなれませんでした。しかし、その後はテーブル上でオープンに行う作品が中心となります。また、ボブ・ハマー原理で有名な操作が、カットしてトップの2枚をひっくり返すCATO(Cut And Toun Over)があります。ところが、皮肉なことに私が大きく影響を受けたそれぞれの作品ではCATOを使わないものばかりでした。

ところで、上記のボブ・ハマー原理とは、1940年代発行の “Face Up Face Down Mysteries” の冊子に発表された原理が元になっています。混乱を起こしやすいのが、別のよく似た原理が二つもあることです。これも上記と同様でボブ・ハマーが1940年代の別の小冊子 “Half-A-Dozen Hummers” に発表された二つの原理です。「マジック・セパレーション」と「フェイスアップ・プレディクション」の作品名で解説されています。「マジック・セパレーション」はガードナーの「数学マジック」や松山光伸著「セルフワーキングマジック事典」にも解説されています。表向きと裏向きのパケットを混ぜ合わせた後二つの山に分けると、二つの山ともに表向きカードが同数になっている現象です。ところが、もう一つの「フェイスアップ・プレディクション」はほとんど知られていませんでした。1980年代に大きく進化し、1990年代になって強烈なインパクトのある作品として広く知られるようになります。その有名になった作品がアリ・ボンゴの「ごちゃまぜ予言」です。これも松山氏の本に解説されています。

いずれの原案作品も悪くないのですが、それ以上に発展系の作品がはるかに素晴らしいものになっています。原案者のボブ・ハマーだけでなく、大きく進化させた改案者の功績も大いにたたえるべきであると思います。今回はボブ・ハマーの表裏を混ぜ合わせる三つの原理の中で、印象的な進化のあった二つの原理を中心に取り上げることにしました。「マジック・セパレーション」に関しては、今回は特に触れないことにしました。

最初のボブ・ハマーの4作品とCATO

初期の作品にはCATOが使われていたためか、CATOがボブ・ハマー原理と思われがちです。CATOはボブ・ハマー原理を効果的に行うための一つの操作にすぎません。ただし、裏表を混ぜつつ原理をスムーズに進行させる重要な役割を持っていることは間違いありません。初めの頃はCATOの名前がなく、1974年にCharles HudsonによりCATTOの名前がつけられました。カットしてトップの2枚をひっくり返すのでCut And Turn Two Overの頭文字が使われています。1979年からは、2枚に限らず偶数枚をひっくり返すこともあることからTwoを省いてCATOに変更されています。

最初に発行の “Face Up Face Down Mysteries” の冊子にはボブ・ハマー自身が四つの現象を解説されています。この冊子に発行年が書かれていなかったためか、その後の原案発表年の記載には統一性がありません。1940年、41年、42年、46年と書かれていました。しかし、最も多かったのは1940年代との記載です。最近ではGeniiのMagicpediaの記載が1946年となっているためか、46年も多くなっています。しかし、これが正しいのか私にはまだ分かりません。

ボブ・ハマー作品の第1は、客の背中で18枚をCATOさせて予言していた9枚が表向く現象で、第2作品は16枚を客の背中でCATOさせると、全てが同じ向きになります。第3は客の背中でCATOさせた後、トップカードを覚えさせますが、そのカードだけが表向く現象です。第4は笑顔のイラストのカードを使い、2枚の裏に印をつけて操作すると、その2枚だけが笑顔のままで残りが怒った顔になります。2枚だけが怒った顔になる場合もあります。第4現象だけはCATOを使っていません。

上記の四つの方法の報告には書きませんでしたが、最後には全て1枚ずつ交互にひっくり返す操作が行われます。それにより各種の現象が起こるのがボブ・ハマー原理作品の特徴点です。1枚ずつ交互のひっくり返す方法は様々で、最初の4作品でも違った方法が使われていました。1枚ずつ右手に取りながら行ったり、リバースフェロウして引き抜いたパケットをまとめてひっくり返して他方に加えたり、二つの指間に二つの山に配り分けて一方をひっくり返して他方に重ねる方法もあります。ハマーの原案の4作品全てが、この操作を演者の背中に回して行なっていました。その後、この操作を含めて全てをテーブル上でオープンに行われるようになります。なお、私の好きなローリングや折りたたむことによるひっくり返す方法は、かなり後になってからです。

ところで、ボブ・ハマー原理の原案の4作品が広く知られるようになるのは、1956年のマーチン・ガードナー著 “Mathematics Magic and Mystery” の本に掲載されたことによると考えられます。こちらでは、背中に回すのではなく、テーブルの下でカードを操作する方法に変更されていました。この本は日本では1959年に「数学マジック」として発行されています。

現象と方法の進化

最初の改案が1948年に発表されますが、その現象が素晴らしく、こちらの方が原案より話題になったのではないかと思われます。Oscar WeigleのColor Schemeで、表裏バラバラに混ぜたのに、表向きカードが赤マークであれば裏向きが黒に分離する現象です。1948年のHugard’s Magic Monthly誌のマーチン・ガードナーのコーナーで発表され、49年には本人の改案が単独の冊子で販売され、50年には有名なScarne on Card Tricksにも掲載されます。これらによりこの作品がよく知られるようになります。現象の新しさだけでなく、方法においても新しい発想が加えられています。48年の解説時には、オーバーハンドシャフルで奇数枚ずつ取ると、赤黒交互関係が保たれることが解説されています。この発想は素晴らしいのに、その後、目立った活用がされていないのが残念です。例えば、オープンに表裏交互にした場合にCATOをしても、それ以上バラバラに混ぜた印象を与えることができません。それよりも、少しずらした3枚をテーブルへ置き、その上へ3枚や1枚をずらしながら重ねると、表裏がよく混ざったように見えます。もちろん、表裏交互が保たれています。また、49年の記載では、ダウンアンダーを半分の枚数まで行うことにより二つに分離して、一方をひっくり返す方法が用いられていました。

その後はチャールズ・ハドソンが次々と作品を発表することになります。IBMの機関誌 Linking Ring誌のカードコーナーが彼の担当となり、1966年から1980年までボブ・ハマー原理作品の改案を多数紹介されました。その中で私が興味を持った方法は、1967年に解説された4枚だけで行う「ベビーハマー」です。ただし、最初の「ベビーハマー」は4枚だけの使用であるのに覚えにくい方法でした。エルムズリーカウントが使われているだけでなく、最後の操作も問題を感じていました。その後シンプルに改善された方法がいくつか発表されています。その中でも1979年1月号に解説されたTom Cravenのローリングして終わる方法は素晴らしい改案です。1枚をひっくり返した後、2枚3枚とひっくり返し、4枚目は全体をひっくり返しています。奇数枚目と偶数枚目とが分離して一方がひっくり返ることになります。分かりやすくて面白い方法です。

その後も新しい現象がいくつか登場しますが、ビジュアルでインパクトがあるのは4Aや絵札やロイヤルストレートフラッシュが表向く現象です。この現象と新しい方法により、私もこの原理に興味を持つようになりました。このことについては次の画期的な3作品で報告します。ところで、それら以外で素晴らしさを感じたのがテンヨー社の「マジカルバーガー」です。2009年にテンヨー社の鈴木徹氏と熊澤隆行氏がプラスワンキャンペーン商品として制作されたものです。ハンバーグの素材が描かれた円形のカードを使う楽しい演出と、洗練されたスマートな方法が使われていました。新しい方向性に感心させられた作品です。

なお、1枚ずつ交互のひっくり返しに関しては、1987年の「魔法のじゅうたん」では、広げたカードを縦や横に折りたたむ方式が使われています。自由に折りたたみつつ、隣り合ったカードをひっくり返していることになります。そして、スマートで頭の良さを感じるのが2000年の藤原邦恭氏のオートマチックエーストライアンフで使用された方法です。四つのパケットに配り分けて、ローリングしながら一つのパケットに重ねていました。これも隣のカードをひっくり返すことになります。

画期的な3作品 パート1

1981年にバーノンと共に来日されたフリーマンが演じられたのが1番目の画期的な方法です。20枚ほどのカードを客にシャフルさせた後、オープンに表裏を混ぜつつセットしていました。このような操作はこれまでになかった発想です。そして、最後にはロイヤルストレートフラッシュだけが表向いていました。彼の方法ではCATOを使っていません。その代わりに、偶数枚ずつ配る中で客の意思で時々ひっくり返していました。これも新しい考え方です。残念ながら、フリーマン自身は解説を発表していなかったようです。日本では1990年代にこの方法に関連した4作品が発表され、よく知られる現象となります。

ヨーロッパのロベルト・ジョビは1988年にドイツ語のセルフワーキングの本に、ラリー・ジェニングスの方法を解説されています。1986年にマジックキャッスルを訪れた時に、ジェニングスより見せられた方法とのことです。10枚だけで行なっていますが、操作はフリーマンの方法とほぼ同じです。この本が英訳版「カードカレッジ・ライト」として発行されるのは2006年のことです。原案者はボブ・ハマーと記載されていますが、フリーマンの名前が見当たりません。このような大幅な改良が、フリーマンの考案であることをジョビには伝わっていなかったようです。

2004年発行のジョン・バノンの本が、2013年に日本語訳され「ジョン・バノンのカードマジック」として発行されました。その中の “Degrees of Freedom” は基本的にフリーマンの方法の改案です。最後のリバースフェロウする部分を、カーペット状に広げて折りたたませる方法に変えただけの印象を受けます。全てのロイヤルストレートフラッシュの20枚を取り出して演じていますので、かなり演じやすくなっています。しかし、フリーマンの場合は、突然にロイヤルストレートフラッシュが出現するインパクトがあったのですが、それが弱くなった印象が残念です。

そして、フリーマンの作品としてハッキリ解説されたのは2012年のパーシ・ダイアコニス著の本で、日本語版が2013年に「数学で織りなすカードマジックのからくり」として発行されています。これら海外の文献での共通点は、演者によるセットしながら表裏を混ぜる操作を2枚ずつ取りながらテーブルへ配っていた点です。2枚ともターゲットにすべきカードの場合と、2枚とも違う場合、そして、1枚だけがターゲットカードの場合で2枚の重ね方が変わります。ところが、日本に伝わっていた方法は2枚ずつ取っていません。単に表裏交互の順にする中でターゲットカードだけ逆向きにする考え方です。日本では分かりやすい考え方で伝わっていただけなのか、それとも、フリーマンが帰国後に改案されたのでしょうか。

画期的な3作品 パート2

2番目の画期的な現象が、1987年発行の「カードマジック入門事典」に掲載された「魔法の絨毯」です。カードを横4枚、縦4枚の縦長の長方形のカーペット状に並べられ、表向けられた数枚のカードにより大きなKの形を表示しています。これを縦横自由に折りたたんで一つの山にしてスプレッドすると、4枚のKだけが表向きで出現する現象です。1991年のApocalypse誌や1992年のドイツ語版ロベルト・ジョビの本でも同じ現象が発表されていました。そこではフランスのRichard Vollmerの方法とされています。Vollmer氏によりますと、元になる作品を友人から見せられて今回のような演出やセリフを加えたそうです。残念ながら、友人も誰かから見せられたようで、どこで誰からであったかは覚えていなかったそうです。結局、大きなKのマークが表示されて4Kが表向く演出の考案者を、Vollmerとして決定してよいのかが分かりませんでした。そうであれば、1987年以前には既に考案されていたことになります。

この折りたたむ方法の元を調べますと、1917年の英国のHenry Dudeneyの “Amusements in Mathematics” の本となるようです。モザイク模様やパッチワークテーマのパズルがあるようです。また、1926年の「モダンパズル」の本で、Dudeneyは切手のシートを使ったパズルを発表しており、それらがマーチン・ガードナーに影響を与えたとも言われています。ガードナーは1971年のThe Pallbearers Review Vol.6 No.9に「パラドックスペーパー」のタイトルで発表し、紙を16に折りたたんでハサミで切ることでマジックに応用しました。この解説の最後に編集者のカール・ファルブスが、16枚のカードを使って折りたたむ考え方も述べていました。

このVollmerの後、折りたたむ現象がいろいろと発表されるようになります。しかし、広げた状態がKを表示するようなユニークな現象がなかったように思われます。私が魅力を感じたのがその点でしたので、1993年の「スーパーセルフワーキング」の本ではダブルクライマックスになる現象を加えて解説しました。カードをカーペット状に広げた状態では4枚のKだけが表向きで、これを折りたたんで広げなおすと表向きのカードにより大きなKのマークが表示されます。これを客の指示により再度折りたたんで広げると、今度は4枚のQだけが表向きで現れます。このQはKの奥様か、それとも別の女性か?といった現象です。

その後の折りたたみ現象の改案の中では、2000年のMAGIC誌2月号のレナート・グリーンの方法が気に入りました。シンプルな方法で、突然に4Aだけが表向きに現れた印象となります。覚えやすく演じやすい点が好きです。2004年のジョン・バノンの本では、上記の “Degrees of Freedom” を含めて4作品の折りたたみ現象が解説されています。それぞれが参考になります。

画期的な3作品 パート3

私が最も衝撃を受けたのが2000年のGenii誌5月号の藤原邦恭氏の「オートマチックエーストライアンフ」です。最後のローリングしながら一つのパケットにする発想も素晴らしいのですが、私が驚いたのは最初の部分です。それには理由がありました。スティーブ・フリーマンの作品の影響を受けた私は、違った方法で行うことを考えていました。そして、最初の表裏を混ぜながらセットする部分を大幅に変えて「スーパーセルフワーキング」の本に解説しました。5枚のフルハウスを表向きに並べて、その上へ3枚ずつ裏向きのカードを加えて演じていました。これが最後にはロイヤルストレートフラッシュの5枚だけが表向きとなって現れる現象です。この弱点は客にシャフルさせることができないことでした。フリーマンの方法の素晴らしさの一つが、客に自由にシャフルさせてから行える点です。それができないのが心残りでした。ところが、藤原氏の方法では同じようなカードの配置であるのに、その後、客にシャフルさせていたので驚いたわけです。後で冷静になって考えると、私と藤原氏とでは最初の状態がよく似ていても、状況が全く違っており、シャフルが可能なことが分かりました。しかし、解説を読んだ時にはシャフルしていることの衝撃が大きくて、冷静さを失っていたようです。

この作品はオートマチックで出来るのがいちばんの特徴で、それが利点でもあり欠点ともなっています。電話やラジオを通して演じることができる利点がありますが、覚えやすいために直ぐに習得ができ、秘密を知られてしまう問題があります。しかし、現象のインパクトはかなりのもので、話題性のある作品となりました。海外では2003年のGenii誌6月号にハリー・ロレインの “Really!” が解説されています。最初を少し変更したり、CATOなどのいくつかの混ぜる操作を加えています。新しい要素がなく、現象が起こるまでかなりの時間がかかっている点に問題を感じます。2009年のニック・トロストの本では「ロールオーバーエーセス」のタイトルで改案を発表されています。最初に4Aの存在を見せずに行っている点は改良とも言えます。しかし、秘かに4Aをひっくり返したり、天海リボルブやリフルシャフルを行うなど、本来のシンプルでオートマチックであった良さを完全に消失させているのが残念です。私も部分的に方法を変えて、マジックボックスの演出を加えて行っています。

別のボブ・ハマー原理の現象の進化

1994年にFISMが横浜で開催されました。その時にレクチャーされた中で、最も話題になったのがアリ・ボンゴの「ごちゃまぜ予言」です。原案はボブ・ハマーの「フェイスアップ・プレディクション」ですが、演出も方法も大きく進化しています。元になる作品が1980年のサイモン・アロンソンの “Shuffle Bored” と書かれている場合もあります。アロンソンは方法を一定度前進させましたが、現象は表向きになったカードの枚数を当てるだけです。その後、さらに方法が改良されただけでなく、現象が大きく進化しています。有名になるのは英国のアリ・ボンゴの方法です。

二つの山に分けて一方の山から分割させたカードをひっくり返して他方の山とシャフルし、その山から分割したカードをひっくり返して元の山とシャフルする方法です。これを何度も繰り返すことができます。予言として数回折りたたまれた紙を使用し、紙を開くたびに次々と予言が書かれており当たっていることが分かります。しかし、最後の予言が当たっておらず、意外な結末となります。1996年の米国のJon Racherbaumer編集 “MO” No.8に作者名不明としてアリ・ボンゴの作品と同様な内容が掲載されます。Jon Racherbaumerに見せたマジシャンが誰の作品か知らなかったようです。それを読んだAldo Colombiniが、自分の作品が元になっているのに、そのことが書かれていないことに不満を感じて、同年に小冊子を発行されています。”Pre Deck Ability” のタイトルで彼の方法を解説すると同時に、1980年の “Shuffle Bored” の数年後には考案して多くの友人に見せたことも報告されていました。当時の彼はイタリアに住んでいました。方法や予言の最後の結末の演出も基本的に同じです。大きな違いはメモ用紙に3番目までの予言を書いて、切り取って3人の客に持たせていた点です。意外な結末の予言はメモパッドに残した状態にしていました。

ところで、アリ・ボンゴの方法は氏の了解を得て掲載された松山光伸著「セルフワーキングマジック事典」によりますと、フランスのリュドウ(Ludow)が演じていたものとのことです。最後の意外な結末はアリ・ボンゴ氏が加えたものと報告されていました。さらに調べて分かったことは、フランスのRichard Vollmerが1986年のフランス語の本に、アロンソンの “Shuffle Bored” を改案した方法を発表されていました。この作品が1988年のロベルト・ジョビ著のドイツ語のセルフワーキングの本に掲載され、2006年には「カードカレッジ・ライト」のタイトルで英語版が発行されています。その本のVollmerの方法では、二つの山に分割して、それぞれからカットして持ち上げたカードをひっくり返して、他方の山に加えています。そして、それぞれをシャフルしています。予言は折りたたんだ紙を使っていますが、予言が二つだけです。最初の予言が裏向いたカードの枚数で、第2予言がその裏向きカードの赤と黒のカードの枚数が書かれています。意外な結末がありません。フランスのVollmerの方法をフランスのLudowが演じられていた可能性も考えられます。Vollmer氏もColombini氏も改案や創作を次々に発表されている人物です。 1980年の“Shuffle Bored” の作品の刺激を受けて、数年後に同様な改案を考えられていたとしても不思議ではありません。また、アリ・ボンゴ氏も独自で最後の意外な結末を考えられたのだと思います。1996年のColombini著の冊子では、特に最後の結末の演出の独自性を主張されているようでした。私が不思議に思うのは、Colombiniは次々と著書や雑誌に作品を発表されていたのに、なぜこの作品に限ってはもっと早く発表されなかったのかが疑問です。

原案からアロンソンのShuffle Boredまで

ボブ・ハマーの原案は “Half-A-Dozen Hummers” に解説された「フェイスアップ・プレディクション」です。意外であったのはシャフルがなかった点です。ただし、最初だけは客にシャフルさせて開始しています。セットやキーカードも使っていない点が優れています。デックから10数枚ずつの二つのパケットを分離させ、二つともに同数枚ずつ表向けてトップに置かせます。一つのパケットをデックの上へ戻させ、それを演者が背中へ回して少しの操作をした後、テーブル上の残りのパケットの上へ乗せています。デックの中の表向いている枚数と予言の数が一致する現象です。最後の段階でシャフルする方がよいと思うのですが、解説にはシャフルする記載がありません。

1980年のサイモン・アロンソンの “Shuffle Bored” により大幅な改善が見られます。それまでに発表されていた数作品では、必ず二つのパケット共に同数枚のカードを表向けていました。マルローの方法も同数枚を表向けていたので、デビッド・ソロモンがアロンソンにその問題点を提供したのがきっかけです。その解決方法として完成させたのが “Shuffle Bored” です。しかし、悪くなった部分もあります。中央の13枚をAからKまで順にセットしている点です。シャフルできる部分が限定されます。また、これにより、最後の段階での2分割時にカットした枚数を知ることができるのですが、予言の現象や客が指定した枚数を表向ける現象ではなくなりました。最後の段階で表向きカードの枚数を言い当てるのが基本現象となりました。 Shuffle Boredではデックを3分割させて、トップとボトムパケットから好きなだけ持ち上げてひっくり返し、他方のパケットの上へ置くことになります。この二つのパケットをそれぞれシャフルさせて、これを数回繰り返しています。そして、三つのパケットを元の重ね方で一つの山に戻しています。つまり、13枚がセットされた中央パケットは何もしないで置かれていただけとなります。この後は上半分をカットして表向け、下半分とリフルシャフルするのですが、その時にセットした13枚が役割を果たすことになります。この本にはいくつかの改案も解説されているのですが、いずれも中央のセットは残したままです。この考えを外せなかったことが、それ以上の進展を妨げているようでした。中央のセットをなくし、予言ができるように改善したのがコロンビニやVollmerになるわけです。

ボブ・ハマーの原案とShuffle Boredの間には重要な作品があります。1974年のLinking Ring誌1月号のCharles Hudsonの “Reversification” です。リフルシャフルを中心とした予言マジックとなっています。セット不要で客にシャフルさせることができますが、その後、26枚目をキーカードとして覚えることになります。3分割させて、トップとボトムのパケットは同じ枚数だけ表向けてトップへ置かせる必要があります。これらはシャフルしません。そして、元の一つの山に戻して、キーカードでカットして、トップ半分を表向きにしてボトム半分とリフルシャフルしています。これで半分の26枚が表向きになります。その後、ザローシャフルとリフルシャフルが1回ずつ行われますが、両方ともカットした上半分はひっくり返してシャフルしています。また、ザローシャフル時に予言が23であれば3枚の枚数調整をしています。この解説の最後には、デック中央に10枚をセットして、カットした枚数を知る方法が書き加えられていますが、この考えもShuffle Boredに受け継がれていると言えます。

この作品が発表された数ヶ月後のLinking Ring誌にマルローの改案が発表されます。ハンドリングを少し変えたことと、リフルシャフルの回数をかなり増やしている違いがあるだけです。しかし、これがマルロー派のソロモンやアロンソンへの課題提起となり、Shuffle Boredへと繋がっています。なお、ハマーの原案発表後からHudsonまで改案がなかったわけではありません。1965年のハリー・ロレインによる “My Favorite Card Tricks” に興味深い改案が解説されています。ハマーの原案に近い状態で進行し、最後に三つのパケットを重ねて、数回のリフルシャフルを行なっています。これにより客の指定枚数が裏向くのですが、これらを表向けると全てが赤いカードのクライマックスとなります。

アリ・ボンゴとコロンビニ以降の作品

ごちゃまぜ予言の意外なクライマックスが素晴らしく、それ以上の改案はないと思っていました。ところが、面白い2作品が発表されることになります。いずれも日本の作品です。一つは2005年発行の加藤英夫著「教科書カーディシャン大学コース」に解説された「3つの予言」です。意外な結末として最後には4Aが登場します。2番目は2017年に商品化された「ふじいあきらの予言の書」です。第1の予言や最後の予言がコミカルで実践的です。さらに、方法も改良されていました。

おわりに

数年前に藤原氏の作品を改案してマジック仲間に見せたことがありました。その時に「ごちゃごちゃしている」と指摘されました。表裏を混ぜた後、さらに、もっと混ぜているように見せる新しい方法を加えて演じたのが裏目に出たようです。また、私が所属していますマジッククラブの例会で、メンバーの一人が新しい考えの混ぜ方を多数取り入れて演じられました。個々の発想が素晴らしいのですが、多くのメンバーより「ごちゃごちゃしている」との指摘がありました。

今回、多数の作品や発展経過を調べたことにより、いろいろと新しい発見がありました。特にシンプルな方法の作品に素晴らしさを感じました。それらは新しい発想を中心としたシンプルな作品でした。そして、原案者のボブ・ハマーの素晴らしさには、あらためて感心させられました。また、Linking Ring誌に長期にわたり発表を続けられたCharles Hudsonにより、その後の発展に大きく貢献されていたことも分かりました。

今回のコラムで取り上げた作品は私の印象に残ったものが中心で、これら以外に多数の現象や方法があります。私が調べた範囲でわかった作品を参考文献一覧として報告させていただきます。最近ではDVDやネットでの発表が多くなっていますが、それらについては今回は含めませんでした。なお、カードを広げて折りたたむ作品については、年数の後に「・」をつけています。


【ボブ・ハマーの原理 参考文献】

1940’s Bob Hummer Face Up Face Down Mysteries
     Hummer’s 18 Card Mystery 半分逆向きに
     Hummer’s Swindle 全て同じ向きに
     The Lonely Card 客のカードのみ逆向く
     Little Moonies 笑った顔と怒った顔のカードを使用
1948 Oscar Weigle Hugard’s Magic Monthly Vol.6 No.6
     作品名がなく、マーチン・ガードナーが解説
     20枚使用で色が異なったカードのみ表向く
1949 Oscar Weigle Color Scheme 単独の冊子として
     上記の改案を含む
     1974年4月のThe Pallbearers Review Vol.9に再録
1950 John Scarne Scarne on Card Tricks
     Bob Hummer The Stubborn Card The Lonely Cardと同じ
     Oscar Weigle Color Scheme
1956 Martin Gardner Mathematics Magic and Mystery
     Hummer’s Reversal Mystery
       原案の二つの方法とMarloとWeigleの改案も記載
     The Little Moonies
     日本語訳版「数学マジック」が1959年と1999年に発行
1957 Ed Marlo Hummer-Marlo Ibidem No.12
     10枚使用のThe Lonely Cardの改案 フェロウを使用
1966 Charles Hudson Hudson’s Hummer Linking Ring 12月号
     21枚に加えた客のカードだけが逆向きに
1967 Charles Hudson Linking Ring 12月号
      Baby Hummer 4Aのみ使用 エルムズリーカウント使用
      Hummerdinger  
1968 Charles Hudson  Linking Ring 1月号
       Facing The Colors
       Facing The Queens
1971・Martin Gardner Paradox Papers 紙を折りたたんで切る
     The Pallbearers Review Vol.6 No.9 7月号
1972 Les Nixon Ultra Ultra Linking Ring 5月号
     4Aのみ逆向きとなって出現
1972 Charles Hudson Hummer-4 Epilogue No.16 12月号
1973 Robert Neale Number Hummer
     The Pallbearers Review Vol.8 No.4 2月号
1974 Charles Hudson ESP Tester     Linking Ring 4月号
1974 Les Nixon Simple Stranger Linking Ring 5月号
     Hudsonが初めてCATTOの用語を使用
1975 Charles Hudson Six-Card Hummer Linking Ring 7月号
1976 Charles Hudson Eight-Card Hummer Linking Ring 1月号
1979 Charles Hudson Hummer Principle Linking Ring 1月号
     HudsonがCATOの用語を使用
     Tom Cravenのベビーハマーの最後の操作の新案
1979 Charles Hudson Hummer Principle 2 Linking Ring 3月号
     ESPoker 2
     ESPoker 3
1979 Charles Hudson Hummer Principle 3 Linking Ring 4月号
     Revelation in Riverse
1979 Charles Hudson Hummer Principle 4 Linking Ring 6月号
     Ho-Hummer
1979 Charles Hudson Hummer Principle 5 Linking Ring 7月号
     Casting a Hummer Spell-1
1979 Charles Hudson Hummer Principle 6 Linking Ring 8月号
     Casting a Hummer Spell (con)
1979 Charles Hudson Hummer Principle 7 Linking Ring 11月号
     The GHG Caper
1980 Roy Walton Walton’s Hummer Linking Ring 6月号
1980 Bob Hummer Bob Hummer’s Collected Secrets
     Karl Fulves発行によるボブ・ハマーの作品集
1981 11月 スティーブ・フリーマン来日時にロイヤル・ハマーを実演
     日本の一部のマニアの間で知られるようになる
     海外の文献での正式な発表は2012年のダイアコニスの本
1982 Charles Hudson Sum Hummer Best of Friends
1984 Karl Fulves Odd Color Out More Self-Working Card Tricks
1987・作者名なし Flying Carpet 16枚のカードで折りたたみ現象
     高木重朗&麦谷眞理共著カードマジック入門事典
1988 Roberto Giobbi’s Card College Light (ドイツ語にて発行)
     2006年に英訳版が発行
      Royal Flush 1986年の米国のジェニングスより見せられた
      Fingertip Sensitivity
1989 Phil Goldstein Toddler Fifth
1991・Richard Vollmer Mr. Koenig’s Tapestry Apocalypse Vol.14 No.3
1992・Richard Vollmer Mr. King’s Tapestry
     Roberto Giobbi’s Card College Lighter(ドイツ語版)
     2008年 英訳版発行
1992 マーカー・テンドー 簡単なトライアンフ ザ・マジック Vol.11
1993 石田隆信 Super Self-Working
     セルフワーキング・ポーカー
     Qのお気にいり
  ・  王家のじゅうたん
1993 Jerry Mentzer Card File
     Charles Hudson Basic Hummer
     Persi Diaconis Beyond Hummer
     Gag Hummer     
1994 Roger A. Golde The Favorites Apocalypse Vol.17 No.2
1995・Racherbaumer & Duffie Jon Racherbaumer編集 MO No.7 
     The Spectator Works Harder to Triumph
1996 加藤英夫 ワン・ツー・スリー 第13号
     ベビー・ハマー  ボブ・ハマー
     ヤング・ハマー  加藤英夫
     オールド・ハマー 加藤英夫
     裏と表と赤と黒  加藤英夫
     ロイヤルストレート・リバース スティーブ・フリーマン 
1996 Peter Duffie Pasteboard Detection Apocalypse Vol.19 No.5
1997 Peter Duffie Still Scheming Effortless Card Magic 
1999 Jerry Mentzer Cunning Card Miracles
     Charles Hudson Basic Hummer
     Persi Diaconis Beyond Hummer
     Tom Craven Hummer-Odd Back
     Tom Craven Hummer Clean-up
     Doug Canning Canning’s Baby Hummer
1999 荒木一郎 裏表のシンフォニー ザ・マジック Vol.40
2000・Lennert Green Sweating Bullets MAGIC 2月号
     16枚をカーペット状に広げて4Aが表向くシンプルな方法
2000 Kuniyasu Fujiwara Automatic Ace Triumph Genii 5月号
2001 Karl Fulves New Self-Working Card Tricks
     Tomorrow’s Card 8枚使用
     Psychic Map ミルクビルド使用
2003 Aldo Colombini Prophetic Numbers Linking Ring 3月号
2003 Harry Lorayne Really! Genii 6月号
     藤原氏の方法の改案 混ぜる操作が多くなっている
2003 Peter Duffie & Robin Robertson Card Conspiracy Vol.1
     Thought Process
     CATO By Numbers Roy Walton
     CATO Gets Married
     CATO Gets Married Again
     Hummer Plays Poker
     Remote Control Poker
2004・John Bannon Dear Mr. Fantasy
     Degrees of Freedom
     Origami Poker
     Perfect Strangers
     The Works
2004 藤原邦恭 まぜまぜフォアエース トランプ・タイム Motto Mazeru
2005 Juan Tamariz Verbal Magic
     The Impossible in Your Hands
     Magic as Hermonic Chaos 
2007 Richard Vollmer Sum Hummer Explored Best of Friends 3 
2009 鈴木徹 熊澤隆行 マジカルバーガー
     テンヨー・プラスワンキャンペーン商品
2009 Nick Trost Subtle Card Creations Vol.2
     Roll-Over Aces
   ・  Another Roll-Over Aces
2009・Paul Gordon The Unplanned Card Book
     The Dudeney’s Principle Plus!
     Dudeney’s Baby Boy
2010 加藤英夫 Card Magic Library 第5巻
     エイティーンカードミステリー ボブ・ハマー
     スティルスキーミング ピーター・ダフィ
     1002番目のCATO 加藤英夫
     加藤のCATO    加藤英夫
2011 Nick Trost Subtle Card Creations Vol.3
  ・  Hummer’s Paradox
     Double CATO Revelation
  ・  Double CATO Revelation Another Version
     “Baby Hummer” Simplified
  ・  Quadraplex 
2012 Persi Diaconis and Ron Graham Magical Mathematics
     2013年に日本語版「数学で織りなすカードマジックのからくり」
     Charles Hudson Baby Hummer
     Steve Freeman Royal Hummer
年数?  Hiraki ボブ・ハマー風3作品 Sister Trial


【ボブ・ハマーの別の原理 ごちゃまぜの予言】

1940’s Bob Hummer Face Up Prediction Half-A-Dozen Hummers
1965 Harry Lorayne Hummer Addition My Favorite Card Tricks
1974 Charles Hudson Reversification   Linking Ring 1月号
1974 Edward Marlo But What About My Number? Linking Ring 7月号
1980 Simon Aronson Shuffle Bored Shuffle-Bored
1986 Richard Vollmer Topsy-torvy(フランス語)
     Anthologie des tours automatiques
1988 Richard Vollmer Monto Roberto Light(ドイツ語)
     2006年 Roberto Giobbi著 Card College Light(英訳版)
1990 Harry Lorayne The Equalizer The Trendsetters
1990 Jon Racherbaumer What About Hummer’s Number? Cardfixes
1994 Ali Bongo Lecture Notes に加えられた予言の用紙
1996 Anon(不明) Lollapalooza Prediction
     Jon Racherbaumer編集 MO No.8 内容はAli Bongoと同じ
1996 Aldo Colombini Pre Deck Ability(小冊子)
1999 松山光伸 セルフワーキング・マジック事典
     Ali Bongo ごちゃまぜ予言 (Ludow’s Card Trick)
2000 荒木一郎 成田山の大予言 カードマジック19の秘宝
2005 加藤英夫 3つの予言 教科書カーディシャン大学コース


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