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コラム

第27回 2006年 I.B.M.大会報告 (2006.7.26up)




はじめに

今年は、6月27日(火)から7月1日(土)まで、フロリダ州マイアミで開催されました。ステージ・コンテスト予選は、朝8時から6時間かけて、30組が出演しました。また、その翌日のクロースアップ・コンテスト予選は、22名が朝8時から4時間かけて競われました。シニア部門もジュニア部門も含めて、上位得点の6組が、ファイナル6として決勝戦に出演し、それにより、各賞が決定されます。コンテストの結果や、その他の印象に残ったことを報告させて頂きます。

キーポイント

今年も、私の印象に残ったことを「キーポイント」として、最初に紹介させて頂きます。

1.

ステージ・コンテストに、日本から7名がチャレンジされました。
ファイナル6に、Kyokoさんと古山光さんが選出されました。

2.

ステージ・コンテストの1位は、日本のKyokoさんが獲得されました。

3.

今年は、ステージのゴールド・メダルの受賞者は、ありませんでした。

4.

クロースアップ・コンテストの1位は、John Bornが獲得しました。
彼は、Any Card at Any Numberテーマのマジックを演じました。

5.

今年は、クロースアップのゴールド・カップの受賞者は、ありませんでした。

6.

ピープル・チョイスによる賞は、ステージもクロースアップも、2位受賞者が獲得していました。

7.

ステージの大きさは、昨年と異なり、ほど良い大きさです。
ゲストショーやコンテストにおいても、スタンディング・オベーションが連発されていました。

8.

コスチューム・チェンジが、今年もレクチャーされていました。

9.

マジックとジャグリングのコンビネーションが、昨年と同様、増えてきそうな気配がありました。

クロースアップ・コンテスト1位受賞者の演技

ニューヨークのJohn Bornが1位を獲得されました。彼は3年前には、2位を獲得しています。以前の演技では、コインとカードが中心で、うまさとスマートさを感じましたが、インパクトには欠けていました。今回は、最近、話題となっています "Any Card at Any Number"テーマの、彼の解決策の演技が評価されたものと思われます。他には、コインやポケット・リングを無難に演じていますが、特別な内容ではありません。

彼の "Any Card"の演技は、本来の有名なデビッド・バーグラスの現象とかなり違っています。一つ目の大きな違いは、テーブル上に二つのデックを置いて始めていることです。そして、1〜52の間の好きな数字を指定させています。二つ目の大きな違いは、好きなカード名を指定させるのではなく、デックを客に十分シャフルさせ、そのボトム・カードを客のカードとして使っていることです。もちろん、シャフルの前には、そのデックが普通のカードであることを示しています。この後、テーブル上に残っている他方のデックを、ケースごと客に持たせ、中のデックを取り出させて、最初に、客が指定した枚数目より客のカードが出現します。

Any Card at Any Number 豆知識

52枚のカードの中の好きなカード名と、1〜52の間の好きな数を指定させ、その枚数目より、客の指定カードを現す現象です。目の前にある一つのデックで、演者がそのデックに全く触れずに、この現象が起これば、不可能としか思えません。

この現象で話題を集め、有名にさせたのは、イギリスのデビッド・バーグラスです。1970年代に、この現象の目撃報告がなされ、The Berglas Effectと呼ばれるようになります。この現象に近い作品は、かなり昔より発表されています。しかし、バーグラスのような不可能性の強いものではありませんでした。

このバーグラスの現象に多くのマニアが興味を示し、各種の方法が発表されています。いずれも一長一短です。最近、特に話題となったのが、1999年に発行されました、バリー・リチャードソンの "Theater of the Mind"の本で解説された、三つの方法です。私もこの現象には興味深く、今年発行予定の「トイ・ボックス 9号」には、このテーマについてまとめた内容を、報告する予定にしています。

2位受賞者の演技と問題点

ホンコンのM.C.Chowが、2位を獲得されました。そして、ピープル・チョイスによる賞も獲得しています。この賞は、決勝戦でもあるファイナル6を 観ている観客全員に用紙をわたし、もっとも良かった演技者名を記載させ、その投票結果により、一名だけ選出される賞です。昨年も、彼はこの賞を受賞しています。しかし、昨年は、2位すらも獲得出来ていません。

今回は昨年に比べ、全体を赤色で統一して、取り出す品物もグレードアップしています。カードを使う部分では、カードの裏だけでなく、表側も赤色にカラーチェンジして、そのカードを使ってマジックを続けています。ポーカーチップは赤色を使い、コインと同様のマジックを行った後、ジャンボサイズを出現させるだけでなく、CDサイズの超ジャンボまで取り出しています。クライマックスでは、赤ワインが入ったグラスを多数取り出しますが、その後、ジャンボサイズのグラスを出し、さらに、赤ワインのボトルを取り出して終わっています。メリハリのあるテクニックのうまさと、インパクトのある現象が次々と起こり、ピープル・チョイスの賞は当然といえるでしょう。

しかし、審査員の得点はきびしかったようです。問題は、昨年、私も問題ありと感じた点が、全く改善されていないことです。彼のオリジナルな作品も含まれていることは認めますが、全体の印象がフランスのマジシャンVallarinoのイメージです。テーブルの上空で、ワイングラスの取り出しや分裂は、Vallarinoの印象が、特に強くなります。また、10枚ほどのカードが、テーブルへ配るたびに消えてゆく現象は、スウェーデンのレナート・グリーンのマジックそのものです。

世界を目指してのコンテストでは、現役の他のマジシャンのまねととられる部分は、削除すべきです。少なくとも、上記のワイングラスの多数の取り出しや、配ったカードの消えてゆく部分は除くべきです。また、準備段階での、テーブル上をつい立てでカバーするのも気になります。ステージのスクリーンと同じと思えばよいのでしょうが、テーブル上やテーブルの手前に、何か仕掛けを作っていると想像してしまいます。いずれにしても、簡単に準備出来るようにすべきです。仰々しさは、マイナス・ポイントになる可能性があります。さらに、テーブルの手前からのロードやチェンジが、あまりにも多いのも気になるところです。

その他の興味深いクロースアップの演技

中国のRaymondもファイナル6に残りました。穴あきの赤コインと緑コインの出現と移動現象の後、大きな円形のジグソーパズルのピースが多数出現します。テーブルマットを裏向けると、英語でメッセージが書かれています。それに穴あきコインを数枚加えると、意味の分かるメッセージとなります。そして、そのマットを、もう一度表向けると、完成されたジグソーパズルの絵が現れます。チャーミングな女性の絵です。さらにこの後、スマートな演出を加えて終わります。

テクニックや演出の面白さが標準以上で、客の反応も良く、2位を獲得しても不思議でない内容でした。しかし、この人も、準備段階で、前方を布でカバーしていました。この時は、男性の助手に持たせています。また、テーブルの手前からのロードやチェンジが多いことも目につきました。もう一つ気になったのは、シガレットによる煙の使用です。アメリカでは喫煙がきびしくなっており、クロースアップ・マジックのような閉め切った狭い部屋の場合、最近では、シガレットに火をつけるマジックを見かけなくなりました。今回も、彼だけがシガレットを使っており、彼の演技内容であれば、除いた方がよいと思いました。

もう一人、ファイナル6で興味深い演技をされたのが、カナダのDonovan Deschnerです。カード・ケースより、カードではなく、ポストイット(貼ったり、はがしたり出来るメモ用紙)を取り出します。右手裏にR、左手裏にL、おでこにヘッドのH、おなかにボディーのBと書いて貼付けます。客に好きなように、貼った紙の位置を入れ替えさせます。カードケースより予言を取り出すと、今の状況と予言の絵が一致しています。次に、客のカードが、ズボンのポケットへ移動する現象です。1回目は、カードにサインなしで行い、2回目は、サインさせて行っています。3回目は、部屋の隅に置いてあったカバンより、スーパーマンの衣装とハンガーにかかったズボンを取り出します。演者はハンガーの部分は持っても、ズボンには触りません。スーパーマンの衣装が、演者にマッチしていることを示した後、ハンガーにかかっているズボンのポケットより、客に財布を取り出させます。その中より、フェアな方法で、サインされた客のカードを取り出しています。

クロースアップ・コンテスト全体の感想

今回、ファイナル6に残った6人の内の5人は、誰が2位になってもよい状態でした。1位ではありません。今回は、特別に印象に残るようなチャレンジャーはいませんでした。また、ジュニアも数名チャレンジしていましたが、全体的に低調で、ファイナル6に選ばれる人はいませんでした。なお、選ばれた6人の内一人は、中国系のカナダ人で、二人は中国の人であったのが印象的でした。

ステージ・コンテスト決勝の6名の演技と、各賞の受賞

1位は日本のKyokoさんが獲得されました。美容師の装いで、軽快な動きに、マニピュレーションとイリュージョンの要素も取り入れて、全体をモダンなタッチで見せていました。2位は、ジャグリングにマジック的要素をコミカルに取り入れて、全体をコメディータッチで見せていた、オハイオ州のDave Kaplinが獲得しました。

二人意外に、ファイナル6には、シニア部門では3名が選出されています。リンキング・リングとシルクの演技で観客を魅了した、日本の古山光さん。事故で分解したバイクを、次々と復元させて、バイクを完成させた、アルゼンチンのLatko。そして、クライマックスでウエディングドレスにコスチューム・チェンジする、韓国のRo Byeong-Wookです。

ジュニア部門からは、ファイナル6に一人が選出されています。10才?の燕尾服を着た少年が、ダンシングケーンを中心に、うまくマジックを演じていました。クライマックスでは、燕尾服を黒から白にコスチューム・チェンジするだけでなく、かわいい少女を出現させていました。なお、ファイナル6には選ばれませんでしたが、ジュニア部門の2位を、日本の西村峰龍さんが獲得されています。

ステージ・コンテスト、私の印象に残ったすばらしい4人の演技と、気になった点

私の印象では、シニア部門において、上記記載の最初の4人は、誰が1位になっても不思議ではない実力を持っていました。ここでは、4人のすばらしい演技に対して、あえて、辛口に、気になった点を中心に報告することにします。

まず、Kyokoさんの場合です。後半は、美容師が見えない客に対応するといった面白い演出で、マジックが進行します。そして、クライマックスでは、見えなかった客が、華麗なレディーとなって店を出てゆきます。気になったのは、最後の、レディーにチェンジする部分です。チェンジにかかる時間が、もっと短縮出来れば、さらに、すばらしいものになると思ってしまいました。

2位のコメディータッチのマジックは、多数の人がスタンディング・オベーションされ、ピープル・チョイスによる賞も獲得されています。作品としての完成度が高く、欠点らしきものもありません。しかし、マジックのコンテストとなると、マジックの要素を、もっと加える必要性を感じてしまいました。それが、1位になれなかった理由ではないかと思っています。彼の演技で、特に印象深いのは、テーブル上に置いた重いボーリングのボールが、うまいタイミングで床に落下します。これが数回繰り返されます。最終的には、この重いボールが、上空へスーと上昇してゆきます。

古山光さんの、前半の静的なリングの演技から、後半の躍動的なシルクの演技への変化が印象的です。そして、前半のリングの演技が一部分改良されており、すばらしいものになっています。彼女の演技では、前半と後半の間で、少しの間があります。これは、日本人の私にとって、後半のおもむきとの切り換えのために、心地よい間(時間)に感じました。しかし、スピードとパワーが好きなアメリカ人にとっては、少し長く感じるかもしれません。また、安易な考えですが、途中か最後に、コスチューム・チェンジを加えることが出来れば、もっとすばらしいものになるのではないかと、想像してしまいました。

アルゼンチンのバイクの男性は、バイクのパーツのそれぞれが、みごとに復元されてゆく新しさと面白さ、そして、かっこよさを感じさせられました。しかし、オープニングでは、バイク事故が起こって、とまどっているだけのシーンがしばらく続くだけです。その部分が、長く感じてしまいます。最初に、バイク が分解する現象か、何かインパクトのある現象が観たいと思ってしまいました。

いずれにしましても、今年のステージ・コンテストは、大いに楽しませてもらえました。

ステージの演技全体を振り返って

1.

コンテストに参加した日本の7名が、コンテスト全体のレベルを、いつもより引き上げていたと思われます。Kyoko、古山光、亜空亜シン、ジミー菊地、セオ・ダイスケ、前田真孝、西村峰龍(敬称略)の7名です。中でも、女性の活躍がすばらしく、Kyokoさんや古山光さんが、ファイナル6に選ばれました。なお、韓国の女性のRoByeong-Wookもファイナル6に選ばれています。結局、決勝戦の6名は、東洋の女性3名が選ばれたことになります。また、ユミさんが、日本からのゲストとして出演され、華麗な演技で観客を魅了されていました。

2.

ドイツのユンゲユンゲが、三夜、違ったアクトで演技されました。特に、二つの新アクトは、スタンディング・オベーションで絶賛されていました。

3.

ゲスト出演で、二人がハト出しの演技をされています。一人は、台湾のLu-Chen。もう一人は、最終日にサプライズ・ゲストとして出演された、デェイムス・ディメールです。二人とも、スタンディング・オベーションをうけていました。

4.

パントマイムやバラエティーにとんだ演技のArdan Jamesと、ジャグリングのCharlie Frye and Sherryは、いずれも、スタンディング・オベーションをうけていました。Ardan Jamesのすばらしさは分かっていましたが、Charlie Fryeの演技は初めて見ました。ジャグリングが超一流なだけでなく、意地の悪さを装ったアシスタントの女性Sherryとのやり取りが絶妙で、コメディータッチになっていました。

ジャグリングとマジックのコンビネーションについて

昨年のI.B.M.大会で印象に残ったことが、このことでした。そして、今年も同様なことを感じました。まず、ステージ・コンテスト2位で、ピープル・チョイスによる賞を獲得したDave Kaplinは、ジャグリングにマジックをうまく取り入れて、コミカルに演じていました。また、昨年、ジャグリングとマジックを融合させて、ジュニア部門1位となったFarrah Siegelは、今年、ゲストとして出演していました。

そして、今年はもう一人、印象に残った人がいました。上記でも紹介しましたジャグリングのゲストとして出演された、Charlie Frye and Sherryです。ジャグリングとは別のアクトとして、マジックを演じたのです。超一流のジャグラーがマジックを行うと、こんなにすごいことになるのかと、感心させられました。カードやビリヤード・ボールはフラリッシュを交えながら、楽々とこなしています。ジャンボサイズのリンキングリングや、重いはずのボーリングのボールによるゾンビボールを、ユニークな内容で演じられました。全体的に、ジャグリングの要素は控えめにしていたようですが、本来のマジシャンが行う演技とは、違った味わいを感じました。もちろん、このマジックの演技に対しても、スタンディング・オベーションをうけていました。

コスチューム・チェンジがレクチャーされる時代に

前回の報告でも書きましたが、2005年には、安田悠二氏による、コスチューム・チェンジのDVDが発売されました。そのすぐ後、2005年のI.B.M.大会において、フランスのバレリーが、安田氏とは違った内容のコスチューム・チェンジをレクチャーされました。さらに、2005年の夏に、男性のコスチューム・チェンジの本「クイック・チェンジ」が発売されています。

そして、今年のI.B.M.大会では、デビッド・アンド・ダニアがコスチューム・チェンジをレクチャーされるというので、楽しみにしていました。彼らは、ロシアのサーカスにおいて演じられている、回りを観客に囲まれた状態でのコスチューム・チェンジをしています。女性の衣装を、かなりの回数、チェンジしていたように思います。レクチャーでは、残念ながら、メカニック的なことや、準備段階での解説はありませんでした。結局、カバーなしで、次々とチェンジしてゆく状態を見ることが出来たことと、チェンジがよく分かるドレスのデザインや色の使い方の説明が中心となりました。カバーなしで見ていますと、ドレスがチェンジされる速度が、かなり速く、それが見れただけでも収穫でした。

おわりに

私にとって、I.B.M.大会の楽しみは、クロースアップ・コンテストを観ることです。今年は、それだけでなく、ステージ・コンテストも大いに楽しませてもらえた大会となりました。

そして、もう一つの楽しみは、ディーラー・ショップです。今回の印象的なことは、これまで、本屋の出店が2〜3店あったのが、1店だけに減っていたことです。また、昨年まで、DVDの専門店も2〜3店はありましたが、今回は1店もありませんでした。どちらも、インターネットでの販売が、中心となってきたからでしょうか。

ところで、今回、マジック商品で話題を呼んでいたのが、"WOW"の商品名のカードマジックです。商品名が"WOW"だからではなく、本当に驚いて"WOW"と言っていました。早々に完売してしまったようです。このI.B.M.大会が、この商品の初披露販売だそうです。そして、なんと、これは日本の商品なのです。日本では、いつ販売されるのか、また、日本での商品名も分かりません。いずれにしましても、コンテスト、ゲストショー、商品等で、日本が良い意味で話題になることは嬉しいことです。S.A.M.大会、F.I.S.M.においても、日本人が話題になることを願っています。


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