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コラム



第46回 2010年 I.B.M. サンディエゴ大会報告(2010.7.29up)




はじめに

今年は7月6日より10日までの5日間、サンディエゴで開催されました。参加者数は700人は超えていたようです。サンディエゴはアメリカ西海岸のメキシコとの国境に接する町で、2002年にも開催されています。私は I.B.M.のサンディエゴ大会参加は3回目となります。1977年、2002年、そして、今年です。2002年と同じ大会会場で、ホテルのすぐ裏側にトロリー電車の駅があり、市街地へ出向くのに便利です。夜のステージショーは、市街地の劇場で上演されますので、参加者のほとんどがトロリーで移動します。このことも2002年と同じです。

2002年には記念すべきことがありました。数年に一度しか出ないステージコンテストのゴールドメダルを、日本の武藤桂子さんが獲得されたことです。2005年にはアーサー・トレースが獲得していますが、その後は獲得者がない状態が続いています。クロースアップのゴールドカップも2003年以来獲得者が出ていません。今年はどのような結果となったのでしょうか。まずはコンテスト全体の状況と受賞者の報告から始めることにします。

コンテスト全体の状況報告

ステージコンテストの予選は、大会2日目の朝8時から5時間かけて25名で競われました。この中から6名が選ばれて、大会4日目の夜の劇場での決勝戦に出場します。このファイナル6に選ばれるだけでもたいへん名誉なことです。今年もステージでのアジアの勢いは止まりません。6名の内5名が、東洋系の顔の出場者となりました。日本、韓国、中国、シンガポール、そして、台湾系アメリカ人です。なお、中国の一人だけがジュニアとしての出場です。

クロースアップコンテスト予選は、大会3日目の朝8時から5時間かけて26名で競われました。この中の6名が、大会4日目の朝の決勝戦に進めます。今年は6名ともアダルトから選ばれました。

全体のレベルは、ステージもクロースアップも特別に印象深い出場者がおりませんでした。しかし、その反面、ステージもクロースアップも10名の出場者は、誰が決勝戦の6名に選ばれてもおかしくない高いレベルの内容で競われました

ステージコンテスト受賞者報告

アダルト 1位  Jason Andrews(アメリカ)
     2位  Jeremy Pei(シンガポール)
ジュニア 1位  Yang Yang(中国)
     2位  Hanna Kikuchi(日本)
ゴールドメダル  該当者なし
ピープルチョイス賞  Jason Andrews(アメリカ)

クロースアップコンテスト受賞者報告

アダルト 1位  ベン・ジャクソン(アメリカ)
     2位  Johan Stahl(スエーデン)
ジュニア 1位  ジョン・オコーナー(アメリカ)
     2位  名前不明
ゴールドメダル  該当者なし
ピープルチョイス賞  Johan Stahl(スエーデン)

ステージコンテスト決勝戦の6名の演技

1位とピープルチョイスを獲得したジェイソン・アンドリュースは全体的にシンプルで地味な印象をうけます。ゾンビボールから始まり、四つ玉、カード、そして、ハトは一羽の出現と消失で終わっているからです。しかし、それぞれの演技に、少しの工夫が加えられています。最初のゾンビでは、何もない状態からゾンビボール用の布が出現し、この布からゾンビ用のボールも出現します。四つ玉の演技の最後では、指間に四つのボールがある状態で、両手を合わせて手をひっくり返すと、一瞬にして、4枚のカードが指先から突出した状態に変化します。これは見事です。カードの最後では、1枚だけジャンボカードを取り出し、これを4分割した後に復元させ、さらに、大きなカードシルクに変化させていた点は面白さがありました。ただし、これ以外の部分のゾンビ、カード、ボールの演技は平凡な内容です。そして、一羽のハトの出現と消失だけで終わっていたのでは、クライマックスとして弱い印象が残ってしまいました。

彼の場合、ハンサムでスタイルがよく、6人の決勝出場者の中で、唯一の西洋系の顔のアメリカ人です。そのことが、ピープルチョイスやゲスト審査員の好印象を与えたのではないかと、ひがみ目で見てしまいます。今回の決勝出場者のアダルトの5名は、誰が1位や2位になってもおかしくない状態でした。私としては、1位をなしにしてでも、5名共に2位をあげたいくらいでした。

2位のシンガポールのJeremy Peiは、炎のオープニングから、リング、剣、キャンドルをメリハリのあるパワフルな曲にぴったりと合わせた気持ちのよい演技でした。3本の剣による見事なジャグリングも披露されました。今回の大会まで、マジックキャスルに出演しており、この大会では、クロースアップコンテストにも出場して、決勝にも残っています。ステージ予選では、最初の炎の演技の後、照明が暗いままとなり、演技を中断して照明を要求して、やっと明るくなりました。しかし、このことが影響して、その後、アクシデントが連鎖状となり、マジックテーブルを倒すことまで起こり、演技がボロボロで悲惨な状態となりました。結局、彼の要求が通ったようで、予選の最後に再演が認められ、ミスのない演技が行われました。

彼の演技で問題を感じたのは、クライマックスの部分です。剣で指を傷つけた演出をして、その手に白いシルクを持ち、引き出すと赤いシルクに染まり、それを丸めて扇子であおぐと、赤い紙吹雪となって終わっていました。私には血しぶきが舞っているように見えて、気持ちのよい終わり方とは思えませんでした。

日本人としては、大阪の亜空亜シンさんだけが決勝戦へ進みました。I.B.M.大会では3回目の出場です。3年前に比べて各所に工夫が加えられグレードアップしており、クライマックスではコスチュームチェンジで盛り上げていました。I.B.M.大会の1週間前に開催された S.A.M.大会では、ステージコンテストで1位を獲得されています。メタル色のステッキ、カード、ボールの演技だけでなく、それぞれがメタルテープに変化したりします。また、多数のメタルテープが滝のように流れて落下したり、投げテープ状態の飛行が圧巻でした。ボールで新たに加えられた演技では、指間に3個まで増やし、これにシルクをかぶせると、このシルクが消失して、4個目のボールとして指間に挟まれます。この現象はビジュアルで、大きな拍手がわき起こりました。全ての演技が曲にピッタリと

合っており、気持ち良さを感じます。 問題に感じたのは、ジャンボカードによる1枚ずつのプロダクションです。種がばれないように工夫されているようですが、不運にも今回の決勝戦会場の審査員席は、ステージに接触するまでせまった座席の最前列となっていました。近くで下から見上げる状態となっており、パームが見えていたと想像しています。ネタがバレることは、失敗と同等に厳しい採点になってもしかたありません。予選以上にすばらしい演技をされていたのに、2位にも入賞出来なかったのは、それが原因かと思ってしまいました。

Andostは台湾系のアメリカ人で、最近のI.B.M.大会に数回出場しています。傘が付いたテーブルスタンド(電灯)を使った内容で、電球のプロダクションや照明灯の色の変化が中心です。前回までの彼の演技は、面白い発想があるのですが、全体的に地味で暗い印象がありました。ところが、今年は、後半から軽快な曲に合わせて、数個の照明灯とのコンビネーションが見事で、楽しく盛り上げてくれました。照明の演技以外では、カードの大きさの紙をカードのファン状に広げた後、一瞬で、広げられたA4サイズの紙に変化させたり、大きなテーブルスタンドの傘が、あっという間にB4サイズの平坦な板に変化するのも、気持ちよく感じてしまいました。もちろん、大きな拍手がわき起こりました。彼も入賞出来なかったのが不思議なくらいでした。

韓国のM.Jは、現代風アートの絵画を素材にした演目です。キャンバスに描かれた模様の中の白い丸が、ビリヤードの白いボールになります。また、ハトのような模様が本物のハトになります。特にキャンバスの絵が、瞬間に変化するのが見事です。既成の形式にとらわれない見せ方が面白いのですが、高得点を取りにくいことと、アーサー・トレースを思い出させる部分があり、マイナス要素となっているかもしれません。

6人目は、ジュニアから決勝に残った中国のYang Yangです。ステッキと傘、そして、ダンシングケーンを演じました。ダンシングケーンはステージが暗くなり、現象がほとんど見えない状態となりました。予選の時は、ステージが明るいままで演じたために、ジャリが良く見えた状態となっていました。ジャリが見えないようにするための要素として、照明、背景、服装、ジャリの問題等いくつかあります。照明に関しては、予選ではオン、オフだけか、可能な場合でも単調なスポットまでです。劇場での決勝戦でも、期待通りの照明が可能かどうかが分かりません。設備と英語での説明能力も関係してきますのでたいへんです。ネタがバレないことが特に重視されて、決勝戦では暗くせざるを得なくなったのでしょうか。

ステージ決勝戦6名以外の印象的な出場者

日本のHanna Kikuchiさん(9才)は、決勝戦には進めませんでしたが、ジュニア部門の2位を獲得しました。予選会場で、観客を最もわかせていたのは、彼女であったように記憶しています。翌日の新聞には、大会の模様が取り上げられており、Hannaさんの演技写真が大きく掲載されました。この新聞は、会場の受付掲示板にはり出されていました。平坦にして置かれた大きな旅行カバンの上で、Hannaさんの母親が、9才のHannaさんに変身します。コスチュームチェンジの後、ダンシングケーンが演じられますが、大人顔負けの演技です。この後、元の母親に戻り、カバンを引っ張ってそでへ消えます。観客の反応からすれば、決勝戦へ進む勢いがあったのですが、一つの不利な点が目立ちました。ジャリが最初から最後まで見えっぱなしであったことです。途中から2本のステッキを使いますが、そのために、ジャリの存在が、より一層気になります。ジャリが見えなければ、ジュニア1位とピープルチョイス賞の可能性もあったと思います。

日本人としては、もう一人、アメリカ在住の関根氏が出場しています。小型のシルクハットとカードのプロダクションやシルクを使い、メリハリのある動きで次々と演じられました。今年は同レベルの出場者が多く、決勝戦通過ライン上の人が多かったように思います。関根さんもその一人でした。

少し変わった演目をされたのがアメリカのMichael Tallonです。客が1枚のカードを選んでデックへ戻させた後、それを当てるのに、1枚ずつカードを見せるのですが、当たっていないので落胆することが繰り返されます。この時、その都度、次々に曲が変わり、数曲の歌詞のワンフレーズが流れました。歌詞の内容は、今度こそはといった演者の思いと失望の感情が現れています。使用された曲数は100近くあったように思います。この演技も、予選会場を大いにわかせましたが、内容からみて、やはり、決勝には進めませんでした。

クロースアップコンテスト決勝戦の6名の演技

1位を獲得したのは、アメリカのベン・ジャクソンです。レモネードと書かれた紙を持って登場し、これをコーン状に巻くと、中からレモンが転がり出ます。この紙を反対側に筒状に巻くと、ストローが落下し、これを上方より入れると、下からレモネードの液体が入った細長いグラスが出現します。このストローより、1枚ずつ3枚のコインが出現し、この3枚により、飛行と消失、再現が行われます。シルバー色のクレジットカードと緑色のキャップのサインペンを両手に持って示し、一瞬で、両方ともゴールドの色に変わります。デックが出現し、8のカードを1枚ずつフラリッシュ的にあざやかに取り出し、その都度、胸ポケットへ挟みます。この4枚のカードからビリヤードボールが取り出されます。4枚の8のカードのバックを示すと、1枚に文字が現れます。しかし、私には記載内容がよく分かりません。残りのカードのバックにも次々と文字が現れ、4枚を表向けると4枚ともジャックに変わっています。演者の名前がジャクソンだからジャックと言っていました。この4枚から、さらに、白色のビリヤードボールを落下させて終わります。

技術的なうまさがあり、特に3枚のコインの扱いは、他の出場者に比べ、1番うまかったように思います。また、8のカードの1枚ずつの取り出しも、安定したうまさがありました。オープニングはインパクトがあって面白く、その後もうまさが光っていました。ただし、最後の2回出現するビリヤードボールは、私には意味が分からない演技でした。ハンサムでスマートでうまさがありますが、全体的にはまだまだ弱さがあり、印象に残る演技者ではありませんでした。テーブルホッピングのマジックとしては、ちょうど良いのかもしれません。

2位はスエーデンのJohan Stahlで、ピープルチョイス賞も獲得されました。1週間前のS.A.M.大会では、クロースアップコンテストで1位を獲得しています。予選を見た中でも、ピープルチョイス賞獲得は間違いないと確信しました。和やかなムードで演技が進行し、最後まで楽しく見せてもらえたからです。コーヒーカップと角砂糖とサインペンを使った演技です。アシスタントとして前へ出場してもらった客とのやり取りで進行します。角砂糖やサインペンが何回も消失し、意外なところから現れます。観客には消えた品物の位置が分かっているのに、アシスタントだけには分からない演技です。このようなマジックの場合、見せ方に注意を要します。例えば、スライディーニの紙玉のコメディーは、演じ方によっては、アシスタントの客をバカにした扱いになってしまいます。しかし、Johan Stahlの演技は、そのようなことを全く感じさせない和やかさがあります。エンディングも楽しく盛り上げる終わり方となっていました。

今年の8月のUGMの大会のゲストとして予定されていますので、演技の詳細は、是非、実際の演技をみて楽しんで下さい。1位になっても不思議でない演技者で、多くの観客も1位を予想していたと思われます。1位をのがした理由はいくつか考えられますが、総合的な面ではすばらしい内容でした。最終的には、審査員の好み(考え方)と点数の入れ方だといえそうです。

アメリカのネイソン・ギブソンは入賞こそ出来ませんでしたが、技術的なうまさでは、今回の中で1番か2番と思いました。失敗することもなく、難しい操作の連続を軽々とスムーズにこなしていました。ただし、フラリッシュや難しいスライトを使っていることが前面に出過ぎるきらいがあり、入賞をのがしたように思います。

両手によるフラリッシュのシビル的なカット操作を繰り返し、最後には多数のパケットに分割して両手の間で示します。客に好きなカードの数を言わせ、両手の間でカードを何気なく広げて、指定のカードがバラバラにあることを示します。二人目の客には、エースか絵札の目立つカードを言ってもらい、もう一度、両手でカードを広げて示します。この時、客はエースを指定していました。この後、フラリッシュ的に両手の間でデックが4分割され、その表面のそれぞれにはエースが現れます。4枚のエースを取り、裏向けて少し広げますが1枚だけ表向けます。この4枚を垂直にして客に見えやすくして、最初の客が指定した数をもう一度言ってもらうと、表向きエースがその数のカードに変わっています。そして、裏向きの3枚もその数のカードに変わります。第3の客に1枚のカードを選ばせ、デックに戻します。デックを裏表バラバラにまぜて、両手の間に広げ、本当に混ざっていることを示しますが、一気に客のカード以外が裏向きになります。このデックからエースが1枚ずつフラリッシュ的に取り出され、この4枚をテーブルに横へ並べます。デックを1回フェロウシャフルした後、トップよりダイヤのエースの上へ配ると、ダイヤの2からKまで順番に現れます。他のマークのカードも同様にそろって出現します。この後、4枚のコインを手でカバーして、一カ所に集めるチンカチンク現象の後、コインが8枚に、そして、16枚に増えて、全てのコインが少し起き上がり、元の平坦な状態に戻って終わります。

デックは途中ですり替えていません。つまり、デックがバラバラな配列であることを見せた上で、途中でいろいろな現象と、シャフルやカットをしたにもかかわらず、最後には整列した状態にしているわけです。そして、スプレッドカルが多用されていることが分かります。客が指定した二つの数の数枚や裏表が混ざった状態も、全てカルで処理しています。これはすごいことです。10年前では考えられないことでした。しかし、数年前にコスチャ・キムラットが登場して恐るべき技術を発表し、今日ではよく知られるものとなりました。コインマジックにおいては、最後が少しやりすぎではないかと思ってしまいました。コインが起き上がる仕掛けは面白いのですが、これまでのマジックが、コインやマットに仕掛けがあることで出来たと受け取られそうです。

シン・リンはアメリカ在住のシンガポール人です。決勝戦6人の中で、最も不思議なマジックをしていました。二人にサインさせたカードが、いつの間にか入れかわります。しかし、両方のカードともすり替えた形跡が全くないのです。テクニックのうまい演者ですが、他の部分では秘密の操作の見当がつきます。しかし、サインカードの入れかわりの部分だけがあまりにも不思議です。二人のアシスタントの内の少なくとも一人が、サクラではないかと疑いたくなります。今回の場合、サクラを使用しなくても、アシスタントとなってもらう客の一人に、好きなカードが何かを聞いておくだけでも、すぐに事前準備が出来、不思議な現象が可能となりそうです。あるいは、ちょっとした仕掛けを使っているのかもしれません。そうでなければ、タイミングをはずした技術だけで、うまくすり替えていたのでしょうか。いろいろ考えさせてもらえた演技でした。うまさと不思議さがあるのですが、エンターテイメント性に弱さが感じられ、入賞をのがしたように思います。

二人のアシスタントを最初から両サイドに座らせています。テーブルの中央前方に、金属製ライターを小さな台により立てています。ライターに火をつけると、フラッシュと共にカードケースが出現します。一方の客に1枚のカードを取らせ、サインしてもらいます。このカードが後で、演者の口より取り出されます。このカードを四つ折りにして、透明な小型ビニール袋に入れて客に持たせます。他方の客にデックを渡し、好きなカードを取り出させてサインさせます。中央に大きくサインするように指示します。このカードを使っていくつかのアンビシャス現象の後、デックをテーブル中央へ置きます。1枚のコインが出現し、このコインの消失と再現が繰り返された後、ジャンボコインに変わります。ジャンボコインでも消失と再現が演じられ、最後には完全に消えてしまいます。テーブルのデックを持ち上げると、その下からジャンボコインが現れます。このコインの下に1枚だけカードがあり、それが第2の客のサインカードで、このカードを消失させます。第1の客が持っているビニール袋をあけさせ、カードを取り出して広げると、第2の客のカードとなっています。前方に立てたままのライターを取り上げ、トップ部分をはずして、公正に中からカードを取り出して広げると、第1の客のサインカードが入っています。デックを入れたカードケースを、白い縁取りの入れ物に入れてライターであぶると、カードケースとデックが消失して演技を終えます。

シンガポールのJeremy Peiは、ステージではパワフルな演技でしたが、クロースアップではソフトでムードのある内容でした。赤いひもの結び目がサクランボに変わり、また、別のタイプの結び目もサクランボに変わります。この二つのサクランボと2個のカップ、そして、2本のポケットリングを使ったカップ・アンド・ボールの演技が行われます。リングを一方のカップから他方へ移動させると、カップの中のサクランボも移動します。2本のリングを連結させると、カップの中の2個のサクランボも連結します。クライマックスではカップの中からキャンドルを取り出していました。その後、バラの花も出現させていたと思うのですが、はっきりしていません。最初に英語で自己紹介してから、BGMにあわせてロマンティックに演じていました。スマートでうまさがありますが、コンテスト用の作品としては、少し弱い印象が残りました。

6人目の決勝出場者はアメリカ人ですが、名前がよく聞き取れませんでした。彼は他の5人に比べ、オリジナル性や技術面で弱い印象を受けました。ただし、オープニングの炎のチンカチンクで、かなりの話題性がありました。何人もの観客が、これで、度肝を抜かれたようです。しかし、これは、1991年にカナダのビデオでパトリック・レイモンドが発表した作品そのものです。ほとんどそのまま真似をしています。原案ではビンのコカコーラのふたを使っていましたが、この演者は、縁がほとんどないコインに見える物体を使っていました。また、原案では、四つの炎が一カ所に集まった段階で、炎が消えると同時に巨大なコーラーのふたに変化させていましたが、この演者はデックが入ったカードケースに変えていました。このこと以外は、最初の4カ所に一気に火がつく見せ方から、途中の2枚のカードを使ってチンカチンク的に炎が移動する方法まで全て真似ていました。

この後、7人の客にカードを取らせますが、最初の人物のみカードにサインさせています。この7枚をデックに突き出した状態ではさみ、一気にコントロールしていましたが、巧妙さがありません。そして、客のカードを次々と取り出してはテーブルへ置くのですが、最終的に、サインカードのみテーブルに置かれていない状態となります。デックを客の両手の間に挟ませます。演者がその間から1枚のカードを抜き取りますが、リンゴの皮を細い帯状にむいたのと同じ状態で引き出されます。客の手を開くと、透明なデックになっています。つまり、オムニデックです。この見せ方だけは気に入りました。サインした客が最初から持たされていた未開封のカンの容器を、演者があけて、中からサインカードを取り出していました。各地域のコンテストではなく、今回のような大きな規模のコンテストの場合、他の人物の作品をほとんどそのまま演じるのは問題に感じます。そして、カードのテクニックがあまりうまくないために、カードマジックがそれほど不思議ではありませんでした。ただし、楽しく見せようと努力している点だけは好印象を受けました。

ゲストによるステージショーで印象に残ったこと

大会3日目のゲストショーは、全てがすばらしい内容でした。トップの峯村健二氏のマジックで盛り上がり、バレリーナと力わざの男性による中国ペアのバランス芸もすごいの一言です。最後は、リック・トーマスのイリュージョンショーですが、楽しく不思議なショーで、ほぼ全員のスタンディングオベーションとなりました。客をステージに上げて、客とのやり取りを面白く熱演され、イリュージョンが不思議なだけでなく、最後には、リック・トーマス本人が直立姿勢のまま、高い天井近くまで垂直にスーと上昇し、そのまま下降したのにはビックリしてしまいました。

この日には、もう一つのすごいことがありました。MCをしていたのが、ラスベガスで活躍中のJeff Hobsonであったことです。ギャグをまじえながらのマジックは、英語がよく分からなくても笑えるマジックで、会場が大爆笑の渦になっていました。ちょっと見た感じでは、初老の紳士に見えるのですが、仕草やしゃべり方がオカマ風です。実際にそうなのか演技なのか、私には分かりません。そのことが面白いだけでなく、マジックの技術がすばらしく、ギャグ満載の演出もよく考えられています。袋卵の演技では、数名の腕時計が、いつのまにかスリ取られています。自信満々の客のカード当てでは、大失敗してあわてふためく演技が最高です。でも、その結末もすばらしいものでした。そして、ゾンビボールでは、肝心のボールとギミックをステージのそでに忘れてしまって、そのやりとりと、それらなしで演じるゾンビボールが大喝采でした。

大会最終日の夜のショーにも、多数のゲストが出演されました。その中でも印象的であったのが、Jerome Moratの演技です。等身大の石像が、その石像の頭と同様な頭部を持って、ステージ中央に立っています。石像自体は不動ですが、手に持っている頭部が生きているように石像の回りを動き出し、石像にちょっかいを出し始めます。すると、不動であった石像が目を覚まし、動き出します。そして、意外な結末となって終わります。この演技に対しても、ほぼ全員のスタンディングオベーションとなりました。

マジック以外で不思議に思ったこと

今回、夜のショーは、2日目はホテルで行われた有料のディナー付きのショーでした。しかし、それ以降の3日間は、ダウンタウンにある劇場で行われました。ホテルのすぐ裏にはトロリー電車の駅があり、ほとんど全員がこれに乗って劇場へ移動しました。3から5車両編成で、たしか目的地まで7駅ほど先で、片道2.5ドル必要です。日本円では220円ほどになり、日本の地下鉄と同じような料金です。3日間乗り放題の特別チケットが、大会受付で10ドルで販売されていましたので購入しました。駅には切符の自動販売機があるのですが、駅には自由に出入りが出来、駅員がおりません。降りる時も同様です。車内では、係りの人が回ってきません。すいている時に、犬を連れた係員が一度回ってきたのを見た程度です。しかし、切符を見せることがありません。降りる時も切符を渡すところがありません。どのようなシステムになっているのか訳が分かりません。たしか、2002年の時は、3日間の切符を参加者には無料で配布されていたと記憶しています。その時も、トロリーに乗って切符を見せることも渡すこともなく、不思議に思っていたことを思い出しました。

もう一つ、I.B.M.大会で、毎年感じている不思議なことがあります。1999年から、2000年を除いて、毎年I.B.M.大会に参加してきました。2001年からすれば、連続10年の参加となります。不思議なことは、ステージとクロースアップのファイナル6の発表に違いがあることです。ステージの場合、予選の翌日には大会受付の掲示板に、6名の名前が発表されます。決勝戦当日には、ピープルチョイス賞を決めるために観客全員に用紙が配布されますが、6名の名前が記載されており、一人の名前をチェックするだけとなっています。ところが、クロースアップの場合、大会中に掲示板に6名の名前が記載されていた記憶がこれまでにありません。2008年はS.A.M.との合同大会でしたので、この時は例外です。そして、決勝戦においても、観客に用紙が配布されるものの、一人の演技者の名前を書く指示があるだけです。6名の名前の記載がありませんので、隣同士でスペリングの確かめあいが毎年行われています。クロースアップの会場の入り口に、書いて貼り出しておけばよいのに、それすらしていません。今回の私の報告で、クロースアップ決勝戦出場者の名前がカタカナ書きになっているのは、そのような理由があるからです。また、名前すら分からない出場者もありました。なぜ、ステージの場合と同様にしないのかが不思議です。

おわりに

今年も私にとっては充実した大会でした。コンテストに特別なスターが登場しませんでしたが、ステージもクロースアップも大いに楽しめました。最近のマジックの傾向が分かるだけでなく、新しい発想やアイデアに感心させられます。また、夜のショーも、エンターテイナーとしてのすごさに圧倒されました。今回の大会に、日本から30名以上が参加されています。そして、ステージショーのゲストとして峯村健二氏、レクチャーに深井洋正氏が活躍されました。ディーラーショップは昨年に比べ活気があり、日本からも4店が出店されていました。深井マジック、セオ・マジック、菊地マジック、クライス・マジックの4店です。私は今年も、ディーラーショップの古書店で、帰りのカバンがいっぱいになるまで文献を買い込みました。なかなか手に入らないマイナーな雑誌や資料が多数手に入りました。まだまだ調べたいことが多数あり、大いに役立ちます。

さて、来年のI.B.M.大会ですが、テキサス州ダラスが予定されています。来年こそは、ゴールドメダルやゴールドカップの受賞者が出ることを期待して、今年の報告を終わることにします。


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